そらま

アフリカで某企業の駐在員をしています。 パスポートの隙間からさらさらと零れ落ちてしまう…

そらま

アフリカで某企業の駐在員をしています。 パスポートの隙間からさらさらと零れ落ちてしまう、旅の一期一会を再び拾い集めます。

最近の記事

アフリカ生活報告〜愛車を修理しよう PART 2〜

*part1 の続きです。 中古タイヤの山から使えそうな物を発掘して整備工場にもって帰ります。その間はほぼ骨董品のスペアタイヤで走っているわけで、今またパンクしたら終わりだな、となかなかスリリングなドライブだった。その意識は運転手も共有しているようで、アフリカ名物「アスファルトに突然の巨穴」に差し掛かる度に、ハンドルを握る運転手のヤビさんの手に力が入る。 しばしのエキサイティングなドライブを経て、無事ガレージ(整備工場を「ガレージ」と呼びます)に到着。早速タイヤの交換に取

    • アフリカ生活報告 〜愛車を修理しよう PART 1〜

      皆さんはタイヤがパンクした車で、アフリカのデコボコ道を走ったことがあるだろうか。 私は先日経験した。 欧州系スーパーに買い出しにいくため、車で街を走っていた時だ。運転していたのは、私の運転手のヤビさん(仮名)、私は助手席に乗っていた。愛車は93年製のホンダRAV4。日本で乗っていると恥ずかしいようなボロ車だが、ここコンゴではむしろ綺麗な方。エアコンが故障という決定的な欠損を除いてはおおよそ満足している。 それがつい先日、なんらかの金属片を踏んでタイヤが盛大にパンクした。

      • 妄想日記「ちょっと贅沢したい気分」

        炭鉱と製鉄の街、八幡の生まれだが、4歳のころ、次第に激しさを増す空爆から逃げるように、私たち家族は親族を頼って豊前の宇島に疎開した。それ以来ここに住んでいる。 昨年、高校の就職科を卒業してすぐに、小倉駅前のデパートの、子供・婦人服の販売員として働き始めた。終戦間もなくは、まだまだ不景気で、高校を卒業してすぐに就職できたのは、自慢ではないが、私を含め比較的真面目で学業優秀な生徒だけだった。 通勤は電車と路面電車を乗り継いで1時間ほどかかり、多少不便ではあるものの、人と話す事

        • クリスマスプレッシャーの正体

          今日は12月25日、クリスマスだ。 ところで、日本人はいつからこんなにクリスマスを祝うようになったのだろう。完全に外来の祝祭であるにもかかわらず、多くの人が日本のどの伝統的行事よりも大きな熱量を傾けている。国民の祝日ではないが、もはや一番の国民的イベントであると言っていい。そんな特殊な環境下で、日本のクリスマスはかなり独特な進化を遂げた。 フランスに住んでいた時、「日本でもノエル(フランス語でクリスマス)を祝うの?」とよく聞かれた。キリスト教文化圏に住んでいると頻繁に聞か

        アフリカ生活報告〜愛車を修理しよう PART 2〜

          僕の家はコンゴの「不平等」でできている。

          他のアフリカ諸国同様に、私が生活するコンゴ民主共和国は貧富の格差があまりにひどい。 コンゴは、金や銅、バッテリーや電子機器の製造に欠かせないレアアースの一大産地だ。ここ数年で価格が急上昇しているコバルト、タンタルに至っては、コンゴがダントツで世界一の生産量を誇る。間違いなく、多額のレアアース・マネーがこの国に流れ込んでいるはずなのに、残念ながら庶民の生活にその恩恵は感じられない。ごく一部のコンゴ人富裕層、先進国資本企業の財布が膨らむだけの話である。 僕はコンゴでほんの数ヶ

          僕の家はコンゴの「不平等」でできている。

          おいちゃんが亡くなった時、自分のいやらしさに直面した

          先々週、大叔父が亡くなった。 自己満足でしかないとしても、ここに想いを書き出す事で心を整理したい。 子供がいない大叔父夫婦のために、ここ数年、ヘルパーさんと僕の親が交代で二人のお世話をしていた。大叔父が亡くなる数日前、母から「おいちゃんの調子が良くありません。」とLINEが来た時、「ああ、そろそろなのか」とは思ったが、こんなにも早くその時が来るとは思わなかった。せめて最後に一度、顔を見せられるかと思っていたが、ついにその時が来ることはなくなってしまった。 大叔父夫妻は、

          おいちゃんが亡くなった時、自分のいやらしさに直面した

          「わたしもクリエイターになりたいな」

          「わたしもクリエイターになりたいな」 先日、会社の同僚が、あるクリエイターのYoutubeを見ていてそう思ったらしい。 個人差こそあれど、何かを生み出して、それを生活の糧にしたいという願望は、誰しもあるのではないだろうか。問題は、何にをクリエイトしたらいいのか、何に才能があるか、何が本当に好きなのか、が分からないことだ。それが分からないうちは、クリエイターにはなれないし、それを良きタイミングで発見できる幸福な人間は、そう多くはないと思う。ああ、僕も何かを生み出せる人になり

          「わたしもクリエイターになりたいな」

          心がカフェを欲しがる時。

          長かった外出禁止が明けて、ボルドーのカフェに活気が戻った。どこのカフェも人で溢れ、公共の土地であるはずの広場にも、所狭しとテラス席が広がっている。コロナ以前よりも、明らかにテラス席の侵攻が進んでいる気がするが、土地の所有者であろう市には許可を取っているのだろうか。そんな事は、およそお構いなしに、ボルドレー・ボルドレーズ達は、何かの遅れを取り戻すかのように、今日もカフェで喋り続ける。かく言う僕も、大変なおしゃべりクソ野郎なので人のことは言えない。 ☕️ つい昨年のことだが、

          心がカフェを欲しがる時。

          真夏のほろ酔い六甲山

          僕が住むフランスでは今週から外出禁止が解除された。とはいえ、残念なことにバーやカフェが営業を再開するのはまだ当分先だ。月の収入の看過できない割合を酒場に献上している僕としては、せっかく飲み屋の多いエリアを選んで住んでいるのに、人里離れた山小屋に幽閉されていのとさほど変わらない。そんな行き場のない鬱憤を少しでも発散したい。この駄文はそんな理由で生み出されている点、ご留意願いたい。 僕は学生時代、山小屋とは言わないまでも、神戸は六甲山嶺の「篠原台」という大変不便な場所に住んでい

          真夏のほろ酔い六甲山

          インドで最高のウイスキーに出会う、たった一つの方法。

          昨晩、Twitterで知り合った方に流行のオンライン飲み会に誘われた。 Twitterで何度かやりとりをしたことがあるにせよ、ほぼ初対面の人とサシで話すのはやはり緊張する。こう言った場面でご登場いただくのはやはり、強めの酒である。昨晩は以前スーパーで買った一本20€くらいの中堅会社員ウイスキーの封を切った。 社交の流儀を心得た英国紳士(ウイスキー)の手助けの甲斐あり、無事オンライン飲み会を楽しんだ僕は、そのまま一人晩酌と決め込んだ。景気良くずんずん飲み進め、気づけば瓶をひっ

          インドで最高のウイスキーに出会う、たった一つの方法。

          フランス、ある春の日に静かな部屋で

          【旅の意味は終わった後に生まれる】 音楽も映画も旅行も恋愛も人生も、長引けば長引くほど色褪せることを免れない。水々しさを失い、意味が損なわれる。かつて眩しく見えたものも、眼が慣れてしまえば、無数の光源の一つに過ぎなかったことに気付かされるものだ。 時と共に風化しゆく事象に、鮮度を蘇らせる方法は、だたひとつ。 「終わり」を設けることだ。死にゆく星が最期に光を放つように、終わりが近づけば全てが一旦蘇る。 いま、日の差し込む静かな部屋で、揺れる木々を眺めながらこれを書いている

          フランス、ある春の日に静かな部屋で

          外出制限は短し歩けよボルドー

          2018年の夏からボルドーという、大西洋に程近いフランスの港町に住んでいる。 理由は至って幼稚で、数年前にこの地を訪れた際にその美しい街並みと美味しいワインと料理に魅せられて「もしフランスに住むとしたらここがいい」と心に決めていたからだった。 しかしながら観光で数日滞在するのと数年住むのでは、雲泥の差、月と鼈、聞いて極楽見て地獄、駿河の富士と一里塚。 胸を張って「ボルドー最高ー!!」と言ってばかりいられないのが実情である。と言いつつも、この街にどうしよもなく惹かれる瞬間

          外出制限は短し歩けよボルドー

          リヨンと別れの技術

          僕たちはソーヌ川沿いの歩道をとぼとぼと歩いていた。 右手にそびえる丘の上で、ノートルダム大聖堂が橙色のリヨンの街を見下ろしている。大学の先生の引率で丘を登って、あの大聖堂を訪れたのは、ほんの3週間前なのに、何年も昔のことのように感じた。 「最後くらい、少しは真面目な話しをしよう」と思った。 3週間ほぼ毎日と言っていいくらい、他愛もない話はしてきたのに、彼女の未来についてほぼ何も知らなかった。 ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

          リヨンと別れの技術

          メコン川とムーンリバー

          メコン川は遠目でも十分淀んでいたが、近くで見ると紙パックの安いカフェオレのように濃厚でとろりとしているように見えた。 茹だるような炎暑日に歩き続けた脚が限界を迎え、川辺に続く階段にバックパックをおろしその横に腰掛けた。 ちょうど、カンボジアからベトナムにどう入ろうか思案している節、プノンペンからメコン川を下りベトナムに入るクルーズ船が出ていると小耳に挟み、市街から程近い船着場を訪れていた。 いずれにせよ、この大河を一瞥しないことには旅を終えられないと思っていたし、そのま

          メコン川とムーンリバー