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老人ホームは高齢者なら誰でも入れるワケじゃない?「年齢」と「介護度」について整理してみた

老人ホームは「高齢者であれば誰でも入れる住まい」と思われがちですが、実際はそんなことありません。どの老人ホームにも入居条件があり、条件に沿わない場合は入居できません。今回は、老人ホームの入居条件についてビギナー向けに整理してみました。

※ここでは便宜上、老人ホームや介護施設等を総称して「老人ホーム」と表記しています。

入居条件の共通項は「年齢」と「介護度」

老人ホームの入居条件は、ウチはこういう方を対象とした老人ホームですよと定義したもの。 多くの老人ホームで共通しているのが2つ。

それが、「年齢」と「要介護度」です。 介護保険の一号被保険者である65歳という年齢を基準にしている施設が多いこと。そして、生活支援や介護を必要とする要支援・要介護認定がないと、そもそも入居の対象にはなりません。

もっと細かく言うと、「感染症の有無」「認知症の周辺症状」、痰の吸引や経管栄養といった「医療的ケアの有無」も入居条件に当てはまります。ただ、それ以前の話として年齢や介護度が施設条件に合致していないと選択肢にはなりません。

現在、高齢者の入居施設は多様化し、その数は軽く10以上存在します。それぞれ年齢や対象とする介護度が微妙に異なっているので、順にみていきましょう。

業界人も明確に区別できない!?老人ホームの種別

一口に老人ホームといっても、細かく分けると10種類以上あります。

● 特別養護老人ホーム
● 介護老人保健施設
● 介護医療院
 └介護療養型医療施設も含む
● 有料老人ホーム
 └介護付き・住宅型・健康型
● 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
● サービス付き高齢者向け住宅
 └一般型・介護型
● 軽費老人ホーム
 └A型・B型
● ケアハウス
 └自立型・介護型
● シニア向け分譲マンション

それぞれの種別について、いつかnoteで詳しく解説するつもりですが、長くなるので今回はざっくりいきます。

ただ、介護業界にいる人でもそれぞれの違いについて正しく説明できる人は稀です。そのため、介護施設を選ぶうえで一つ一つを詳しく調べたり、覚えたりする必要はないということだけ伝えておきます。

ここからは、「お元気な方向け」「要支援・要介護者向け」「要介護度の高い方向け」の、大きく三つに分けて年齢・介護度の違いを解説します。

①比較的お元気な高齢者を対象とした老人ホーム

まずは入居条件が比較的緩いところから。 サービス付き高齢者向け住宅、自立型のケアハウス、住宅型有料老人ホーム、シニア向け分譲マンションが該当します。

ケアハウス(自立型)

年齢:60歳以上
介護認定:自立のみ 生活に不安のある60歳以上の方が対象

60歳って、もはや高齢者の定義から外れる年齢ですが、実際には80代の方が多く入居している。 要支援程度であれば、訪問介護など外部の介護サービスを利用して生活が可能。

ただし、要介護状態になると住み替えが必要となる。自立型のケアハウスは「身の回りのことはできるけど、一人暮らしはちょっと不安」という方を対象としている。

サービス付き高齢者向け住宅(一般型)

年齢:60歳以上
介護認定:介護認定のない自立した高齢者も入居可能。

サ高住の多くはこのタイプで、自立から要介護者まで広く対象としている。 稀に入居条件「自立のみ可」という物件もあり、その場合はお元気な方(要支援・要介護者はNG)を意味する。 介護が必要になっても外部の介護サービスを利用しながら生活することができる。サ高住には「介護型」もあり、こちらは要支援・要介護認定がないと入居することはできない。

住宅型有料老人ホーム

年齢:60歳以上
介護認定:自立から

有料老人ホームの一種。有料老人ホームのなかで最も供給量が多い。 元気な60歳から入居できるが、実情は80代の要介護者がメインとなっている。 後述の「介護付き」とよく比較されるが、住宅型でも介護が必要となれば介護サービスを利用して住み続けることができる。入居者の平均介護度で見ると、実は介護付きよりも高い。

健康型有料老人ホーム

年齢:60歳以上
介護認定:自立のみ

かつて流行った高級老人ホームがこの形態。介護が必要な状態になると退去しなければならない。近年、健康型はほとんどなくなり「自立型ホーム」といった名称で、住宅型か後述の介護付きかの何れかで運営している。 施設は「自立棟」「介護棟」に分かれていて、要介護状態になると介護棟に移り住むことができる。

シニア向け分譲マンション

・年齢:概ね60歳以上
・介護認定:自立から

他の種別と異なり、一般的な分譲マンションと同じく「所有権方式」になっている。 シニア向け分譲マンションという形態は特に法で定義されておらず、対象年齢は概ね60歳以上と記載しているが運営会社により異なる。 年齢制限を設けずに40歳くらいから購入・入居できる物件もある。所有権のため賃貸、売却、相続の対象にすることができる。

②要支援・要介護者を対象とした施設

有料老人ホーム(介護付き)

年齢:65歳以上
介護度:要支援、要介護1~5

介護や生活援助を必要とする高齢者が対象。基本的に自立の人は対象外だが、「自立サポート費」という名の追加料金を支払うことで入居できる施設もある。 一部の介護付きでは「介護専用型」があり、その場合は要介護1~5の認定がないと入居できない。 同様に「地域密着型」と記載されている場合は、建物と同じ地域に市区町村の住民でないと入居できない仕組み。

認知症対応型グループホーム(共同生活介護)

年齢:65歳以上
介護度:要支援2、要介護1~5

その名の通り、要支援2~要介護5までの認知症高齢者を対象とした介護施設。グループホームは「地域密着型サービス」のため、建物と同じ地域に住民票がないと入居できない。 また介護スタッフは常駐するものの「自分のことは自分でする」が基本。それが難しい要介護3以上の人だと入居できない場合もある。

③要介護度の高い人を対象とした施設

ここからは介護保険施設です。主に社会福祉法人や医療法人が運営し、介護保険財源で賄われているため「公的施設」と呼ばれています。

公的と聞くと費用も安価と思われがちですが、介護施設のなかで安いとされる「10万円前後」の価格帯は特養と老健の多床室(2~4人部屋)で、それ以外だと15万円前後が一般的です。それぞれ年齢と介護度は次のようになっています。

特別養護老人ホーム(特養)

年齢:65歳以上
介護度:要介護3~5(1~2の特例入居あり)

もっとも歴史ある老人ホームで、日本で最も安価な介護施設。そのため「入居待ち」が常態化し、令和4年12月の発表では全国で27.5万人の待機者がいる。 弱者救済に重きを置いているため、低所得で要介護度の高い方が優先入居となる。入居者の平均介護度は「4.0」。要介護1,2の高齢者も対象としているが、「認知症が進行した身寄りのない方」など緊急性がないと優先度は引き下げられてしまう。

介護老人保健施設(老健)

年齢:65歳以上
介護度:要介護1~5 病院と自宅の中間施設で在宅復帰を目的としている。

病院と自宅の中間施設。ドクターや看護師、リハビリ専門士が配置され日々の生活をサポートしている。 よく入居期間は3ヶ月程度と言われるが、すべての入居者の身体機能が3ヶ月で回復するワケではないため、延長する人も多い。平均入居期間は「9か月」。多床室だと比較的安価で入居できるため、特養の入居待ちに利用されることも多い。

介護医療院(Ⅰ型、Ⅱ型)

年齢:65歳以上
介護度:要介護1~5

要介護高齢者の長期療養を目的とした施設。
たんの吸引や、経管栄養などの医療的ケアを必要とする入居者が多く、その平均介護度は「4.1」と特養よりも重い。

重篤な身体状態や合併症を抱える方を対象とした「Ⅰ型」と、比較的容体の安定した方を対象とした「Ⅱ型」がある。上記に列挙した老人ホームと異なり病院のような雰囲気のところが多い。


このように、老人ホームによって入居できる年齢や要介護度は異なります。
実際に、ホームを探したり選んだりする際は、施設の平均介護度と家族の介護度を照らし合わせてみましょう。平均介護度は、老人ホームの重要事項説明書に記載されているので、参考にしてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします。

(TOP画像:UnsplashHarli Marten

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