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名探偵コッシー

皮膚科に受診して「全然痩せないですけど何でですかね?」って聞いたパートさんもすごいけど、「食べてるからです」と答えた先生はもっとすごいなと思いました。

こんにちは、コッシーです。


さて、人には相性というものがあり、良い人なんだけどどうしてもこの人とは合わないとか、この人とは何か気が合うなぁといったことがよくあります。

介護をする際にも相性は存在し、たとえ同じような介護をしたとしても、人によって利用者から苦情がきたりすることがあります。


うちのデイサービスにYさんという大正生まれの男性の利用者さんがいます。Yさんは94歳ですがとても元気な方で、自分の考えや意見などをはっきりと口にされますし、レクリエーションなどにも意欲的に参加されています。

そんなYさんとあんまり相性が良くないのが、男性スタッフのH君です。H君はとても真面目で一生懸命仕事をしてくれますが、気が合わないのかなぜかYさんとは上手くいかない事が多いです。

YさんとH君はことあるごとに揉めていました。YさんはH君の介助には「痛い!」と言われます。H君が出すお茶に対しては「ぬるい」と言われます。野球好きのH君が野球の話をすると「わしは相撲の方が好きだ」と言われます。

当事者のH君は、「Yさんは僕のことが嫌いなんです!だから僕にだけ文句を言うんです!」と憤慨しておりますが、傍から見ていると実はYさんはそんなH君の対応を楽しんでるようにみえました。

苦手な利用者に対して介助をするのも勉強の内です。Yさんから特に「H君に介助されたくない」と言ったような苦情はなかったため、あえてH君にはYさんを担当してもらっていました。


そんなある日事件は起きます。

デイサービスの管理者が困った様子で僕のところにやってきました。

話を聞くと、YさんとH君の言い分が食い違っていてどっちが正しいかが分からないということでした。

事件を整理しましょう。

事件はデイサービスのトイレで起こりました。その日Yさんは主治医の指示により、仮に排便があった場合検便を採取する事になっていました。その事は朝の申し送り時にスタッフ全員が共有しています。

入浴前にYさんが便意を訴え、トイレに行ったとのことです。排泄介助に入ったのがH君でした。無事Yさんは便をしたらしいのですが、どうやら検便を採取する前に流してしまったとのことでした。

そしてここからが事件の重要なポイントです。

Yさんの言い分ではH君が流してしまったとのことです。

H君の言い分ではYさんが流してしまったとのことです。

なるほど、確かにお互いの言い分が完全に食い違っています。デイの管理者の話ではどちらもウソを言ってるように見えないらしいですが、でもどちらかは必ずウソをついています。真実は一つなのです!

たった一つの真実を見抜く、見た目は大人、頭脳も大人その名は名探偵コッシーの出番がきたようです。

これまで数々の難題を解決してきた僕です。デイの管理者に「あとは任せて」と言い現場に向かいました。犯行現場1Fフロアの多目的トイレです。

うちのトイレの水を流すにはレバーとボタンの2種類あります。基本的に水を流すのはスタッフの仕事です。ためしにYさんに「トイレの水流せますか?」と尋ねたところ、ボタンを押して流すことができました。一応はYさんに犯行は可能なようです。

次にH君にYさんがボタンを押すのを静止できなかったのか尋ねました。一緒に現場にいたのなら仮にYさんが水を流そうとした時に止めることができるはずです。

するとH君は「Yさんが用を足すときにはトイレから出るようにいつも言われてるので、その日も外に出て扉の側で待っていました」と証言しました。

他のスタッフに確認すると確かにH君が外で待っている姿を見たという者がいました。

ふむふむ、なるほど…今ある情報を整理すると『Yさんが自ら流し、それをH君のせいにして楽しんでいる』という線が強いように感じます。しかし物的証拠がない、どうやって犯人に自供させるか…と名探偵さながら考えていたら、デイサービスの現場責任者であるKさんが「ちょっと良いですか」と僕のところへやってきて、H君に向かってこう言いました。

「H君。あなたが本当にやっていないのなら、Yさんの目を見て『僕は流していないです』って言いなさい。ほらYさんの目をまっすぐに見て言ってみなさい!」

そうH君を一喝しました。あまりの迫力にその場にいた者は何も言えませんでした。もちろん僕もその一人です。情けねぇ!

するとH君はYさんの方を向いて「すみません…僕が流しました…」と言い、深々と頭を下げました。

そしてKさんはYさんに「Yさん、本当に申し訳ありません。二度とこのようなことがないようきつく指導いたします。本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げました。

Yさんは、「気にしてないから大丈夫だ。」と言ってくださり、H君にも「気にするな」と声をかけてくださいました。

その後、バーローなH君にはKさんからきつい…いやありがたいお話がありH君は大反省をしていました。

Kさんの行動はH君が嘘をついてるのをまるで知っていたかのようでした。Kさんに「分かっていたんですか?」と聞いたところ、「全然。ただの勘よ」と笑っていました。カッコよすぎるだろ。


こうして、デイサービス始まって以来の難事件は、名探偵コッシーの優秀な助手であるKさんの活躍により無事解決したのでした。

一見僕は全く役に立っていないように見えますが、もちろん僕が麻酔銃でKさんを眠らせて、変声機付きの蝶ネクタイでKさんの声でH君を一喝できてたら、良かったなぁ…と思うわけですがなかなか漫画のようにはいきません。結果役立たずです。

たった一つの真実も見抜けない、見た目は大人、頭脳は子供その名は迷探偵コッシーでした。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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