猫井コーシュカ

読み物を書いています。たまにお絵描き。たまに曲作り。猫を愛してやみません。現在、自身の…

猫井コーシュカ

読み物を書いています。たまにお絵描き。たまに曲作り。猫を愛してやみません。現在、自身の恋愛黒歴史シリーズである「雲男。」を連載中。誰もが経験したことのあるような、ほろ苦くて甘酸っぱくてそれでいて黒く闇深い過去の恋愛のおはなし。

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雲男。 #01

若かりし頃、毎晩のようにふらふらと飲み歩いていた。 何軒かハシゴすることもあったが、いつも最初に行く店は決まっていた。 私はその店の常連だったのでスタッフとも気兼ねなく話せるし、他の常連客ともほぼ面識がある。だから1人でフラっと立ち寄っても誰かしらと「おっす!今日も飲んでんのか!」「お前もな笑」みたいなやりとりから始まる。 私の飲んだくれユートピア。 その店は私の家から徒歩5分の距離にあり、終電を気にすることなく朝まで飲むことができる。が、一応翌日仕事がある日は日付が

    • 犬男。 #03 最終話 【雲男。 外伝】

      クソみたいな彼氏とやっと別れたその日、ミトとのセフレ関係を再開したゲス野郎な私。 ミトは大学を卒業して社会人になっていたが、私の要求を断ることをしない彼の従順さは相変わらずだ。というより、以前よりも私からの連絡を待ち望んでるように見えた。私もなぜかその期待に応えようと、以前よりも会う頻度を高めた。 そして再開から何回目かの逢瀬。時は既に深夜だったが、彼の電話に着信があった。 取り込み中の私たちは当然無視した。けれどもなかなか鳴り止まない着信音、途切れたと思ったら再度着信

      • 犬男。 #02 【雲男。 外伝】

        「例の彼氏と別れた。明日ヒマなら祝ってくれません?」 しばらくしてバンドマンとやっと別れることができたその日、私はなぜか誰より先にミトに報告をしていた。 「おおー!あの例の束縛彼氏?良かったじゃん!え、てか今日別れたばっか?いいよ、アレだったら明日じゃなくて今から行くけど?」 電話越しにその表情がわかるほど嬉しそうな声。相変わらず調子の良い男だ。 「まじか。さすがお兄さん、よくわかってますねえ」 「まあね。そりゃ付き合い長いからね。隅々までね」 「こわー!そしてキ

        • 犬男。 #01 【雲男。 外伝】

          ※「犬男」はこれだけでもお楽しみいただけますが、本編「雲男」を読めばより深まります(は?)まだ読んでない方はコチラからどうぞ。↓↓↓ 20代前半、私にはとてつもなく好きな人がいた。 けれどその人に裏切られ、絶望したその日、絶妙なタイミングで出会ったのがひとつ年下の大学生、ミトだった。 背は175cmくらいだろうか。天パでふわっとした髪の毛。スポーツをしているであろう引き締まった体型、人懐っこくて調子が良く、先輩から可愛がられそうなタイプ。おそらく、頭も良い。古着好きでセ

        • 固定された記事

          靴男。 #04 最終話 【雲男。 外伝】

          私の忠告を素直に聞いたのかは不明だが、トモミさんからお金をもらわなくなって金欠になったのか、その頃エイジは週に2日ほど夜に友達のバーの仕事を手伝うようになっていた。 その日の夜はバーの仕事がない日で、私はエイジと部屋にいた。 あの携帯事変以降、エイジは私に「やましい事ないから携帯見たかったらいつでも見ていい」と言い、その場を離れる時もわざとらしく私の横に置いていったりもした。 しかし、実はエイジはバンドの連絡や運営用で使うための携帯電話を別にもうひとつ持っている。さては

          靴男。 #04 最終話 【雲男。 外伝】

          靴男。 #03 【雲男。 外伝】

          私は秘密探偵である。 これからターゲットの浮気調査に入る。 ターゲットは今しがたシャワーを浴びに行ったところだ。私は疲れて寝たふりを決め込んでいた。油断したのか、携帯電話が無造作に床に置かれている。 携帯電話のロックはされていない。無防備だ。こんなにセキュリティーがゆるいということはもしや浮気していないのか・・・? 否、完全に詰めが甘いだけだ。 聴力だけを風呂場の方向に集中させながら、私はエイジの携帯電話を手に取り受信メールボックスを開いた。 ※2000年代初期の携

          靴男。 #03 【雲男。 外伝】

          靴男。 #02 【雲男。 外伝】

          「あいつと今日なに話してたん?なんか近くなかった?」 「え、普通に仕事の話なんだけど・・・そんな近かった?普通じゃない?」 「いや、めっちゃ近かったやん!あいつ絶対お前に気ィあるわ。もうあんま話さんようにな」 ・・・また始まった。私はうんざりした。 エイジはとにかく嫉妬深かった。私が少しでも他の男と話しているのを見かけようものなら、あとで2人になった時にチクチクとまるで姑のごとく詰められる。5つも年上なのに大人の余裕というものが全く感じられないのだ。 私たちの関係は

          靴男。 #02 【雲男。 外伝】

          靴男。 #01 【雲男。 外伝】

          私は爪先が極端に細く尖った靴が苦手だ。 靴のデザイン的な好みという事もあるが、主な理由としては当時ホストやカリスマ美容師・ギャル男など、私が一方的に勝手な苦手イメージを持っている人たちが好んで履いていたからだ。 だが、この男のおかげで尖った靴を履いている男性全般の超個人的な印象が更に、すこぶる、ものごっつ悪くなるのである。 なので、今まさに尖った靴を好んで履いている人は、私ではなく彼に文句を言ってください。 なお、彼の関西弁に関しては多少東京かぶれしていたので標準語と

          靴男。 #01 【雲男。 外伝】

          雲男。 テーマ曲 「闇雲」 &あとがき

          「闇雲」浅く吐く息は 夜を覚ます もういいよ 目を開けてもいいよと言うけど もういいよ 目を開けたくはないの 色褪せて潰れたどこかへ転がるみたい 舞うように 落ちた 明日を失くした 影を残さない 残さない もういいよ 手を繋いだら行こうと言うけど 指の先さえ もう動かないの 青く枯れゆくのをどこかで待っていたのは誰? 遠い遠い 記憶 音を裂き 揺らぐ世界に耳を塞いだ 叫びながら 色は咲き 輝く生は目隠しをした 笑ったまま 透明なあなたに触れた ぬるい光が通り抜ける 雲のよ

          雲男。 テーマ曲 「闇雲」 &あとがき

          雲男。 #14 最終話

          ✳︎前回のおはなしはこちら 「久しぶり。元気だった?」 私の家の最寄りのコンビニ前で再会した彼は、どこか不安そうな表情をのぞかせながらもニッと笑った。 海でひとりで泣いたあの最悪の日から、三年以上が経過していた。 その間、私は新居へ引越し、新しい環境で音楽活動に集中していた。以前は毎日のように飲みに行っていた常連のあの店は閉店し、そこのスタッフや常連客達もしばらくは付き合いがあったがそのうち疎遠になった。飲み歩く事もずいぶん減った。 「うん、相変わらず元気」 複雑

          雲男。 #14 最終話

          雲男。 #13

          ✳︎前回のおはなしはこちら プルルルル プルル「はいもしもーし」 ミトというナンパ男はすぐに電話に出た。 「・・・あ、今さっきハンカチ貸してもらったんだけど返し忘れちゃって・・・」 「ああ!わざわざ電話してくれたんだ!ありがと。まだ近くにいるから取りに行ってもいい?」 「うん。いま・・・信号渡ったとこにいます」 まるでわざとハンカチを忘れて電話が来るのを待機していたかのように思える素早さで彼は来た。実際これで私の電話番号をゲットできているわけである。 「待って

          雲男。 #12

          ✳︎前回のおはなしはこちら それからの彼はと言うと、暇があれば連絡をしてきて私を繋ぎとめようと必死なように見えた。 今まで彼はきっと、私が自分のことを好きだという揺るぎない自信があったのであろう。だからあんなに私を放置したのにもかかわらずしれっと会いに来れたのだ。 けれども私は今回のことで少し引いた。「少し」というのも呆れるが。 彼は焦ったはずだ。なぜなら自分をずっと好きでいてくれる存在がいなくなるかもしれないから。究極に都合のいい女がいなくなるかもしれないから。

          雲男。 #11

          ✳︎前回のおはなしはこちら ピンポーン チャイムが鳴る。 久しぶりに彼に会う私は、久しぶりにちゃんと部屋を掃除し、久しぶりにちゃんと化粧をし、久しぶりに鏡の前でキメ顔の練習をした。もし美女と浮気していたのならば、負け戦だけれども少しでもその超えられない壁に近づくだけでもしておこうと思った。 もし別れを告げられるのであれば、最後に今までで一番綺麗な私を見せつけていつか後悔させてやろうと。 ・・・まあ、悪あがきである。無駄な抵抗とも言う。 「久しぶり・・・とりあえず入

          雲男。 #10

          ✳︎前回のおはなしはこちら 彼からの連絡が途絶えた。 正確には、私から連絡をすればタイミングが合えば電話に出る、という感じだ。 今まで会える時は積極的に彼から連絡をくれていたのに、それが一切なくなった。そして私からの電話に出たとしても「しばらく忙しくて会えないかも。落ち着いたら連絡する」と言われ、それを信じて馬鹿正直に待っていても結局連絡は来なかった。 私、彼に何かしてしまったのだろうか・・・嫌われるような、避けられるような事したかな。それとも他に好きな人ができて自然

          雲男。 #09

          ✳︎前回のおはなしはこちら ・・・・・・。 何の前触れもなくキスをされた私は頭の中が真っ白になった。 彼の唇はやわらかく、ケーキみたいに甘く(食べてるからな)、シャンパンのようにほのかに香り(飲んでるからな)・・・いや、頭真っ白状態だったので実際そんな細かくは覚えてないのだけど、とにかくふわりと優しくて気持ちがよかった。 そしてお互いの唇が離れた今、鼻の先がくっつく距離に彼の顔が・・・!!!どうする私!どうすればいい!?このまま流されてしまうのか?本音は流されたいんで

          おばあちゃんとスクランブルエッグ

          私と、私の大好きな祖母とは血が繋がっていない。 その事実を知ったのはいつ頃だったろうか。 私の母が、実の母親であるはずの祖母の事を「お母さん」ではなく「幸子さん」と名前で呼んでいた事に違和感を覚え、それを何故なのか母に聞いた時に知ったのだと、なんとなくだが覚えている。 母の実の母親、つまり私の本当の祖母は、母がまだ二十歳そこそこの時に若くして癌で亡くなっている。 その後、祖父は身のまわりの世話をしてもらう目的で後妻をむかえる。(昔の「妻」という存在がどんな立場だったの

          おばあちゃんとスクランブルエッグ