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90歳 一人暮らしの父への想い⑦

今回は、前回の 「90歳 一人暮らしの父への想い⑥」の話の続き……

そう、医者は父ちゃんにこんな話をしてくれました。


「今90歳ですが、まだまだこれからも長生きしたいと思っていますよね!?」
「タバコが好きで長年吸っていらっしゃるようだけど、最近、咳や痰も出ているようだし 、タバコの数を減らしてみたらもっと楽になりますよ」
「年取ってくると気管も弱くなってくるし、 今コロナ流行っているし、娘さん達もコロナが落ち着いてからじゃないと会いに来れないしね」

そして、医者に行った数日後。

父ちゃんはある行動に出た。
なんと長年吸い続けていたタバコをやめたのだ!

父ちゃんがタバコを辞めたタイミング

その日 、実家で父ちゃんの今後の事を話し合うという時間が設けられていた。私は久子さんに事前に想いを伝えていた。

実家には父ちゃん、久子さん、ケアマネージャーさん、介護支援員さんの四人。色々と聞き取りや話を進めていく中で、父ちゃんは突然こんなことを言い出した。

「おら、もうタバコをやめる」

そしてすぐ近くにあったタバコを手でむしった。
他にも買い置きしていたタバコを全て持ってきて中身を取り出し、みんなのいる前でゴミ箱に捨てたそうだ。

父ちゃんの突然の行動に、3人ともあっけにとられたことは言うまでもない。

実は四者の話し合いの前に、私は久子さんにお願いをして、久子さんのスマホを使って、父ちゃんとLINEビデオ通話で直接思いを伝えていた。

「ずっと元気でいてほしい。」
「いつも心配しているよ」
「早く会いたい」

そんな想いが父ちゃんに伝わったのかなぁ。

そして4者の話し合いが終わった後、久子さんから連絡をもらう約束になっていた。

LINEで送られてきた写真には、ゴミ箱に捨てられた大量のタバコが…。
「タバコやめたよ」とメッセージが付け加えてあった。

私はすぐさま久子さんに電話した。

雪の降り続く早朝でも、タバコが吸いたくて雪道をテクテク歩いてコンビニまで行っていた父ちゃん。
あの父ちゃんが…⁈信じられない!

タバコの煙が大の苦手だった私。
以前からタバコやめたら…と言っていたけど、全然聞き入れてくれなかったのに。

この行動に私は父ちゃんの強い覚悟を感じた。

久子さんの素敵な計らい

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ある日久子さんからこんなLINE が届いた。

「今度さぁ、叔父ちゃんと叔母ちゃんを会わせようと思っているんだけど、どうかな?」
「息子さんのほうにはもう連絡していて、承諾してもらってるんだ。いいかな?」
「私が勝手に動いてごめんね」

いやいや、いいも何もそんな…。

実は私も、偶然にも同じようなことを考えていたのだ! 驚いた!
しかし、私が帰省出来ないこの状況で動けないので、どうすることも出来なかった。
本当に有り難い言葉だった。そこまで親身になって考えてくれていたなんて。

うれしくて涙が溢れた。

7人きょうだいの父ちゃん。
今生きているのが、父ちゃんと妹の叔母さんの二人だけ。

父ちゃんもきっと喜んでくれるに違いない。
ちょっとは元気になってくれるといいな!

そしてタバコを辞めた父ちゃんのその後は…

久子さんが買ってきてくれたお気に入りの飴をなめて、口寂しさをなんとか解消というか、紛らわしているようだ。

私のある決断

父ちゃんは更に血圧も高く、脈は弱くなってきているとのこと。
毎日の久子さんからのLINEや電話に、不安な気持ちが私を襲う。
3月でも新潟はまだまだ寒いし、実家は古い木造住宅。
大丈夫か? 父ちゃん。

会いたい、会いたいよ…。

そんな私の気持ちを察してか、久子さんから絶妙のタイミングでLINEが来た。

「なんか先が見えている、叔父ちゃん。最後は自宅で看取りたいよね…。施設に入ったら、今の時代会えないからねぇ。気持ちは複雑」
「そっと、こっちに来られない?」
「顔だけ見たら誰にも会わなくていいからさ、後のことは私ができるだけやるから、考えてみて」

この言葉に胸が熱くなった。
迷っている時間なんてない。

行こう! 今、行かないと私は一生後悔する! 

そんな想いになったのだ。

…とは言っても一人で決断する訳には行かない。
すぐさま旦那にLINEした。

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