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NMB48の強くて美しい女の子たちのこと

AKB48が好きだった。

「ポニーテールとシュシュ」が発売されて、総選挙で優子が1位になって、「ベビーローテーション」が大ヒットしたのがちょうど10年前。
可愛い衣装、夢みたいなpv、女の子たちが涙しながら仲間と一緒に夢に向かって頑張る姿が好きだった。

世間のブームから少し遅れてハマったので、過去のドキュメンタリーや総選挙、コンサート映像を見漁った。彼女たちが色んな困難を乗り越えていく姿に胸を打たれた。いつかのDOCUMENTARY of AKB48は一人で映画館に観に行った。

そのうち姉妹グループにも目が行くようになった。SKE48の全力で踊るパフォーマンスも素敵だな、NMB48の「ナギイチ」すごく可愛い!PVを何回も何回も繰り返し見た。

総選挙とサプライズ

AKB48が有名になった大きな要因は、総選挙だと思う。女の子たちが順位をつけられ、悲喜交々、時には涙しながら力強くスピーチする姿にはセンセーショナルな衝撃があった。

コンサートの終盤にはいつもサプライズがあった。「組閣発表」があると、今あるチームは解体され、新しく組み直される。「移籍・兼任発表」ではグループ間のメンバー異動があった。いつも泣き崩れる女の子たちがカメラに撮られていた。

可愛い女の子たちが感情を顕にするシーンはとても扇情的だ。今までアイドルたちが表に出してこなかったもの。見てはいけないものを見ているような、怖いもの見たさのような、とにかくちょっと中毒性があった。

NMB48のこと

NMB48 によって「ナギイチ」の後に発売されたのが「ヴァージニティ」
この子たちこんな表情もするのか!山本彩、渡辺美優紀を筆頭に、自信に満ちたパフォーマンス、挑むような目線、曲ごとに劇的に変わる表情、どんどん好きになっていった。

特定のグループやメンバーを好きになると、彼女たちの心情を勝手に想像して心配してしまうのがオタクの性である。グループのあり方にえも言われぬ違和感を抱くようになってきた。
「この子たちがこんな目に遭う必要、ある?」

運営とオタクとのキャッチボール

秋元康がいつか「運営がCD選抜メンバーを選んだら、『何であの子が入っていないんだ』とファンから苦情が来た。だから、ファンが選抜する機会を作ろうと総選挙を始めた」というようなことを言っていた。サプライズも似たようなことだったのだろうと思う。運営が、「こんなことしたら面白いんじゃないか?」と考える。オタクがそれを受けてあれこれ討論する、ネットで盛り上がる、SNSや支配人部屋で意見する…。運営とオタクとのキャッチボール。
じゃあ、メンバーの女の子たちの意思は?

48には、メインターゲット層である男性優位の文化だった側面があると思う。
「クラスで2番目くらいに可愛い」「親近感がある」「できないところが愛しい」「俺たちが押し上げる」…
オタクの自尊心が傷つかないようにできている。
総選挙も、行動の主体はオタクたちだ。CDを購入して、対策本部を立て、夜も寝ないで投票する。
結果が出ると、大枚叩いて投票したオタクは胸を撫で下ろしたり憤慨したりして、何日間も議論する。
メンバーはというと、自分のファンを信じ、結果が出るよう祈り、順位が出たらどんなものでも受け止めて感謝するしかない。
「投票してくれたファンの皆さん、応援してくれたファンの皆さん、本当にありがとうございました。」

NMB48は、いつも総選挙の結果がそう芳しくなかった。人気メンバーの順位はいつも実力に見合っていないと感じた。突如として躍進する若手もいなかった。
NMB48を応援してる、でも大量投票する訳ではない身としては、いつも総選挙の季節が来るのが嫌だった。メンバーが落胆する顔を見るのが嫌だった。女の子たちが、理不尽に翻弄されているような気がした。

NMB48を作り上げたメンバーのこと

NMB48のメンバー選考基準は他の48とちょっと違ったのではないかと思う。「育てたくなる真っさらな女の子」ではなく、スキルや経験のある子たちが選ばれ、フロントに立った。「価値の無いものには金を出さない」大阪という土地柄を考慮したのかも知れない。
山本彩は過去にガールズロックバンドを組んでメジャーデビューしていたし、渡辺美優紀はキッズダンサーとしてコンテストにも出ていた。山田菜々はかつてハロプロ関西研修生だった。
彼女たちはスキルもありながら努力も惜しまなかった。
彼女たちの指導者であるAKIRA先生は後に「1期生は『叩き上げ』。アイドル不毛の地、アイドルは絶対に根付かへんと言われてる大阪にNMB48というのを作ろうと思うからどうにかしてくださいと言われて、やっぱり『ほんまもん』を作る必要があった。」と話している。
その結果、「守りたい」「育てたい」ではなく「『ほんまもん』のアイドルのパフォーマンスが見たい」「応援したい」というオタクが集まったのではないだろうか。

NMB48のメンバーはいつも凛々しかった。ステージ上では圧巻のパフォーマンスをし、ファンに弱音や不安を見せることは少なかった。「守りたい」派のオタクが少なかったし、総選挙の結果に期待できる訳でもなかったので、自分たちの能力に蓋をして「弱くて可愛い女の子」を演じる必要が無かったのかも知れない。
しだいに、個々の特性を活かして、モデル、ソロ活動、演劇やナレーション、バラエティなど活躍の場を広げていった。

YouTuber吉田朱里の誕生

それぞれが自分の個性を生かそうとする気風の中、アカリンこと吉田朱里がYouTubeの美容チャンネルを開設した。
当初はオタクには「女子ウケなんて金にならない」と蔑まれ、コメント欄にも(今では信じられないことだが)「◯◯さんの真似?」「あんまり可愛くない」なんて厳しい言葉も並んでいた。

それでも粘り強く、質の高い動画を更新するうちに「アカリンの女子力動画」の人気は高まっていった。企業とのコラボ、コスメ付きムック本発売、専属モデル就任、アパレルブランドのプロデュース、コスメプロデュース、冠フェスの開催とにわかには信じがたい活躍を見せた。その様子は、48のブームが収束しつつあるのとは対照的だった。「YouTuberのアカリン」は気づけば、たくさんの女の子たちの憧れの的になっていた。

自分で道を拓く女の子たち

現在NMB48には、卒業生現役生問わず色々な分野で活躍する子たちがいる。
山本彩はハイペースに曲を発表して毎年ツアーを行っているし、渡辺美優紀も芸能界復帰から精力的にライブを行い、アイドルプロデュースも手掛けている。福本愛菜、山田菜々、木下百花、三田麻央など各方面で活躍する卒業メンバーは枚挙に暇がない。
現役生も、アパレルブランドのプロデュースを手掛ける村瀬紗英、今や全国区のバラエティで活躍を見せる渋谷凪咲、セブンティーンモデルでありながら盆栽雑誌で連載を持つ山本彩加などたくさんのメンバーがそれぞれの強みを生かし活躍している。
こうした個人活動のみならず、吉田朱里が作り上げたQueentet をはじめ、だんさぶる、LAPIS ARCHなどNMB発のユニットの活躍も目覚ましい。

これらに共通するのは「メンバー主体の動きである」ということだ。上からのお仕着せではなく、「彼女たちがやりたいこと、彼女たちの能力が生かせること」を運営がサポートし、ファンが応援している。誰も搾取されていない。みんなが一つの方向を向いている。新しいお仕事の一報があるたびに、メンバーもオタクもライトファンも一緒になって喜べる。応援していて、こんなに楽しく幸せなことがあるだろうか。
そこにはもう、運営とオタクに翻弄される女の子たちの姿は無い。

新しい48のあり方

これはNMBオタクであるが故の感想かも知れないが、YouTubeチャンネルの開設や、ユニットライブの開催など、昨今AKB48がNMB48の動きを追っているようにも見える。
ただ、表層的に同じことをするだけでは、多くの支持は得られないと思う。大切なのは「メンバー自身がやりたいことをやって輝いている」ということではないだろうか。その姿が魅力的なので、たくさんの人を惹きつけるのだ。

10年前、AKB48の選抜総選挙が一大ムーブメントを起こしていた頃、女性ファッション誌には「モテ」という言葉が並んでいた。「モテファッション」「モテメイク」「モテしぐさ」…今は違う。多くの女の子にとって、「可愛い」「美しい」は選ばれるためのものではなく自分のためのものだ。「守ってあげたい」女の子像は過去のものになりつつある。
自分で道を拓く強さと美しさ、それこそがNMB48のメンバーが支持を集める理由だと思う。

女性が自分らしく生きられる社会であって欲しいと願うことと、アイドルを応援することを、鮮やかに両立させてくれたNMB48のメンバーたち。彼女たちの姿を見ていると、ふつふつと勇気が湧いてくるのだ。




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