「キャリア」と「企業の関わり」

「キャリア」の重要性は増していても…

近年、「キャリア」の重要性が増しているという。
ここでいう「キャリア」とは、「職務経歴」であり「仕事に対する自己イメージ」を指すとの見解がある(「キャリアデザイン入門〔Ⅰ〕基礎力編〈第2版〉大久保幸夫著 日経文庫 P16)。そして、豊かな人生を歩むには、自分自身で主体性を持ってキャリアを形成する必要があり、そのためには「キャリアデザイン」を描き、「自分はどういう職業人生を歩むべきか」を考え、行動することが肝要であるという。

その背景として、「終身雇用制」が崩れ、就職先が「一生奉職する場」というよりも「その時点でのたまたま働いている職場」に過ぎない、という職場の流動性が高まった状況になりつつあるということ。すなわち、リストラや倒産といった、勤務先の事情により職を追われることを含め、「一社に人生を捧げる人生」が安泰ではない、ということを指している。

「今の勤務先が『終の棲家』になるとは限らない」いや、「一時的な勤務先」と割り切らねばならない、という状況で、「自分の人生設計は自分の責任で考えなさい」ということである。

不透明な世の中、自分の人生は、自分で考える必要がある、ということを考えると、確かに「キャリア」の重要性は増しているのであろう。

「キャリアデザイン」に「勤務先」が関わることの疑問


企業でも、10年ごとや昇進時に「キャリア」に関して考える機会を設けているところがある。企業の採用活動時には、「わが社では、あなたのキャリア形成をサポートします」と謳い、新入社員の確保のインセンティブとしているところもある。

このような動きをみると、企業側も、社員のキャリアに関する問題に積極的に関わろうとしており、社員にとってもプラスになるのでは、と一見思ってしまう。

しかし、ここで引っかかるのは、
「なぜ『個人』がそれぞれ、『キャリア』を考える必要があるのか?」
という根本的な問題である。

最初に言及した通り、「キャリア」の重要性が増したのは、勤務先が「終の棲家」になるとは限らない、「流動性のある職業人生」になりつつある、という現実にある。

そして、「勤務先の企業」は、本当に社員のことを思ってキャリアをサポートできるのか?
という、根本的な問題がそこにある。

「流動性のある職業社会」を想定するならば、企業が、いつ辞めるかわからない社員に、手厚いキャリアのサポートを行うことの意味がどれだけあるだろうか?

ここで大事なのは、「キャリア形成」とはあくまでも「個人の職業人生を、自分自身で主体的に描くこと」であり、が必要がある。

もし勤務先がその社員に、「わが社に何かをもたらすために、キャリア形成を考えなさい」と要求するならば、それは今日課題となっている「キャリア」の話とは全く別の話になる。
なぜならば、大前提が「勤務先の収益への貢献」であり、それはあくまでも勤務先の論理・都合の範疇を出ないものになってしまうのである。

これでは、「流動化時代のキャリアを描く」というものとは、異なるものになってしまう。

「上司」がキャリア形成にかかわる「愚」

会社の「上司」と「部下」とは、あくまでも「その企業の中で、収益増大を図るための人間関係」が第一にある。
その中では、長い付き合いの中で「師弟関係」のような、企業の論理とは別の「絆」が生まれる可能性もあるだろう。

ただ、「上司」も、企業という「組織」の人間である以上、「部下個人の幸せ」のみを考えてキャリア形成に協力するとは考えにくい。

「キャリア」を考える際、社内の昇進、社内で必要な資格取得といったことを考えるのではなく、あくまでも「自分の職業選択」について考えなさい、というアドバイスを見かける。本当に、その人自身が「職業選択」のみを純粋に考えられればいいのだが、企業内で行う場合、問題が出てくる。

それは、「上司の検閲」である。
敢えて「検閲」と書いたのは、その上司が「キャリア形成」についての理解がないと、「どのように会社に貢献するのか?」ということを言及しだすことにも繋がりかねないからである。
残念ながら、これだけ「キャリアが大事」を言われていても、いや、社会全般に「キャリア」ブームになっているからこそ、「キャリア」について何もわからないまま、「キャリア教育をします」と言ってしまっているのではと思われる節があるのが懸念される。

特に、人事部あたりで発信している場合、とにかく「キャリア教育」をします、上司が評価してください、と丸投げしていては、キャリア形成に関してむしろ弊害が生じるのではないかと危惧している。

それでは結局、上司の機嫌取りにしかならない、形骸的な「キャリア教育」ばかりなされ、「時間の無駄」にもなりかねない。

「キャリアコンサルタント」とどう関わるか

この「キャリア」の問題に関しては、個人で考え、相談先は「上司」ではなく「キャリアコンサルタント」や「友人」「家族」といった、勤務先の利害関係から離れたところで考えるのがベターであると思う。
「上司」でも、会社の論理から離れ、その人を思って話を聞いてくれる人ならいいが、先ほども触れたように「上司」も会社組織の一員である以上、その前提を忘れてはならない。

先ほど出した「キャリアコンサルタント」について、どのように接点を持てばいいのか、ここがポイントになるだろう。
私の浅薄な経験では、キャリアコンサルタントに気軽に相談に乗ってもらうにはどうすればいいのか、答えが出ない。
これだけ「キャリア」を考える重要性が増しているというならば、個人の意思でキャリアコンサルタントと気軽に相談できる仕組みを整えることが大事ではないかと考える、



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