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103 五感を揺さぶるバーチャル極楽見物

            写真:京都・宇治の平等院鳳凰堂(撮影:筆者)

 伊勢神宮もさることながら、優れた宗教施設は、太古に成立した魅力的なマルチメディアである場合が多いように思われます。

 たとえば世界遺産の京都・宇治の平等院です。
 11世紀半ば、藤原頼道が建立したこの寺の阿弥陀堂、すなわち鳳凰堂は、

  「この世に極楽浄土を現出させる」
 
 という思いに由来するとされます。

 浄土式庭園の池の中島に、左右に広がって建つ優美な建築の中堂には阿弥陀如来が鎮座しています。
 その周囲の螺鈿(らでん)や飾り金具で装飾された須弥壇(しゅみだん)は実に絢爛豪華です。

 壁や天井も、かつては極彩色の絵画や彩色模様が施されていたそうです。それは、いわば「視覚的バーチャル極楽」にほかならないと言うべきでしょう。

 そこに良い香りの香が焚かれ、荘厳な読経が始まるとします。すると嗅覚と聴覚が快く反応します。

 やがて読経も終わり、真夏の猛暑のなか、水面を渡る「極楽の余り風」に肌を預けて一服の旨い茶を嗜んだりします。
 心身はかりそめの極楽にたゆたい、素直に仏のありがたみを受け入れるのではないでしょうか。

 観光客に人気の高い欧米のカソリック系の教会なども同様でしょう。

 天に伸びる尖塔、神や天国の姿を映し出す美しい彫刻やステンドグラス、パイプオルガンの快い響き、乳香や没薬(もつやく)の芳香、冬は暖かく夏は涼しい壮大な石造建築……。

 そこに神父の祈祷の言葉がこだますると、人は快く神の国に誘われるはずです。

 そうなのです。宗教施設に詣でることは古い時代、人々の大事な楽しみだったに相違ないのです。

 それは今なお日本でも世界でも、バーチャルに極楽や天国の相貌を見せることで多くの人の五感を楽しませてくれるマルチメディアにほかならないと思えるのですが、いかがでしょうか。

 この記事とは、余り関係がないのですが、ぼくは、こんなキンドル本を出版しています。
 無論、Kindle Unlimited なら、無料でダウンロードできます。お読みいただけると、大喜びします。
 21世紀になって、好ましいことの少ない日本の現状を、少し別の角度から考えてみるキッカケにならないかと思い、こんな本をまとめた次第です。


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