【医師の“複業”】 好条件を得るためのロードマップ
今年2月から医師を「副業」と位置付けている私が、医療機関外から業務を委託される(主に医療ライター、医療監修などで、給料ではなく「成果報酬」をいただく)にあたり、交渉力・マーケティング力がないばかりに報酬を買い叩かれたり、最悪、報酬を踏み倒されることもある、といったことについて書き進めてまいりました。
(→『医療機関外で買い叩かれる医師たち』参照)
今回、そこからさらに深堀りしてまいります。
資格だけじゃ報酬が上がらない時代に突入
労働と違い、法の縛りというものがない業務委託契約というものは、「できるだけ低いコストで、確実な成果を得たい」vs「できるだけ労力少なく高額案件を売りつけたい」当事者同士のせめぎ合いとも言えます。
医師は状況によってどちらの立場にもなりうるわけですが、今回は後者、つまり、相手にいかに自分の単価を高く買ってもらうか、というケースにおけるお話をしようと思います。
マーケティングにおいて、顧客からの信頼が上がる要素といえば、
・Expertise(専門性)
・Trustworthiness(信頼性)
・Autoritativeness(権威性)
なのですが、
医療ライティングにしろ、医療監修にしろ、SNS運用代行(クリニックのホームページやブログ、各種SNSアカウントの「中の人」役)にしろ、どの業務を請け負うにしても、この3要素が揃えば揃うほど、こちらの値打ちが上がっていきます。
さらに、本来であれば、経験・実績を積み重ね、単価が上がるまでに踏むべき、基本的かつ相応のステップというものがあるのですが、医師は先の3つの要素を中途半端に兼ね備えてしまっているため、この「基本のステップ」をすっ飛ばして、他の職種より比較的優位に副業を始められることが多かったのです。今までは。
ゆえに、有資格者である医師は、マーケティングに欠かせない人材であり、その一環として医療監修であったり、医療記事のライターであったり、と言ったお仕事を、相場と比べて比較的高い単価で依頼されることも多かったのです。今までは。
ですが、ここに気づいた医師が増えだしています。
Webのお仕事の入り口に「クラウド◯ークス」「ラン◯ーズ」といったクラウドソーシングサービスがありますが、最近、登録している医師が増えてきていてビックリします。
ともすると需要と供給のバランスが崩れます。医師免許単独では、上記の3つを充足できなくなってくる、となると発注する側は当然、コストを抑えたいわけですから、担い手が多くなった、となれば必然的に単価が低くなってきます。
こうなると、先に申し上げた「経験・実績を積み重ね、単価が上がるまでの、相応のステップ」を踏んでいないと、足元を救われてしまうのです。
じゃあこのステップというのはなんなのでしょうか。
魅力的な「複業」オファー 検討前にすべきこと
ゼニを稼ぐ前のフェーズ:自己分析
「ええっ?」と思うかもしれませんが、実は最初のステップはここです(笑)。
案件を受ける前に、まずコレです。
医師として業務するにあたり、自分はどういう性格で、どういう仕事の仕方が向いているのか、どうして医師になったのか、医師という職務をしながらどんな人生を送りたいか、自問自答しながらキャリアプランをお決めになりますよね?
そこが固まらないまま専門を選んだり、勤務先を選んだり「しません」よね??
じゃあ「副業」であってもそれをやらない理由なぞ、どこにもないわけですよ。
そもそもどうしてその業務を受けるのか、受けた結果、どうなっていきたいのか? 一歩立ち止まってそこをよく吟味する必要があるのです。意外とそこが抜け落ちる。
そして、こうした自己分析をするのに必要なのが、『「仕事を獲りに行く」マインドセッティング』、でお話しした「自責思考」です。ここから自分ですることは全て自分に降りかかってくるということ。
悪い条件をふっかけられても、足元見られたとしても、相手が悪い、という思考ではなく、全て自分が招いたことだとする考えです。
さらに、こうした副業をちゃんとした収入源にしたい、知名度を高める足がかりにしたいという思いが強いのであれば、先の記事で書きました「積極的に行動を起こしていく」「リスクを恐れすぎない」というマインドセッティングも必要になってきますので、ぜひとも、おさらいしながら読んでください。
そもそもどうしてその仕事を受けるのか、受けてどこに向かいたいのか
医療ライティングの仕事を始めるとしましょう。収入のために始めるのか、それとも自分自身や自分のクリニックの認知拡大のためにするのか、はたまた両方か、それによって微妙にスタンスが変わりそうなことを、まずは想像できますでしょうか。
収入のため、とするならば、外来診療をするのとどちらが割りが良いのか、などといったことも考えるでしょうし、
認知拡大目的、としたら、そこに自分の顔が載ることで、どこの、どれくらいの人に見てもらえるのか、といったことを深掘りしていくことになるでしょう。
(あるいは深掘りせずにとりあえず受けてしまうかもしれませんがw)
私は「旅する医師」というブランディングを確立して、そこからお仕事を受けていこう、と決めてからアメブロを始めたわけですが、
目的が明確ゆえ、ブログのコンセプト、目指すアクセス数、それに向かってどういう過程を踏むかについてのビジョンも、何も考えずにやる人より明確なわけです。
このステップは最初に1回やって終わり、ではないです。自分の立場や状況が変わるたび、見直すことになります。
ブログを始めて2年してお仕事のオファーが増え始めた。連載と、SNS運用代行をやってみて、自分は「中の人」じゃない。やっぱり自分を発信していくのがメインだ、となる。
ゆえに今、SNS運用代行のお仕事を増やすためのアクションより、自分からの発信を優先する。
メディア連載においても、自分は将来こうなりたい、そのためにはこういう頻度で、こういう記事を書いていく。こちらは3ヶ月に1回のペースで見直す作業を行っています。
自分の「市場価値」の把握
お仕事を受けて自分が何を目指すか、どうなっていきたいか、そこが明確になったら、
では自分は相手から見てどれくらいの価値があるのか、
同じくらいのレベルの人間がなんぼ稼いでいるのか、
自分が受けたいお仕事は、通常いくらくらいでオファーされているのか、
そもそも相手はなんでまた自分にオファーしてきたのか、
なんか胡散臭い目的はないのか? なんか騙されてない??
その辺りのリサーチをすることになります。
自分に目が向けば、そこを踏まえて必然的に相手を値踏みせざるをえなくなりますから、まず自分に目を向けてください。
これをやらないと、自分に市場価値がないから安価でも受けざるをえないのか、それとも相手が安い料金を不当にひっかけてるだけなのか、そこが把握できません。
実際把握しないまま仕事を受けてる輩が多いので「ほれきた!」と、こうして記事にして原稿料を稼いでいるわけです。
ご馳走様です、ってなもんですが、冗談抜きにして、そんなんで大丈夫か、チミたち!? と突っ込みたくなるくらいです。
まあ、私としてはライバルが少ないに越したことはないのですが……(以下略)。
医師の副業、ともなると、こうしたオファーを受けることを前提にコトを進めるというより、オファーが来て初めて考えだす、ということも多いかもしれませんが、
なんにせよ、この作業は案件をお受けする前に、絶対しなきゃいけないことです。本業だから、副業だから、じゃなくて、カモにされて嬉しいか、嬉しくないかで決めるくらいのものです。
そこが抜けたまま、
あるいは「副」業だからと分析が甘いまま、
あるいは面倒臭いからと、
分析をしないまま仕事を受ければ、相手は医師よりはるかに実務を重ねた百戦錬磨の「社会人」。「してやられて」しまいます。
免許+実績で好条件を引き出せ!
とにかく実績を積むために
自己分析・目的が定まったうえで、やっと「こんな条件で案件を受けよう」と具体的に業務委託契約を交わすことになります(この業務委託契約というものもまた「恐さ」のあるシロモノですが、詳しいことは次回書かせていただきます)。
ここを経てやっと業務を開始するのですが、「じゃあ、どういう基準で、どういった値段の業務を受けていくのが妥当なのよ」という話になってきます。
ここでまた、おさらいしておきたいのが、マーケティングにおいて、顧客からの信頼が上がる以下の3つの要素です。
「医師免許」を持っていることで、ある程度は依頼者からの信頼を高められても、さらにその業務を望む医師がうじゃうじゃ、となれば、免許だけでは勝負できなくなってくるわけですので、臨床経験が豊富である(専門性)、大学の教授である(権威性)、といった複数要素の掛け合わせで高めていくことになります。その要素の一つに、「その業務自体の経験や実績」というものがあります。
ライターならライターで、見ず知らずの人に頼むより、ある程度実績が把握できる方や、以前お願いして、それが良かったからと、その人にリピートして頼みたい、というのが頼む側の心理というもの。
業務を請け負った経験が豊富で、それが数字に表れている(ブログやSNSでよく表明している人を見かけるアレですね。ハッタリもあるので注意が必要です)、などということが有利に働いてくるわけです。
ゆえに、実績のないうちは、無料や、格安でお仕事をお引き受けすることも手段の一つとなってきます。クラウドソーシングサービスでお仕事を探して、お引き受けするのも、主にこのフェーズとなります。
私はブログを始めてから連載のご依頼を受けるまで、アメブロを2年やっていたわけですが、当然のことながら、その2年間、ブログ経由での仕事依頼は「ほぼゼロ」です。
が、
「低単価案件」受けるにも限度ってものが…
安くてもなんでもかんでも、とにかく受けまくる、というわけではないぜ!?ということです。
だって、そんなん、体力削られるだけだぜ!?
なんで安くても受けるのか。これは、実績を積むためですよね??
じゃあ、受けても実績にならないお仕事なら意味ないじゃん。
つまり、
その業務が今後の実績として、具体的な数字、または成果物という形でお披露目できるものをお引き受けするようにしないと意味ないじゃん!
ということ。
クラウドソーシングサービスでは、実績の少ないうちはこちらからも積極的に応募して、ある程度は安めの単価でもお引き受けすることで、プロフィールに「受注◯件」「評価◯点」といった情報が公開されますので、徐々に立場が優位になっていきます。
すると、仕事のお声がかかる確率が増えるんですよ。実際に私も経験しました。これらの数字をSNSのプロフィールに書く、なんてのもいいですね。
ライターでしたら「ここにこの記事を納品した」=ポートフォリオといった形で実績をためていけるかどうかが肝になります。無記名の記事だったとしても「このメディアに何記事納品した」とお示しできるかどうか。
SNS運用代行でしたら「この業種のアカウントを運用し、◯ヶ月で◯%の売り上げアップに貢献した」などと、公表させてもらえるかどうか、がカギになります。
「こうした実績を、今後公表してもいいなら、無料または格安で請け負いますよ!」と話を進めていくことが大事なのです。
ここまでくれば、先に書きました「まだ実績がしっかりしていない業者から “1記事あたりAmazonポイント3,000点”での医療監修依頼」、これをどう取るか、きちんと考えられるようになりますね。
はたしてこのお仕事をお引き受けするのが、今後、実績としてプラスになっていくのかどうか。
まずこちらが第一。
そこで自分の知識をAmazonポイント3,000点で切り売りできるのか、自分の名前と顔がそこに出てもよいのか。
一旦ネットに出てしまった情報は、半永久的に掘り返されてしまいますよ。それでも構わないのか。
この辺りを検討していくことになるのです。
あとはとにかく行動あるのみ!
どれだけセオリーを知っていても、実際にやってみると、また新たにわかることばかり。
結果が出ている人ほど、行動するまでが素早く、行動量がハンパないです。
これ、やってみたかったけれど、実際やってみたらなんかちょっと違う。
自分は、意外とこういうことに向いているかも!?
え、こんなことを、ありがたがってもらえるの?
客観的にみて自分にどれくらいの市場価値があって、発注側とどれくらいの力関係があって、今の自分がどういった価値を提供できるのか、それが相手にとってどれくらいの価値があるのか、どうしたら、お互いWin-Winの関係に持っていけるのか。その辺りも把握できるようになってきます。
将来的な実績として積み上がらない内容の案件にも関わらず、そこを見極めきれずに受注してしまう、これはそんな仕事をオファーしてくる相手の責任ではございません。
自分を相手に売り出すマーケティングの知識・戦略がよろしくない、ということです(自責思考!)。
しかし失敗や逆境はチャンス。そこから得られる学びは大きいです。実践を重ねて、身につけていけます。
と、ここまでのフェーズが、金額でいうと、初めて案件をお引き受けしたという方から、月10万円程度の安定収入が得られるくらいまで、でしょうか。まあかなりざっくりしていますがw
併せて自己分析も繰り返し、安定収入を目指すか、単発でいいのかどうか、についても一緒に考えていくこととなります。ご自身の希望を突き合わせながら、医療監修よりライティングやSNS運用代行のほうが安定収入に繋がる確率が高いので、そこも踏まえてお仕事をお探しになったり、引き受けていったりするのが良い、というカラクリです。
と、このあたりまでが、医師に限らず、会社員の方など、定職をお持ちの方で「副業」を持たれる際、人数的に一番多いフェーズになるかと思います。
ここから上のフェーズを目指される方がなんぼいるのか!? 雲の上の話に聞こえるとは思いますが、そこを触れずしてなんのための連載なのか、と思いますので、このさらに上のフェーズのお話もちょろっとしてみようかと思います。
さらに高みを目指すとこうなる
単価を上げていく
実践を繰り返し、セオリーに経験が積み重なってきた頃には、月間10万円が安定して入ってくるレベルになってきているかと思います。ともすると、「他ならぬあなただからこそお願いしたい」的な依頼もちらほら、増えてきているはずです。
マーケティングにおいて、顧客からの信頼が上がる3つの要素、
・Expertise(専門性)
・Trustworthiness(信頼性)
・Autoritativeness(権威性)
この辺りが積み重なり、代わりがいない状況が増えてくれば、必然的に単価は上がっていきます。
自分はどのあたりを目指したいのか、常に自己分析を重ねながら実践を繰り返していくことで、「マーケティング」の知識もついてくるので、「発注者=クライアントの選別」ができるようになります。
相手の手練手管にやられることなく、逆にこちらから、彼らの手法を分析でき、本当の実力というものを炙り出すことができます。って、実はこれ、これまでに書いた、医師からお仕事を外注するケースでもほとんど同じフレーズを書いているのですが、受注する場合も一緒なんです。(※複業医師直伝!「結果を出してくれるサービス」の見分け方参照)
客観的にみて自分にどれくらいの市場価値があって、発注側とどれくらいの力関係があって、今の自分がどういった価値を提供できるのか、それが相手にとってどれくらいの価値があるのか、どうしたら、お互いWin-Winの関係に持っていけるのか。その辺りも把握できるようになってきます。
単発で医療監修などの業務を受けていくのがいいのか、メディア連載やSNS運用代行などで安定収入を得たいのか、そこも踏まえてお仕事をお探しになったり、オファーを引き受けていったりする過程で「単価を交渉」していきます。交渉力もマーケティングの大事な要素の一つであり、クライアントさんとのやり取りも、学びです。
月10万円の壁を突破すると、次の壁は月30万円にある、という方が多いようです。政府も年間300万円を超えたあたりから「副業ではなく事業」と認識していることから、この辺りからまた次のフェーズになっていきます。
自分一人での限界に挑戦
この頃にはSNSを筆頭に、あらゆるネットワークが確立し、自分から営業をかけなくてもよくなることも増えていきます。
実績のために低単価で受ける仕事が多いクラウドソーシングサービスは卒業か、ごくたまに高単価なオファーが来たのを拾い上げるか、その程度になります。
当初は相場より安めに受注したケースでも、実績が積み上がった段階でタイミングをみて、単価を上げるべく交渉するといった形で、一つの契約先と、より密な関係を目指していく、といった戦略もありますし、「それでは今までありがとうございました」、と、その業務は「卒業」させてもらい、その実績をもとに、報酬の高い新規契約を獲得する、ということもできます。
この段階になれば、そうした交渉力も、ついているはずです。
オファー自体が増え、同時に複数契約することもあるでしょう。
月間30万円を安定して稼ぐレベルになると、もはや自分が動かなくても仕事のオファーが途絶えない状況を作り出せていることが多いので、あとは一人で請け負うことができる臨界点を探ることになります。私も今現在、この段階におります。だいたい月間50万円が臨界点となることが多いようです。
そのさらに先のフェーズにつきまして
ここから先は、もう本業の域で、医師だけど別の稼業で起業されている方のレベルになってくるわけですが、今のご時世、決して少ないわけではないので、サラッと書いておきます。
一人でできるキャパを超えそう、となれば、今度は人を雇ってチーム化、となっていきます。
漫画家さんのアシスタントがそれですし、私も当連載にあたり、当メディアの編集部さんに、コンセプト設計やマーケティングを複数で判断してもらう、そして苦手な校正の部分を「丸投げ」する、という形で「業務を分担している」という意味で、チーム化に片足突っ込んでいる、とも言えますでしょうかね。
個人的には、今後複数のメディアや、あわよくば出版社と繋がって、さらに多くの方に自分の文章を読んでいただけるようアクションを起こしていく、といったことが目標になってくるわけです。
チーム化ができ、月50万以上売り上げることになってくると、法人化も視野に、となってきます。税理士さんと相談です。
以上、医師が「副業」(私においては「本業」)として請け負う可能性があるお仕事のフェーズについて、書かせていただきました。
ご参考までに、今現在、私がどのくらいの条件でお仕事を受注しているか、こちらnoteにて包み隠さず公表しております。興味がございましたらぜひご覧ください。
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