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ぼちぼち旅行記(土佐編) カツオと酒

 前に書いた旅行記の続きになります。もしよろしければ、前のお話を読んでいただければ幸いです。

 特急に揺られて高知に着いた私は、当初の予定どおり昼間っからビールを飲み、ほろ酔い気分であった。

 大人になってからいつしか「昼間っから飲む」という背徳感から来る優越感が好物になっている。特に旅に出てのこれは最高である。
 ほろ酔いではあるが、ホテルにチェックインするにはまだ早い。少し酔いも冷ましたいので、歩き始める。少しは動かないと晩ご飯まで腹が減らない。

 幸い近くに高知城がある。その土地に住んでいると観光地とは案外行かないもので、高知から離れてから初めて足を運んだ。よくよく考えてみるとお城自体入るのが初めてかもしれない。
 城門をくぐると大きな階段が続く。炎天下の中、登っていくとそこには…アイスクリーム屋の屋台があった。コンビニでも売っている「アイスクリン」が屋台で売られているのは高知県だけだとか。ほとんど進んでいないのにアイスクリンを購入して、近くのベンチに腰掛ける。普通のバニラアイスかと思ったが、思っていたより甘ったるくなく、サッパリしている。これは炎天下の酔っ払いによく効く。

 アイスクリンを食べた後、少し水を飲んで上に登っていく。料金を支払い城内に侵入する。入って、暫く道なりに進むと着物が飾ってある。何故こんなところに着物が…と思ったら説明書きがあった。
 どうやら大河ドラマで実際に仲間由紀恵さんが使用した衣装らしい。高知城主山内一豊の妻 千代の生涯を描いた『功名が辻』である。
 城の中を進んでいくと天守閣についた。昔のお偉いさんはここから城下町を眺めたのかと思うとなんだか感慨深い気持ちになった。

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 城から出るとそろそろ良い時間になったのでビジネスホテルにチェックインする。高知市内には良い旅館もたくさんあるのだが、折角なので夕飯なしの素泊まりにして夜の街へ繰り出すことにした。

 まだまだ夕方ではあるが、ホテルで風呂に入ってまったりしてから街に繰り出した。昼間にひろめ市場で食べた「明神丸」の違う店舗に入る。
 まずはキンキンに冷えたビール。そしてカツオのタタキのタレと塩、皮付きの刺身を注文する。タタキは言わずもがなではあるが、皮付きの刺身は歯ごたえがありプリプリで最高に美味い。刺身を口にしてビールを飲む。

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 タタキを堪能しながらビールを飲んでいると、あっという間にジョッキが空になった。折角高知に来たのだから日本酒も飲まねばならない。

 土佐の日本酒と言えば、土佐鶴や司牡丹が有名だが、私は「酔鯨」が好きだ。少し辛口でキリッとした味わいが好きなのだ。酔鯨と酒盗を注文する。酒盗はカツオの内臓の塩辛で、この塩辛さと旨味が非常に日本酒と合う。正に酒を盗む食べ物だ。こちらをチビッと摘まみ、日本酒をチビッと飲む。

 美味い。口にする度、その言葉が出てくる。

 程よく酔いも回ってきたので、カツオを巻いた巻き寿司「土佐巻き」を食べる。このお店では醤油ではなく、つぶ塩が出てくるのでそれに付けて食べた。〆にしては少し味が濃い気もするが、美味いから良しとしよう。

 その後は気分も良く、夜の街をぶらぶらと歩き、屋台でラーメンと餃子を食べ、ホテルに帰った。なんだか太りそうな予感しかしないが、今日と明日は気にしないでおこう。

 ふと目を覚ませば、日曜の朝。酔っていたこともあり、昨日の終盤の記憶がない。

 高知で日曜と言えば、市内の道路を一部完全封鎖して、市場が大体1kmくらい店舗が並んでいるのだ。若干異国文化っぽい雰囲気が漂うこの市場だが、色んなものが売っている。工芸品から土佐刃物。おばあちゃんが漬けた漬け物に野菜や魚。買い食いも出来るので、土佐のショウガを使ったひやしあめを買って飲みながら歩く。日曜市では有名な「いも天」を買う。ふわふわで熱々のサツマイモの天ぷらである。何かしら特別なものでもない気もするが、これが絶妙に美味しい。

 そんなこんなであれやこれやとお土産を物色していると昼前になってきたので、高知駅に向かい帰路につく。
 いつも旅行というものは少し終わりがけが寂しい。高知駅から離れていく電車に乗って過ぎ去る景色を見てなんだか切ない気持ちになった。

 電車の中で日曜市で買った、田舎寿司をほおばる。鼻に抜けた柚子酢の香りが旅行の余韻を感じさせてくれた。

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