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ショートショートnote杯で最終選考まで行きました。やったぁ!

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ショートショートnote杯で最終選考まで行きました。やったぁ!

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君に贈る 最後の【ショートショートnote杯】

待ち合わせの場所につくと、遅いと言わんばかりに手が差し出された。 苦笑しながら持ってきた花束を置き、横柄な要求にエスコートで応じる。 ダンスはいつも、彼女から始まるのだ。 ともあれ、せめて花を受け取ってからにしてほしい。 抗議はいたずらっぽい笑顔で黙殺された。 せっかくの広い空間だ、LODは気にしない。 奔放な彼女の動きに振りまわされるがままに任せる。リードなど知ったことか。 夜闇の中だが、やたらと明るい月が彼女の姿を際立たせる。 足もとに不安は無く、彼女の動きが手にと

    • 毎日書こうとするとなんだか消耗しますね。2日に一回くらいがクールダウンにいいのかもしれない

      • バーチャル イライラする【ショートショートnote杯】

        「ゾス! 営業から戻ってきました!」 「ゾス! 契約はとれたか!?」 「と……トレマセンッシタ……」 「数字とらなくてどうするんだよゴミカス! どうするんだよ!」 「ゾ、ゾス……」 「ゾスじゃねえんだよどうすんのか聞いてんだよ!!!」 「も、もいっかいいってきます……」 「返事はゾスだろうがァ!」 こんにちは、管理AI03‐光の戦士です。 いや、ひどい会話です。そう思いませんか。私はひどいと思う。 これは最新の技術で開発したバーチャル・イライラリティです。

        • 穴の中の サイン【ショートショートnote杯】

          『ありましたよ博士! 見るからに痕跡です!』 深い穴の下から、有線越しに助手の声が聞こえる。 長年探し求めてきた古代人の痕跡が見つかったようだ。 思わずあげた大声に、近くにいた作業員がこっちを見てくる。 や、やった! はやく映像を出してくれ! 画面に映し出されたのは、両足が無惨に折れた血まみれの死体だった。 う、うおああああああ!? 思わず叫び声をあげのけぞる。死体の虚ろな目が忘れられない。 な、なんで死体が! そして古代人の痕跡はァ!? 『死因は背中の刺し傷です

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        • バーチャル イライラする【ショートショートnote杯】

        • 穴の中の サイン【ショートショートnote杯】

          スマホ ごはん【ショートショートnote杯】

          2050年。あまりにも食事中にスマホをみるやつが多かったことから、農林水産省はスマホのコンテンツをおかずにする技術を普及させた。 俺は飯田。ただ、スマホをおかずにしないだけの普通の高校生だ。 確かに味は自由自在だが、あんなもの使いたいとは思わない。 みんな俺を奇妙な目で見てくるが、俺から言わせればみんながおかしい。 この昼食の時間だけでも異常性がわかると思う。まわりを見てみよう。 女子グループはきゃぴきゃぴした動画でご飯をかきこんでいる。あんな甘ったるいの、白米に合うわけ

          スマホ ごはん【ショートショートnote杯】

          伝説の しまうま【ショートショートnote杯】

          ほら、みてごらん。これは世界最初のカラー写真だ。 写っているのはタータンのリボンと……しまうまだねえ。 なんでしまうまなんて撮ったんだ、元からモノクロみたいなもんじゃん、って? 思うにね、この撮影者はそもそもしまうまなんて撮ったつもりじゃなかったんだ。 セストラルって知ってるかい? うん、不可視の馬。おとぎ話の獣だねえ。 あれ、実在したらしい記録が各地に残っているんだ。 しかしそのセストラル、ぱったりと見なくなってしまったようなんだ。代わりにしまうまが目撃されはじめた。 絵

          伝説の しまうま【ショートショートnote杯】

          助手席の 貯金箱【ショートショートnote杯】

          交通マナーが荒れ狂っていたあのころから50年がたった。 あらゆる技術が導入され検討されたが、結論として、あるひとつの技術に落ち着いた。 導入後のとある若者を見ていこう。 見るからにガラの悪い、リーゼントの若者がやたら車高の低い車を走らせている。 彼は目の前の横断歩道を渡ろうと戸惑う老婆を見て、おとなしく車を停止させた。 『ちゃりん 横断歩道で停まる +10点』 助手席に置かれた巨大な箱から電子音声が聞こえる。 「点数貯金箱」である。交通マナーに応じて点数を貯めるこの機械は

          助手席の 貯金箱【ショートショートnote杯】

          バーチャル バーテンダー【ショートショートnote杯】

          カラン…… グラスに浮かんだ丸い氷が音をたてた。 VR上に再現されたバーで、私たちは“計画"前の決起集会に集まっていた。 完全に隔離された空間に馴染みの顔が揃う。 もうすぐ悲願が叶う。こんな夜には……マスター、全員にマティーニを。 こんなときにVRは便利だ。 バーテンダーが作った1杯の情報を全員のグラスに転送、受け手のグラスの再現素子が舌や嗅覚を刺激し、ドリンクの味を完全に再現するのだ。 ふと見慣れたマスターのシェイクが目に入る。 おや、やや動きがぎこちない。不調だろ

          バーチャル バーテンダー【ショートショートnote杯】

          石けん ごっこ【ショートショートnote杯】

          大学4年生の春。就職活動に行き詰まった僕は、必死に対策を練っていた。 『あなたをモノで例えるなら」ぁ? もうウジ虫でいいから、ここで働かせてください…… 参考書を閉じてつっぷす。 潤滑油では勝てない。上位互換じゃないと。 潤滑油はぬるんぬるんするのが特徴だけど、もう一要素ほしい。 ――におい。そうだ、いいにおいは強力な武器だ! 清潔な印象もある。石けんこそ、最強だ! 日をまたいで面接当日。 よりにもよってグループ面接か……! 隣のさわやか系男子に慄きつつも進んでいく

          石けん ごっこ【ショートショートnote杯】

          最後の 笛【ショートショートnote杯】

          演奏が響く舞台裏。 出番を待つオレは……絶不調だった。 なあ、オレ、本当にできるかな……? 絞り出した声が、手の震えがとまらない。 握った相棒が、心情を表すようにブレる。 「なに言ってんの、君は僕たちの中でも一番上手い。自信持ってよ」 「我が唯一認めた使い手だ。何を怯えることがあろうか」 「あたしに勝ったんだから、半端な舞台は許さないよ!」 ライバルたちが声をかけてくる。 そう、オレはこいつらと競い合って、勝ち上がってここにいるんだ。 生死をさまようくらいの修練、心

          最後の 笛【ショートショートnote杯】

          恥ずかしがり屋の ごはん【ショートショートnote杯】

          ゴチ丼です! 大盛りデカ盛り何するものぞ、グルメデブ太郎です! 今日はね、丼もので有名な 「底抜け丼」さんにお邪魔しています。 ビッグスタミナミステリー丼っていうね。 むほほ、よだれ出てきたw さあ、店内は普通のカウンター席。ちょっとキッチンの床が高いかな? 注文から10分で着丼! このそびえ立つ全高30cmの盛りが特徴でね、ご飯がなかなか見えないっていうね! 早速、切り崩していきましょう。 いただきデブ! おやぁ? 掘っても掘ってもご飯が出てきません。 むほほ、恥ずか

          恥ずかしがり屋の ごはん【ショートショートnote杯】

          カミングアウト を待っている【ショートショートnote杯】

          ごきげんよう、いい葬式日和だね。 棺桶を覗く遺族たちの泣き顔が……なんだねその笑顔は。 まあいい。早い話、ドッキリってやつだ。 私は死んだふりして棺桶の中さ。 「なんだよあの遺言! おかげで親族同士の抗争だ! 6割が逝っちまった!」 どうせ嘘だし適当に書いたんだ。 さて、手はず通りにネタバラシ役の側近の声が聞こえてくる。 「当主さまへ哀悼の意を示しつつ、しめやかに……と見せかけて〜?」 遮るように破裂音が2回。 「セバスチャンが殺られた!」 「クソ、酷男の手か! バ

          カミングアウト を待っている【ショートショートnote杯】

          ごはん 部【ショートショートnote杯】

          いっけなーいっ、遅刻遅刻! あたし、パン子。どこにでもいるJK。 今日は転校初日。なのに寝坊しちゃって大変! あわててパンを咥えて玄関を飛び出す。 なんだか今日は、素敵な出会いがおこりそう。 期待に胸を膨らませながら、コーナーをアウト・イン・アウトで攻めたあたしの―― 口元からパンがひき抜かれ、めいっぱいの白米が口の中に詰め込まれた。 あっつあつのごはんはさながら罪人を浄める煉獄の火のよう。 吐き出そうとえずくあたしの口に、そっと人差し指が添えられた。 あたしから奪ったパン

          ごはん 部【ショートショートnote杯】

          イライラする メガネ【ショートショートnote杯】

          最初から、やぼったい彼女のメガネにはイライラしていた。 強い度で歪んだレンズごしでは、いまいち瞳が見えないから。 はじめて会ったときあたりの、様子をうかがう目線が嫌いだった。 しびれを切らして無理やり覗き込んだ彼女の目が、存外きれいでそっぽを向いた。 なにを言うでもなく僕を見る彼女の視線には、あまりいい気分はしなかった。 かすかに浮つく僕の気分の、その理由がわからなかったから。 好きなことを喋っているときの目は嫌いじゃなかった。 普段もそれだけ喋ればいいのにと、口に出す

          イライラする メガネ【ショートショートnote杯】

          宝くじ 私の【ショートショートnote杯】

          年末恒例の宝くじを買おうと販売所に近づいたそのとき、薄汚いおじさんが話しかけてきた。 「君だ君だ。はじめまして、待っていたんだ。早速で悪いが、順番を代わってくれないか? ただというのは忍びない。1万円出そう! 1万! いいだろ?」 いい年こいてみっともない。こんな年の取り方はしたくないね。 まあ、順番を譲るくらいなんてことはない。これから1等を当てる私には、はした金なのでお金は断って順番を譲る。 おじさんはくじを1枚だけ買い、走り去っていった。 後日、抽選結果を確認した

          宝くじ 私の【ショートショートnote杯】