時間をかけて練習する、つくる。

最近、ピアノを弾いている。
実家が引っ越して手狭になったので、ピアノを我が家に移したのだ。

ピアノは楽しい。
チューニングをせずにパッと弾けるのが良い。
一人で弾いてても、メロディと伴奏ができるのが良い。

今は、中島みゆき氏の「糸」を練習している。

友人が聞いたら「またかよ」と思われそうだ。
約一年前も、「糸」を演奏したのだ。
その時はマンドリンとギターで。

「糸」はメロディが美しいし、歌詞がとても好きだ。
昨年は友人の結婚式で演奏させてもらった。

「縦の糸はあなた
横の糸はわたし
織りなす布は いつか誰かを 温めうるかもしれない」

この歌詞が友人夫妻にぴったりだと感動して、選曲した。

ピアノで一人で練習していると、少し昨年のことを思い出す。(難しくて弾くのに集中しているので、少し、だ。)

特に前奏の部分。
マンドリン&ギターで弾いた時とよく似た前奏なのだ。

前奏は、ギターを弾いてくれた友人が一人で弾くパートで、私はマンドリンをスタンバイしながら前奏に耳を傾けていた。

なので私も前奏の部分を弾くと、(本人曰く)慣れないギターで一生懸命前奏を弾いてくれた友人を思い出して、とても優しい気持ちになる。

・・・

思い返せば、少し前は「糸」を弾こうなどとは思わなかった。

けれど今はこうして練習できている。
上手になったら、友人夫妻やギターを弾いてくれた友人に聞いてもらいたいと思っている。

いろいろな変化のおかげで、少し前だったら考えられなかったところへ来たのだ。

すぐに、忘れてしまうけど、そうなのだ。

・・・

人は(というか私は)すぐに欲を出してしまう。

次へ次へとすぐに進みたがってしまう。

けれども、何度も練習を重ねないと左右の指は美しく動いてくれないように、状況も人の心もすぐにぱっと動くものではない。

むしろ、ピアノは練習をしまくれば短時間でも上達するかもしれないけれど、状況や、ましてや人の心はそういうものではない。

どうか、焦らないで。

ピアノや、
糸を織り成してつくられる布。

時間をかけて少しずつ美しくなるものたちの存在を思い出して。

抑えきれなくなりそうになったら、「糸」を練習して。

どうか、焦らないで。
ゆっくりと紡いで。

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