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ベンチャーのマーケティング組織は「キャズム」に連動する話

はじめまして。マネーフォワード クラウドのマーケティング部部長を務めている河野です。入社以降ずっとBtoB領域のWebマーケティングを担当しています。

マネーフォワード クラウドのマーケティング組織は、私が入社した5年前から今に至るまで変化を重ねてきました。この記事ではその経験をもとに、ベンチャー企業のマーケティング組織が成長フェーズごとにどう変遷していくのかと、各フェーズで必要になる人材についてお話ししたいと思います。

自己紹介

簡単に自己紹介をすると、こんな感じで働いてきました👇

・2008年に新卒でWeb制作会社の企画職
・2011年にGREEに入社。ゲームアプリ・プラットフォームの数値管理・分析業
・2014年にマネーフォワードに入社。マネーフォワード クラウドのマーケティングに従事

マネーフォワードに入ってからは、Webマーケティングを中心にアライアンスやイベント運営など、オンライン・オフラインを通じてユーザーにプロダクトを届ける過程に携わっていました。

こんな方のお役に立てればうれしい

ここでお話しすることは、あくまでマネーフォワードで私が経験した一事例をベースにしています。「これが正解!」というわけではありませんが、この記事がこれから組織づくりにトライされるマーケターの方にとって何かお役に立てればうれしいです。

<こんな方に読んでもらえたら!>
・社員数100名未満のベンチャーのマーケター
ほぼ1人で目の前のタスクを日々こなしており、とにかくチームメンバーを増やしたいと思っている方
・社員数100名~200名規模の企業のマーケター
メンバーの拡充を進めようとしている方。メンバーは増えつつあるが、チームとして機能させられるまでには至っていない
・社員数200名以上の企業のマーケター
チームとして組織化を推進したい方。メンバーが増えたが、それぞれスキルやバックグラウンドが異なるため体制構築の軸が定まらない

ベンチャーの成長は「キャズム」に連動する

マーケターなら耳にタコができるほどよく聞く「キャズム」という言葉。私たちのマーケティング組織は、サービスのキャズムと連動しながら変化していきました。

まずはキャズムを理解するために、「イノベーター理論」と「キャズム理論」というマーケティング用語を(釈迦に説法ですが)さらっとおさらいしましょう。

イノベーター理論とは

イノベーター理論1

イノベーションの普及に関する理論。商品購入への態度により、社会を構成するメンバーを5つのグループへと分類したものである。
[マーケティング用語集Wikiより引用]

イノベーター理論とは、プロダクトやサービスの市場普及に関する理論です。5つの消費者グループ「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」という順で世の中に広がっていくという考え方です。

キャズム理論とは

イノベーター理論2

ハイテク業界において新製品・新技術を市場に浸透させていく際に見られる、初期市場からメインストリーム市場への移行を阻害する深い溝を「キャズム(Chasm)」と呼び、従来のイノベーター理論における「普及率16%の論理」を否定したマーケティング理論のこと。
[マーケティング用語集Wikiより引用]

キャズム理論とは、初期市場からメインストリーム市場への移行が非常に難しいことから、その間に「キャズム」と呼ばれる深い溝があるという考え方です。

ベンチャーの成長は「キャズム」に連動する
サービスが成長し、会社の売上や従業員数が拡大すればするほど、ターゲットはイノベーター理論の左から右へと進んでいきます。

創業間もないベンチャーのサービスはイノベーター層を狙うことになりますし、事業が拡大しサービスが世の中に認知され始める頃にはマジョリティ層へアプローチすることになります。つまり、企業やサービスの成長フェーズごとに「獲得対象となるユーザーの属性」は変わってきます。

そうするとマーケティングの打ち手も変えていかなければならないし、普及の難易度も変わってきます。結果として、「マーケティング組織に求められる人材」も、常に同じ人材像を求めるのではなく、各フェーズに適したスキルセットを持つ人材が必要になります。マーケティング組織のリーダーは、それを意識した採用・組織づくりが重要となってきます。

フェーズによって変わる必要なマーケティング人材

初期フェーズ
従業員規模10~50名のベンチャー企業の初期フェーズでは、マーケターと呼ばれるような人は1名~3名くらいだと思います。

イノベーター理論3

この段階はとにかくスピーディーなユーザー獲得が求められるので、LPOや成果報酬型広告といった、コンバージョンに直結しやすいシンプルな獲得系の施策を行います。まだあまり潤沢なマーケティングコストがあるフェーズではないと思うので、リスティングは実施しても少額だと思います。

この時は「マーケター」というよりは、実態としては「何でも屋」と言う方が適切かもしれません。前述の獲得施策はもちろんですが「開発・営業・バックオフィス以外は何でもやる」という役割の人も少なくないと思います。なのでこのフェーズのマーケ系の人はスペシャリスト系よりもオールラウンダー系の方が向いていると思います。

成長フェーズ
サービスが少しずつ市場に浸透し、売上も徐々に拡大している成長フェーズでは、それまで2~3名だったマーケターも、このタイミングで採用が加速し5~10名ほどの組織へと急拡大していきます。

イノベーター理論4

また、サービスのターゲットユーザーもイノベーター層から次のアーリーアダプター層にシフトします。これまでやってきた施策の維持だけでは次の層に訴求できないので、獲得施策以外のアプローチに注力するようになります。

新たな打ち手としてはオウンドメディアでのSEOやコンテンツマーケティング、アライアンス等による外部プラットフォームからのユーザー送客などが挙げられます。これらの打ち手は初期フェーズの時にもやっていたと思いますが、獲得系のマーケターが様々なタスクと並行して行っていたはずです。このタイミングからそれぞれの打ち手に強みをもったスペシャリスト系人材が必要となってきます。

キャズム突破時期
会社の従業員数も数百名となり、マーケティング組織の人員は10名以上、投下するマーケティングコストもそれなりの規模になってきた段階です。

イノベーター理論5

この段階は、市場のマジョリティ層を狙いに行くフェーズです。マジョリティ層にリーチするということは、これまでのターゲットに比べ、“サービスに対する興味喚起・理解促進をさせるハードルが高い人たち”を自社サービスへ招き入れることになります。このフェーズが、企業とサービスの成長のキャズムになります。

マーケティングファネルでも上流の認知領域を狙うことになります。PR系に強い人や広告代理店のディレクションに強い人が入ってくるイメージです。獲得のその先のカスタマーサクセスやコミュニティ作りなんかにも注力する必要性が出てきます。

さらにこのフェーズ・チーム規模になると、メンバーの増加と職種の幅の拡大により、同じチーム内でも他のメンバーが何をしてるか見えづらくなってきたり、以前よりも連携が取りづらくなってきます。

そういった問題を解決するため、この頃からチームリーダーは軸足をプレイヤーから組織マネジメントやメンバー育成に移していくことになります。この規模になると、各ファネルにおけるKPIを担うメンバーたちが、自分たちだけのKPIだけを見ていても効果最大化は難しいです。周辺領域と情報共有・連携を維持しながら各施策を推進できるかが重要であり、そういった環境づくりをチームリーダーが担う必要性が増してきます。

さいごに

商材やターゲットユーザー、BtoCかBtoBかで違いはあると思いますが、「マーケティング」という守備領域が広いポジションをやる上で、会社の成長に伴う業務領域の拡大と人材の多様化は避けられないと思います。

いずれ訪れるその時のために、今のうちからでも意識できること・準備できることはあると思います。この記事がベンチャー企業で働くマーケターに対する、何かの気づきのきっかけになれば幸いです。


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