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知らない方がいい

機械仕掛けの摩天楼から 無機質な声が街に響く

「本日モ特ニ異常ハアリマセン」

だけど「私」はある朝気づいた

この街は大分おかしいことに

行くとこ 食べるもの 着るもの 

何故か全て機械が決めている

今まで私は特に気にすることなく

それが「当たり前」だと思っていた

だけどそれでは「私」が見当たらない

「私」という存在はどこに?

「私」はまだ自分で何も決めたことがない

機械仕掛けの摩天楼から 無機質な声が今日も響く

「本日モ特ニ異常ハアリマセン」

だけど、「私」は狂いそうだ

この街は何が真実なんだ?

名前も 住む所も

全て機械が決めるんだ

私は特に気にして来なかったが

今は疑問が尽きないんだ

「私」はいったい誰なの?

「私」という存在はどこ?

何がしたいの? 何で生きているのか?

誰も私に答えてくれない

私は過去が知りたくて

色々探してもみたけれど

「ナニモアリマセン」
「ケンサクケッカハアリマセン」

機械仕掛けの摩天楼から 無機質な声が今日も響く

「本日モ特ニ異常ハアリマセン」

だけど「私」は絶望している

やはりこの街はおかしいんだと

さっき私は道行く人々に聞いた

「貴方は今日何か自分で決めましたか?」

返ってくるのは冷たい視線

「貴方はこの街がおかしいとは思いませんか?」

"貴方の方がおかしいんじゃない?"という顔

「機械が全て決めていませんか?」

「ソウデスヨ ソレガナニカ?」

「そんなことでいいの?」

「ヨイ、トハンダンシテイマス」

機械仕掛けの摩天楼から 今日も無機質な声が響く

だがいつもと内容は違っているはずだ

「私」は街を出た

外の世界に何が広がっているのか

機械が管理していない生活はあるか

「私」とはいったい何なのか

それを探す旅に出たのだ

「私」はもう帰らない

自分の名前も生活も過去すら

「私」は探し出してみせる

機械仕掛けの摩天楼から 今日も無機質な声が響く

「今日ハ、残念ナオ知ラセガアリマス

世界デ最後ノ"人類"ガ

コノ街ヲ出テ行キマシタ」

「ソレ以外ハ 本日モ特ニ異常ハアリマセン」

そう言い、またいつも通りな日常を始めていた。