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Take Me Out to The Ball Game!! 第70週
今日は勝負の日だと心に決めてきたのだから、女神にはできる限りのもてなしをせねばならない。これが男の矜持というものだ。それに、テレビ中継で見た外野席の応援に尻込みしたという事実もある。それが透の限界というものだった。
「これぐらいは大したことないよ」
裏では様々な事情があったものの、透は女神にそう答えた。
「そういうことならいいけど……でも、ありがとうね」
完全には納得していない様子だ
Take Me Out to The Ball Game!! 第69週
「ああ、うん……それがどうかした?」
透がなんでもないように答えると、女神は心配そうに眉をひそめた。
「内野席って高いんだよ? 青山くん、お小遣い大丈夫だった?」
「いや、まあ……」
透は曖昧に返答した。実際は想像以上にチケットの値段が高く、財布への打撃は無視できないものであった。だが、ここで妥協するわけにはいかなかった。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第68週
そうしてショップから出ると、いつの間にか球場周りの人手が一気に増えていた。
「もうすぐ開場時間みたいだね。早く行こう、青山くん」
女神はそう言うと、やおら透の腕を掴んできた。透は胸が一気に高鳴るのを感じる。ことによっては、この状態が永遠に続いても構わない。だが次の瞬間、その感慨も吹き飛んだ。
「ほら、早く早く!」
「ちよっ、ちょっと待ってよ、結城さん!」
女神は透の腕を引き、勢いよ
Take Me Out to The Ball Game!! 第67週
どうやら、彼女の琴線に上手く触れることができたらしい。透は気を良くして、そのまま女神との買い物を続けた。店にはレプリカユニフォームの他にもリストバンドやキーホルダー、文房具にタオルなど様々なグッズが並んでいたが、透は女神とお揃いのプラスチック製の小さなバットだけを追加してレジへと向かった。合計で5500円だったが、ひとまず透はそのことを考えないようにした。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第66週
それでも諦めず、透は名鑑の中から自分にも分かる情報を探していった。すると、寸評欄に『昨季は全試合に出場』という記述のある選手を見つけた。この選手ならば、よもやレギュラーでないなどということはあるまい。そう考えた透は、その選手の背番号を確認すると、同じ番号のユニフォームを手に取った。
「タマちゃんか……いい選択だね」
女神が感心したように呟いた。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第65週
だが、ことはそう簡単には運ばなかった。先ほど流し見したときには気づかなかったが、この名鑑には一目で選手の格が分かる項目などないのだ。無論、探せばどこかにあるだろうが、今の透の知識でそれを突き止めるのは不可能だ。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第64週
(……ええい、迷っていても仕方あるまい!)
透は決然とした面持ちで商品棚の前に立つと、買い物かごから先程投入したばかりの選手名鑑を取り出した。
(ここに載っているデータを見れば……!)
そして逸る思いでページをめくり、ワイバーンズのエリアにたどり着く。
(バ、バかな……)
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第63週
「あっちも買わないとね!」
指の先にあったのは、彼女が身に着けているのと同じ服、いわゆるレプリカユニフォームの山だった。
「う、うん……そうだね」
口では同意しながらも、透は確実に圧倒されていた。ユニフォームの種類と数が多すぎるのだ。今女神が身に纏う「TSUCHIYA」を始め、商品棚には約20種類のユニフォームが並び、それぞれにサイズ違いが備えられている。対して透は、その中に埋もれる選手
Take Me Out to The Ball Game!! 第62週
だがこれは現実だ。なんとか正気を保って、女神との会話を続けねばならない。
「ああ、うん……やっぱり球場に来たらこういうのは外せないでしょ?」
透はやや虚勢を張るようにしてそう答えた。
「そうかもね。でも、どうせだったらさ……」
それを聞いて、女神はいたずらっぽく笑いながら店の一角を指差した。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第61週
透はこの情報量に圧倒された。これがあれば、一気に野球博士になることができ、女神との会話も弾むに違いない。その上、フルカラーときている。これはもう確実に買うしかないと考え、透はその本をキープし、そのまま近くから調達した買い物かごの中に入れた。
「へえ、青山くん。選手名鑑買うんだね」
その様子を見て、女神が微笑みかけてくる。ただそれだけで、透は天にも昇る気持ちになる。彼がよく見る気の利かないタ
Take Me Out to The Ball Game!! 第60週
「今日の先発瀬川だろ? 試合が早く終わるかもしれないな。完封だ」
「どうかな。ウチの攻撃だけで四時間はかかると思う」
ファンたちはそれぞれに思い思いのことを話しながら、商品を吟味している。透には会話の内容も、商品の良さもよく分からなかったが、取り敢えずこの未知の空間をよく観察することにした。
すると、『プロ野球選手名鑑(フルカラー)』という単行本が目に留まった。手に取って中身を見てみると、
Take Me Out to The Ball Game!! 第59週
勝利を収めるには、機を窺うことが重要だ。
「まだ開場まで時間あるね。青山くん、ちょっと買い物でもしない?」
「しましょう」
そんな思惑もあり、透は女神の誘いに一も二もなく同意した。正直に言って右も左も分からない今の状況では、素直に従うのが一番だ。
そうして二人は、球場に隣接するグッズショップへと向かった。入り口の自動ドアを抜けると、店内はすでに多くのファンでごった返していた。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第58週
これをデートと言わずして何と言うのだろうか。
(ならば、この好機……逃すわけにはいくまい!)
透の中に眠る武将が身をもたげた。
何に対しての好機なのか、これを掴む、または逃すとどうなるのかは皆目見当もつかなかったが、とにかく燃え上がるものを感じる。これは言わば、戦だ。確かに今の自分には、知識も無ければ武器も無い。
つづく
Take Me Out to The Ball Game!! 第57週
話を合わせそこなって、がっかりさせてしまったかもしれない。やはり一夜漬けの知識と、前日の試合三回のウラから八回表までのみという観戦歴では、女神と会話することもままならないのか。だがそうは言っても地上波のテレビでは夜7時から9時までしか試合は中継せず、夜のスポーツニュースを前にして、透は寝てしまっていた。この数日というもの、女神とデートできるという興奮で夜もろくに眠れなかったのだが、昨日に限ってそ
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