見出し画像

レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.10

【ブログの過去記事】


[17枚目]●タンパ・レッド『スライド・ギターの魔術師』<ソニー>(94)※録音年28~34。原題『The Guitar Wizard』


http://diskunion.net/portal/ct/detail/XAT-1245300647


タンパ・レッドと言えばジョージア・トム。このコンビと言えば「イッツ・タイト・ライク・ザット」。本盤もこの曲で始まる。但し、4ヴァージョン有る内の一つである。流れを書いておく。28年秋<ヴォカリオン>の考えでトムと組まされた、タンパ自身の初録音ともなる作品が一つ。ほどなく、タンパ・レッドのホウカム・ジャグ・バンド名義、フランキー・“ハーフ・パイント”・ジャクソンがヴォーカルを執る物が一つ。そして、本盤収録のパパ・トゥー・スウィート&ハリー・ジョーンズ(vo)名義の作品(こちらは<オーケー>から)。その6日前には<ヴォカリオン>でコンビによる第2弾が収録されている。実に2ヶ月ほどの間に、他作品の評判など関係なしに、微妙に形態を変え収録されたという事は、それだけ、音楽家も会社側もこの曲の素晴らしさに惚れ込んでいたのだろう。


デビュー作にして、歴史に残る重要曲を物したタンパだが、重圧に屈する事もなく良作を発表し続けた事は、本盤を聴けばよく解る。全17曲中、最初から9曲がコンビを中心とした物、残りがソロ作である。ホウカム調の物ばかりでなく、ディープな曲も多い。特に、ギター・プレイが主となるソロ作はその傾向となる。スライドも、ツボを抑えたアクセント的な物から、艶かしさ漂う物まで自在だ。


時代的には、戦前のシカゴ・ブルース。マディ達が活躍した戦後に比べ、デルタ・ブルースよりジャズの影響が強い為か、洗練されているとよく言われる。うわべはそうだが、結局は、都会人・田舎者双方に哀感は共通する。「洗練」と言っても微妙なタッチの違い程度に捉えても良いと思う。もっとも、微妙な違いが味わいなのだが・・・。


戦前シカゴ・ブルース・ミュージシャンとしては、ビッグ・ビル・ブルーンジー、ビッグ・メイシオ、サニーボーイ・ウィリアムソンⅠ世と並んで、タンパ・レッドの存在意義も大きいのだ。ライナーに拠れば、彼の家は、上記ブルースマン達の溜まり場でもあったらしい。


<ソニー>の名企画“ルーツン・ブルース”シリーズの一枚だ。ライナー・ノーツを始め、一部タイトルや歌詞が和訳されているので、知識もイメージも広がる。オリジナルのシリーズ編纂者はローレンス・コーン。


If You Want Me To Love You
https://www.youtube.com/watch?v=kmkeEL92Bzc

Sugar Mama Blues No. 1

https://www.youtube.com/watch?v=74T_UP337ec

Things Bout Coming My Way
https://www.youtube.com/watch?v=CZShGE1p8qw

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?