note_-_Developers_Summit_2020_のコピー

noteの決して止まらないカイゼンを支える、エンジニアリングへの挑戦

Developer Summit 2020にて、「noteの決して止まらないカイゼンを支える、エンジニアリングへの挑戦」という発表をしました。そのスライドや補足など。

この発表では、下記のようなことについて話させていただきました。

・noteチームが重視するサービスのグロースサイクルとは?
・そのグロースサイクルを円滑に回すために、開発チームをどう組織したか?データをどう活用したか?

noteのグロースサイクル

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noteをどう伸ばしていくかが表現されたのがこのグロースサイクル図です。"ブロック"が達成したい指標で"矢印"が具体的な施策にあたります。作者が集まれば、コンテンツが増え、読者も集まり、さらに作者が増え……という構造です。各指標をバランス良く伸ばすことでサイクルが回り、正のフィードバックでどんどんグロースしていきます。

ですので、単一のKPIだけを追うことはしません。たとえば売上だけをKPIにすると、有料記事だけリコメンドされたり、クレカ登録モーダルが頻繁に出てきたり...といった施策が是とされユーザ体験が落ち、他の指標に悪影響が出ます。結果、サイクルはどん詰まってサービスが伸びません。

ブロックをバランスよく強くするためには矢印の部分の状態チェックが大事。特に、弱いところを数字でウオッチしてそこを補強するのを重視します。発見性が落ちて読者が集まってないようから記事の回遊を増やすような施策を考えようとか、作者が集まっていないようだからコンテストやお題企画をたくさん考えて書くきっかけを提供したりとか、ですね。

グロースサイクルを支える開発チーム

グロースモデルを円滑に回すために開発チームを3つに分けました。基盤、機能開発、カイゼンの3チームです。社内では長期、中期、短期チームと呼んでいるのですが、それぞれ担当するタスクの粒度やコンセプトが異なっています。

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基盤チームの仕事はグロースモデル全体の下支えです。トラックデータなどを取得・加工・蓄積・可視化するためのデータ基盤を作ったり、プッシュ通知基盤課金や会計の基盤、通報機能を整備したりなど、土壌がためと他のメンバーの作業や意思決定をサポートするチームです。

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機能開発チームは最大3ヶ月くらいの規模感の機能やリファクタリングをするチームです。noteの主要機能を作る部隊とも言えます。 先日、月額課金のコミュニティをかんたんに作れるサークル機能がリリースされたのですが、これはこのチームが作りました。矢印をガッと強くして安定させるような施策をリリースすることが機能開発チームの役割です。

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最後にカイゼンチームです。このチームは機動力重視でPDCAを回すチームで、だいたい長くても2週間くらいを目処に施策をローンチするイメージです。このチームのコンセプトは細くなっている矢印を探してそこをクイックに補強して、全体としてのバランスを取ることです。なんと2019年は100以上の施策をリリースしていたようですね。

このように、全体として歪みなくバランス良くグロースさせていくために組織のレイヤで役割を分けました。後回しになりがちだったり、すぐ治せるのに放置されるような事案も減ったのでそこはよかったのかと思います。

データをグロースサイクルに活かす

2018年頃からグロースモデルをベースに施策運営を進めていきましたが、当時は規模もチームも小さく、緊急で治すべきバケツの穴も大量にあったため、CXOの定性的判断を中心に施策と優先順位決めををしていました(この応急処置的フェーズでも結構サービスが伸びたのでグロースモデルが本質をついていたのがわかりました)。

2019年からはnoteが急激に伸び、使われ方が多様になったり、note proのようなtoBのプランも始まったりで目まぐるしく状況が変わってきました。内部的にも、エンジニアやデザイナーが倍増して組織だってきたフェーズでした。

そこで、データを基に可視化や施策を決めることで再現性や客観性を保ち、知見を貯めていきたいというニーズが出てきました。

安心して創作が出来る雰囲気は引き続き維持していくのですが、そのための施策はKPIを伸ばすという目的の上に乗らないことも多々あります。反面、データ中心のアプローチは全体からブレイクダウンしてひとつのところにフォーカスをきめてガッと伸ばせる性質があります。定性と定量のバランスを取りつつグロースをすすめていきたいという機運が高まってきました。

そこで、メルカリでデータアナリストチームを率いていらっしゃる樫田光さんにグロース戦略顧問として入っていただき、データに基づいたグロースを一緒にやりつつ一流のやりかたや進め方・考え方を知ろうとなりました。

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クリエイターの創作継続率を上げる

具体的な事例として、2019年に行ったクリエイターの創作継続率を上げる施策についてお話します。

対象とするクリエイターは、"ド新規"、"一度noteで記事を投稿していたが書かなくなった"、"書かなくなったのだけど他の人のnoteは読んでいる"、 "読んでもいない完全離脱パターン" などタイプ分けができるため、どこを攻めるのがいいかをデータを取りつつ議論していきました。

まず、"書き始めたが投稿まで至らない"。つまり、エディタや下書きなどのUXに問題があり離脱ポイントになっている、という仮説について検証を試みましたが、データを取ると案外そうでもないことがわかりました。

長くなるので尺的に詳細な説明は省きますが、こんな感じで定性のアンケートなども交えつつ調査や仮説検証をしていったところ、どのタイプのクリエイタでも投稿後に反応があることが継続的な創作活動にクリティカルに効いてくることがわかりました。肌感覚では同様の感覚はこれまでのあったのですがデータで裏付けられる形になりました。

そこで、クリエイターが嬉しいと思う反応と開発リソース的に着手しやすい機能を勘案した結果、スキがつく数と確率を上げていくことに決まり、大小いろいろな手段を考え施策に落とし込んでいきました。

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その結果かなりたくさんの施策がリリースされスキの総数がガッと上がりました。ひとつもスキがつかずにnoteが放置されてその結果離脱するケースも減少したことが確認できました。

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課題設定・定義付け・仮説検証をデータを基に行い施策に活かすプロセスをはじめましたという話をしましたが、もうひとつ重要なのは このプロセスからnoteというサービスや利用者の特性について学びをチームで貯めて今後に活かせるという点です。データという客観指標がもつ強みのひとつだと思います。

実際の検証プロセスやアンケートの結果、考察などの詳細は、2019年11月に行われたイベントのアーカイブ録画とレポート記事にまとめられているのでぜひ御覧ください。非常に面白いイベントとなっております。


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さきほどお話した基盤チームは、こういったデータ活用のための収集・蓄積・可視化などを行う基盤を整備して貢献しています。詳細は省きますが、AWSのマネージドサービスを中心に構成しています。

まとめ

・noteはグロースモデルをもとにバランス良く歪みなく成長させていくことを非常に重視しています
・グロースモデルの歪みをなるべく早く発見してバランスをとるために
短期・中期・長期の3チームに分けています
・データをもとに仮説設定・定義付け・検証をおこなっていくプロセスを回しています


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