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みんな嫌いな承認ハンコの大切さ

ハンコと言っても Google ではハンコは使いません。しかし、プロジェクトのローンチやプロセス変更、外向けのメッセージを発信、新しいプロダクト機能の追加、などする際には、stakeholder の sign off が必要になります。もちろん sign off が必要なく、自分の裁量でやれることもあるのですが、その仕事のインパクトが大きくなればなるほど stakeholder sign off は重要になってきます。

なぜ人は Sing Off プロセスが嫌いなのか

Stakeholder sign off は時間がかかります。何人もの関係者に、何ページもある書類(Google では Google Doc)を読んでもらい、細部を詰めてからやっと sign off をもらえるわけです。で、この stakeholder sign off なんですが、Google としても改善すべき1つの項目として社内で取り上げられるほどに、一般的に、苦痛だと声を上げる人が多いのです。代表的な理由は、「sign off が無いと話が進まないから」です。もちろん PRD (Product Required Doc) や BRD (Business Required Doc) を読んでもらえるのは本当にありがたいことで、自分の考えたことが他の人には理に叶わないこともあるということを知ることができます。

しかし、これがとにかく時間がかかる。一般的に、レビューをする側の人間は他にもレビューを頼まれていることが多く、時間がない人達が多いのです。プライオリティが低いプロジェクトであれば、レビューは後回しにされ、いつまで経っても進まないということがよくあります。また、やっとレビューしてもらえたとしても、いきなり sign off してもらえるわけではありません。人によっては、「Reviewed with comments」とまずはレビューしたことを示し、そこにフォローアップを入れて改善したバージョンを持っていくと、もう返事をもらうのにまた数週間かかったりするのはザラです。

もちろんレビューする側が sign off に慎重になるのは当然です。もし問題が発生した場合、sign off した人にも少なからず説明責任が生じるからです。例えば、あるプロジェクトを立ち上げるのに、法務部の社内弁護士の承認が必要になるのはよくあることでしょう。この場合、この弁護士は担当者から詳細なディテールを聞き出し、問題点を指摘し、完璧な PRD / BRD が出来た段階でやっと sign off することができます。同様に、部門長や上長承認をとっていくわけですから、一人ひとりの質問や訂正案に回答して、書類を仕上げるまでに、とんでもなく時間がかかるわけです。

Sign Off の意義とは

Sign off をすることの意義は、「プロジェクトチームでまとまって、自分たちを守ることができる」ことだと思います。何かあった時、少なくとも一人で戦う必要はなく、チームとして、上司や関係者がバックアップしてくれるわけです。また責任の所在も明確になります。例えば PRD / BRD の中で、法務に関する項目が後に問題となった場合、担当弁護士は誰なのか、どうしてこれで良いと思ったのか、など誰にコンタクトすれば正しい回答を得られるのかがすぐにわかります。

レビューでよくある勘違い

勘違いしないでいただきたいのは、レビューをする側に悪意はないということです。これは個人の思想の問題だと思いますが、たまに言われるのが、「フィードバックを個人に対する攻撃だと捉えてしまうこと」です。少なくとも僕も最初はそうでした。自分が完璧だと思った BRD をボコボコに否定されて、「なぜこれをやるのか?」とか「〇〇部はなんと言っているんだ?」とかかなりイライラすることもありました。だってそうでしょう、「僕はなぜこれをやるのかを一番上に書いているし、〇〇部の人には別で確認をとっていて、今はあなたの話をしているのだ。」とよく思っていました。ただ、最近自分が成長するにつれて、段々レビューする側の気持ちもわかってきましたし、フィードバックが個人攻撃でないこともわかりました。短気でなんでもチャチャっとやりたい僕みたいな性格は、大企業では大変だし、損をしますね。笑

オンライン ドキュメント上でサインオフ、どうやってとるの?

最後に、僕達が Google で実際にやっている sign off grid をご紹介します。といっても、凄く簡単なものなので仰々しく紹介するまでもないのですが。下の画像をご覧ください。

まず左端に名前があります。次に、僕の所属部門が書いてあります。役職がある中間管理職以上は所属部門のところに「Head of Operations」など、役職を書くこともよくあります。そして右側に sign off をもらう列があります。Google ではよく、「LGTM, July 25, 2022」のような書き方をします。また、プロジェクトの stakeholder ではあるが、sign off を取る必要はない人も存在します。その場合この画像のように、「FYI」として、その人をタグ付けすることで「Sign Off は必要はありませんが、ご一読ください」とメッセージを送ることができます。

在宅勤務の時代、オンライン上で進行する仕事が多いですよね。対面で会わずに Sign off が必要なことも多いでしょう。是非皆さん、焦らず、時間に余裕をもって、フィードバックや質問に冷静に対処しながら、安全にプロジェクトを立ち上げてください。ではまた次回!

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