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読書感想文〜一人称単数〜

完全なるハルキストなので
6年ぶりの短編集が出ると聞いて
もちろん読まない訳はないのですが
結構な大人なので
発売日と同時にでもなく
本屋に行ったタイミングで購入し
読んでいる本の順番を待ち
自然と手に取れるくらいになった
何が何でもその日に買い
すぐ読む!というのは
少しの若さと熱量が必要だな
こうしてだんだん若者に自然と譲っていくのが
摂理なのかもしれません
そんな今日の感想文

村上春樹 「一人称単数」 文藝春秋
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその辺の切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕は僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか?「一人称単数」の世界へようこそ

<目次>

・石のまくらに
・クリーム
・チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ
・ウィズ・ザ・ビートルズ
・「ヤクルトスワローズ詩集」
・謝肉祭(carnival)
・品川猿の告白
・一人称単数

<感想>

目次を見てください
8作の短編集が並んでいますが
私が触れないで誰が触れるの?的な
お題目があります
が、その前に
私の中で村上春樹はまさに「一人称単数」の人
もちろん三人称の長編作品もありますが
「一人称」の物語がザ・春樹なのです
その巨匠がわざわざ「一人称単数」と
名前をつけた通り
もっと深く「一人称」(村上氏本人)の人生を切り取ったような作品だと感じました

私がいつも村上作品を読むときの
楽しみ方のひとつに
村上春樹ごっこ」という一人遊びがあります
作品の中に登場する音楽をかけて
作中で作られる料理を食べたりしながら
読書をするという遊びです
今回も存分にその遊びができる
作品がいくつもありました

「チャーリー・パーカー」
なんて何年ぶりに聞いたことか!
「ビートルズ」も久しぶりに
アルバム順で聞いたし
「パーシーフェイス楽団」なんて
こんな機会がなかったら
わざわざ映画のサントラを
アルバムで聴いたりしなかった
「シューマン」の「謝肉祭」も
弾き手を変えながら何種類も聞いた!
こういう遊びができるのが私にとって
村上作品を読むときの醍醐味でもあるのです

そしてコレですよ
「ヤクルトスワローズ詩集」であります
もちろん、我がヤクルトスワローズの
名誉会長なのは有名な話ですが
この作品の中で巨匠が
過去に自主制作で500部だけ
ヤクルトに関する詩を集めた詩集を発行した
と、言っていて
これが嘘なのか本当なのか論争が
ファンの間で巻き起こっているのです
ハルキストも去ることながら
ハルキストのヤクルトファンである私は
もし本当だとしたら
手に入れたいなど大それたことは
言わないけれど
1度でいいから見て見たい!

夢が膨らむのであります
「一人称単数」の8編の作品の中には
このように本当と嘘がごちゃまぜになっていて
元来小説とはそういうものなんだけれども
紙一重のところを描かせたら
やはり巨匠は素晴らしいな!と
「品川猿の告白」も猿を擬人化した物語
なのだけども
絶対実在するモデルの人物がいるはずだ!
と思いながら
読んでも面白いし
そのまま「猿」が人間の言葉を話す物語として
読んでも最高に面白い

1979年は巨匠が「風の歌を聴け」で
作家デビューをした年で
偶然私が生まれた年で
ワインが不味い年で
ヤクルトが初優勝した次の年であります

79年生まれでも
多感な時期を過ごすのは90年代だったわけで
60年代文化への憧れみたいなのがあって
今回、巨匠は自分を掘り探ってますから
50、60年代の話が満載なのであります
読むほどに夢と憧れで胸がいっぱいになる
そんな短編集でありました


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