このほしの声 #1 「森と人を繋ぐこのほしの取り組み」

こんにちは、このほしインターンのあつおです!
「このほしの声」とは秋田県五条目町から「このほしが輝き続ける社会の実現」を目指す株式会社このほしが、 森の魅力、自然の力など日々の活動を通じて感じたこと、考えていることをお届けするPodcastです。
今回はエピソード1として代表の小原さんから森に着目した経緯や森が抱えている課題、それらに対してこのほしがどのようなことをしているのか、お聞きしました!

3行でわかるエピソード1

  • 小原さんが森に着目した原点は子供時代のキャンピングクラブ

  • 山に人が入らなくなり、森の荒廃や地域資源の活用不足、地域コミュニティの衰退が課題

  • 森と人を繋ぎ直すため、小中学生や企業向けの教育事業や森林資源の最適配置を目指した山についての相談事業、森の中で過ごす時間を提供するawake事業を行っている


今回話した人

 小原さん
株式会社このほしの代表で、兵庫県生まれ。ベトナムを経て秋田に移住し、家族と共に地域の自然を活かした事業を展開。「森を活用して新しい循環や仕事を生み出す」というビジョンを掲げ、地域の課題解決に取り組む。

 あつお
インターン生。沖縄県出身で現在は秋田。大学進学を機に秋田へ移り住み、地域の文化や自然に触れたことで、秋田の魅力に惹かれる。秋田の自然や伝統行事に関わる中で株式会社このほしと出会い、現在はインターンとして活動中。


森に着目した理由 〜原点は小原さんの子ども時代に?〜

あつお:小原さんがこのほしを始めるにあたって森に着目されていると思うんですけれども、 何で森なのかっていうところを最初にお聞きしてもよろしいでしょうか。

小原:遡ること30年前になっちゃうんですけど、 そもそも山に入るとか森で遊ぶみたいなことの原体験は自分が小学校の時の思い出。僕は小学校の時にキャンピングクラブに入って、 週末になったら六甲山行ったりとか、長期の休みがあるとキャンプに出かけていく、 みたいなことを結構経験してたんですよ。 特に夏のキャンプは子どもたちだけで川の水を汲んできて調理したり、ドラム缶に水溜めて風呂を沸かしたり、使う薪は全部自分たちで竹藪に入って竹切り倒してくるとか。 

あつお:小学生ですよね?すごいな...

小原:そう小学生。それがすごく楽しかった。 すごい良い経験で、自分にとっての原風景。 それ以降、四六時中山に入ったりキャンプしたりしてるわけじゃないんだけど、 自分の人生のいろんなステージでアウトドアだったりとか山に入るみたいなことは結構大事なアクティビティだったんですよ。

秋田への移住、見えてきた課題

小原:今僕が住んでるこの秋田には5年前に移住してきたんですけど、この移住を決めたのも秋田、あるいは僕らの拠点がある五条目町の周辺環境。それは都市的な便利さというよりは、車を数分走らせれば山があって、 渓流釣りできる川があって、 星はめちゃめちゃ綺麗で、 自分がずっと好きだったアウトドアの環境がすぐ近くにあるということ。こういう場所に住みたかった。 実際に住んでみたら、地域の方々との関係性の中で山の遊び方とか、あるいは山との付き合い方、 みたいなことを暮らしながら体感・体得してきて、 ますますこういう環境に惚れ込んでいった。一方で、よく言われる豊かな自然とかそうしたものってほっといて手に入る、享受できるものではないということも合わせて気づいてきました。
水害だったりあるいは熊が出たり、五城目のみならず秋田各地で起きているこうしたことをつぶさに見ていくと、 当然いろんな要因が複雑に絡み合ってるんだけど、 やっぱり森にあるいは山に人が入らなくなってきたことが一つの要因としてある。人間の気配がしない山から里へどんどん動物が降りてくるとか、 あるいはかつて重要な産業だったり林業でもお金にならない間伐材を今は人手不足とかもあってそのまま山に捨ててくるしかない。そういう木々は大雨が降ると、山から流れ落ちてきて橋に引っかかって水をあふれさせてしまうとか、農地に流れ込んで農業できなくしてしまうとか、そんなこともどんどん起きてきている。
せっかくこれだけ森があるのに、これだけ木が生えているのに、 それを自分たちの暮らしに有効活用できる土壌がもうすでに失われているっていうことも、 残念ながらだけど気づいてきた。 資源はたくさんあるのにそれを生かしきれていない現状。そこをなんとか自分たちなりのやり方で現状を変えるアクションを取れないかなというところから、 このほしの誕生に繋がっていく。 そんな理由ですね。 

あつお:なんか前回エピソード0の時に大山さんと小原さんが、 森の現状って課題ベースでいろいろ話されてるけど、 このほしがやりたいことってそうじゃないよねって話をされてたと思うんですけど、それの理由が小原さんの子供時代にあった気がして、聞いててなるほどなって今すごい思ってました。

小原:そうなんだよね、結果課題にたどり着いたし、この課題なんとかしなきゃとは思ってるけど、 スタートはもっと森で遊びたいとか、あるいは自分の子供や孫だったり、そうした世代に自分たちがこれいいよねって思った森とか環境がちゃんと手渡していけたらいいなと。もっと良くなって渡せたらいいなというふうに思っているんで、そっちが最初。そうするためには何を、どんな現状を変えていかなきゃいけないのか、っていう思考の順番でこのほしを作ってきた。 

子供達と森の距離

あつお:なるほど。 今自分のお子さんという話があったと思うんですけど、 自分が子供時代の頃と今を考えるともっと虫取ったりして遊んでたなみたいな。今はもうイメージですけど家の中でゲームみたいな、すごい変わってきてるなって思います。

小原:そうだよね。僕が五城目に来る前は完全なる偏見だけど、田舎の子供たちは野山を回って木登りして、その辺の草の身を食べて、元気に走り回ってるもんだと思ってた。でも実際来てみて驚いたのは、渓流釣りに行くとか山菜探しに行くとか言って山を楽しそうに遊んでるのは大人たちで、子供たちは家でゲームしてる。なんでかなと思うと、今の子供たちが悪いんではなくて、そうできない環境にある。というのもやっぱり山に人が入らなくなったことで、 山や森は暗くて怖い場所だし、綺麗に整備されてる場所もないので、子供だけで行ってはいけませんと言われている。そもそもどっか遊びに行こうにも子供たちだけでどっかに出かけていく交通手段がそもそもない。自分で出かけられない、公園だって遊具もどんどん撤去されて遊ぶ場所もなくなってきて、大人がいないとどこも出かけられないんだったら、あと何するのと。そういう意味でもう少し森が身近になったりとか、気持ちよく、あるいはもう少し気楽に足を運べる場所にもしていきたいなっていう気持ちもあります。 

このままではどうなる?

あつお:小原さん的に今の課題とか今の現状っていうのは、このまま何もされずに続いていったら、今後どうなっていくと思いますか?

小原:まず地域の森、里山と呼ばれているところはどんどん荒廃して人間が入りにくくなっていくでしょう。人と山が接する場所っていうのはどんどんなくなってきて、いよいよせっかくこの周辺にある山に人が入れなくなっていく。よっぽど装備をしてる心得のある人しか入れなくなっていくと、本当に人と森とか山の距離が遠くなっていってしまうなと思う。例えば僕は30年、40年前に、自分が楽しかったっていう経験があるからこの自然にまた帰ってきてるわけだけど、思い出とか経験がない状態で「自然を大事に」とか「持続可能な地球を」とか言われてもそれはもう記号でしかなくて。そうするといよいよ人々の目も向かなくなっていくという悪循環が生まれていきそうな気がする。国際教育大学の工藤先生がよく言ってるんだけど、 サステナビリティっていうのは、次世代にどういったものを伝えていくか、そういうためのアビリティなんだ。こういうものを、こういう環境を、あるいはこういう思い出を、みたいなことがない状態では、サステインするものがないんだからそれってサステナビリティにならないじゃん。 山、森、自然っていったものはどんどん、 心理的にも距離が離れていくだろうし、実際に人工動態とかを見るとそうしたところで働く人たちの数が減っていく。あるいは日常的にそこに入る人の数が減っていく。それによってそうしたものに手を加える、恵みをいただくということもできる人が減っていく。その悪循環の中で、気づいた時には手遅れになっちゃうかもしれないな、という危機感ありますね。 

森と人を繋ぎ直す取り組み

あつお:森が今どういう状況なのかというのをいろいろお話しいただいたと思うんですけど、それを踏まえて小原さん、そして株式会社このほしがやっていきたいことや取り組んでいきたいことについて、どんなことを今お考えですか?

小原:そうですね。 まず大きく考えているのは、 森と人を繋ぎ直すということをやりたい。具体的にはいくつかの事業に取り組んでいるんだけど、一つは教育事業。小中学生、社会人、そして企業向けに研修という形で提供していきたいなと思っている。まず森に入ってみようよと。子どもたち向けだとより遊びに近い形で、食べられる植物を探してみる、そこにあるもので火を起こしてみる、動物の足跡を見つけてみる、みたいなところから。多くの企業が自然資源から自分たちの経営資産、経営資源を獲得しているので、本当にその源流に立ち上った時に、仮にこうした自然が失われていた時にどんなインパクトを受けるのかといったことをより具体的に想像できるような検証を作っていきたい。そうやって森と人を繋ぎ直す。

それから、どんどん減ってきてはいるもののいろんな方々がまだまだ日本の森林資源を使ったビジネスをやっていらっしゃるんですね。山を持っている人たちというのは企業だったり個人だったりするんだけど、なかなかそれらをうまく使えていない。相続したけどどこに森があるかわからないとか。実際に企業さんでも広大な土地や森、山をバブル期に買ったんだけど結局そのままほったらかしだとか。そういう人たちが手放す山を実際に今事業したいんだっていう人のところに手渡していくとか、あるいは今はカーボンニュートラルだとか生物多様性の観点でかつては不最適に感じていた森も活用できますよというアイデアを僕らからご提案して森をもっとうまく使っていく。そういうアドバイスをしていくような、「あなたの山の相談窓口」という事業もやっていたりします。こうやって森林資源をちゃんと動かせる人の元に最適配置していくってこともやっていきたい。 

さらには僕の原体験でもある山の中でもっと遊ぶとか、山や森の中で過ごしてみるとか、そういう人たちがもっと増えていったらいいなと。でもみんなみんなキャンプのスキルがあるわけじゃないので、もう少し手軽に山に入れるような装置として移動式のオフグリッドの小屋を今作っていて、それを森の中に置いて森の中でゆっくり静かな時間を過ごす、というような体験もこれからどんどん提供していきたいなと思ってる。それを「awake」と名付けて今事業を準備してます。

あつお:なるほどありがとうございます。awakeも子どもたちに対する教育授業もそうですけどなんか小原さんが子どもの頃感じたような、森っていいな楽しいなっていう体験を全然今の大人でも子どもでも届けていけたら、その人たちが今後それを原体験としてこの森を守ろう自然を守ろうってちょっとでもなってくれたら、このほしがある意味みたいなのがすごいあるのかなと思いました。

小原:いやまさにそういうふうに感じてもらえたら嬉しい。企業の人たちは自分たちのビジネスを通じて何ができるかと考えると思うし、子どもたちはじゃあもっとここで遊びたいとか、別にそんなことで期待しなくていいんだけどいつか大人になったらふとした瞬間思い出して僕みたいにまた10年後に10年後30年後に森と関わる人が増えてくるかもしれないんで。そんなことを見据えて、まず今の僕たちができることをやっていこうというのがこのほしです。

本編はぜひ以下のリンクからPodcastでお聞きください、ここには書かれていないお話も聞けちゃいます!
今後のエピソードもSpotifyで更新していくのでぜひ聴いてみてください!


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