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ロゴができるまで #このひだより

大切な記憶を文章に残す、インタビューギフト『このひより』。β版をリリースしてから、はや8ヶ月がたちました。

現在は、ご依頼いただいた方にコツコツとインタビューや本をお届けしながら、ギフトのあり方を日々見直しています。

あまり前例のないサービスだけに、ときに考えが揺れることもありますが、そんなときに立ち返るのは『このひより』のロゴ。私たちが大切にしたい核がここに、ギュギュッと詰まっているのです。

実はこのロゴ、β版リリースのタイミングで生まれ変わった2代目。今回は少し記憶をさかのぼり、どうしてロゴを作り直したのか?どんな願いを込めたのか?をお話ししてみたいと思います。

(執筆/染谷楓

まずは、自分たちの手で

β版リリースに向けて、私たちが発信の準備をはじめたのは、2020年の春のこと。サイトをつくるにもSNSをするにも、サービスの存在を表すロゴが必要だねとなり、私たちメンバーが『このひより』に抱いているイメージを出し合いました。

「色は薄い黄色」「ひだまりみたいな感じ」「円っぽいよね」「手書き文字が優しくていいかな」……そうしてできあがったのが、第一弾のシンプルなロゴでした。

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ちょっと見づらいけど、左下の黄色い丸ロゴです(過去のnoteより)

1つ目の「#このひだより」が公開されたのは、2020年6月。あっという間に100を超えるいいねをいただいてメンバーで歓喜したあのときも、第一弾のロゴで私たちは発信をしています。

ただ、そこからサービスの内容や細かな流れ、料金が決まっていく中で、もう一度ロゴと向き合わないといけないと感じはじめました。一番大きな理由は「贈り手、語り手、聞き手の三者でつくる本」という概念の伝えづらさ。

正直自分たちも説明の難しさを感じていたし、であればご依頼してくださる方はもっとわからない。一番に目にするであろうロゴを通して、サービスのわかりやすさと信頼感をもっと表現したい......

自分たちでつくったロゴにも愛着はあるけれど、やはり「客観的にサービスを見てくれるプロが必要だ」と考え、改めてデザイナーさんを探しはじめます。そんなとき、あるハンドメイドサイトを通じて私が出会ったのが、『PAPER ART WORKS』の小林京子さんでした。

長野でつながった「紙」のご縁

「このカード見て。和紙に菜の花が埋め込まれてる」

それは『このひより』で商品の梱包材を探していたときのことでした。サイトで見つけたのは、素朴な優しさを感じさせる手漉き和紙のカード。「ほかにはどんな作品があるんだろう?」とブランドトップへ飛ぶと、和紙を使ったアクセサリーが並んでいました。

色使い、黄色の円形を用いたアクセサリーの印象は、私たちが思い描いていた『このひより』のイメージにすごく近い。ブランドを営む小林さんは装丁デザインの仕事もされているようです。

しかも、アトリエは長野県の八ヶ岳山麓にあると書いてあります。長野といえば、すでに印刷・製本をお願いすると決めていた藤原印刷さんのあるところ。「長野県」「紙」の繋がりに運命を感じずにはいられません……!

この方に相談したい!と一致した私たちは、サービスに込めた思いと、当時まだ数記事しかないnote、作りかけのWebサイトのURLを添え、どんな反応が来るかドキドキしながらメールを送信。小林さんは送った記事を読んでくださった上で、すぐに「よろしくお願いします。これから楽しみです」と添えて返事をくださいました。

そして初めてお話ししたとき、こんな嬉しい言葉を伝えてくれました。

「私、『このひより』の記事を読みながら泣いちゃって。家族の写真は今も残ってるけど、考えてたことって残っていないんですよね。もし言葉が文字に残ってたら、どうだったのかな……」

紙の本作りに携わる小林さんは、今の時代に「紙の本であること」の価値についても共感してくださいました。心強いパートナーが見つかり、私たちはいよいよ本格的なロゴ制作に向き合うことになります。

もう一歩、踏み込んで考えてみよう。

最初に小林さんが提案してくださったのは、人と人とのつながりをイメージした3つのデザイン案でした。ここで実感したのが、「なにをデザインに取り入れるか」によって印象がガラッと変わること。こんな素敵なアイディアもあるのか!と選択肢が広がったからこそ、制作はすんなりと進まなくなりました。

サービスのことや『このひより』の雰囲気、伝えたい思いは溢れるほどあれど、そのすべてをロゴに入れることはできません。なにを残して、なにを削るのか?本当に必要なものはなにか?考えて考えて、議論が迷子になることも。

「ボールをキャッチしあうこのイメージもいいけど、“3”にはこだわりたいかな」
「徐々に育っていくイメージで木はどう?」
「木も捨てがたい……。でも、やっぱり一発で『本』のサービスってことを伝えたいかも」
「確かに本は必要だね……」

3人で整理したイメージを小林さんに伝え、目に見える形に変えてもらう。デザイン案をもとに、もう一歩「大切なこと」はなにか踏み込んで考えてみる——こちらの想いを小林さんはしっかりと受け止めてくれ、『このひより』の価値を一緒に整理してくれました。何度も行きつ戻りつしていくうちに、ぼんやりとしていた『このひより』のイメージに少しずつ輪郭がついていきます。

私たちが最後の方向性に迷っていたときもそうです。小林さんはこのひよりのこと、私たちの想い、小林さん自身がこのひよりに感じたこと、たくさんの言葉をかけてくれながら、「『このひより』のサービスは、感動と尊重の贈り合いだと思う」と伝えてくれました。

そんな過程を通じて私たちは、『このひより』というサービスで一番大切にしたいのが、本を「つくっていく体験そのもの」だということに気づいていきます。

「あなたの記憶を言葉に残したい」という贈り手の思いと、大切な思い出を持つ語り手の言葉、そしてそんな思いを聞く「この日」。ちょっと照れ臭い言葉になるけど、愛を渡して愛を受け取るようなサービスが『このひより』なんだと、その言葉で改めて気づきました。

ゆっくりとパズルがはまっていく感覚を共有した最後に、小林さんは「これは紛れもなく、みなさんと私が一緒に作り上げていったロゴです」と言ってくれました。なにより嬉しい言葉でした。

ロゴに込めた、3つの願い

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こうしてできあがった世界で一つの『このひより』のロゴ。そこに込めた願いは、大きく3つです。

1.三者でつくる「インタビューギフト」

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まず、一番上にある3つの円。これはサービスの要でもある「贈り手(インタビューギフトを贈る人)」「語り手(思い出を語る人)」「聞き手(このひよりライター)」を表しています。三者がいて初めて言葉が生まれ、文章ができあがります。

2. 時をこえて繋がる「ページ」

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扇型に開かれた5本線は、開いた本を横から見たときのページを表しています。左の線から「過去」「三者でつくる現在(この日)」「未来」と、時間の移ろいを表現しています。インタビュー当日を軸に、記憶や想いが言葉で繋がってほしいと願いを込めました。

3.想いをのせて、1冊の「本」に

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大切なページを支えているのは、しっかりとした本の背表紙です。それぞれの想いを込めた言葉が1冊の本という作品になり、インタビューギフトが完成します。

また、このロゴを離れて眺めると“花が開いた様子”にも見えることから、ベースカラーはタンポポ色にしてもらいました。

道端にたくましく咲くタンポポを見ると、小さな頃に王冠を編んだり綿毛を吹いたりしたことを私は思い出します。『このひより』の本もそんなふうに開けば懐かしさを感じる、宝物のような1冊になるといいなと願っています。

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できあがったロゴは「サイト」「SNSのアイコン」「招待状」「シール」そして「本の裏表紙」など、様々な場所でその形を変え、お届けする方のもとへと飛び立ちはじめました。ロゴ制作を通して整理された私たちの考えは、しっかりと根となり今につながっています。(小林さん、本当にありがとうございました!)

風にのって遠くまで。多くの方へ幸せの綿毛を飛ばせるよう、これからも心をこめて記憶を言葉にしていきたいと思います。

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