三村和敬さん インタビュー

【いちばん印象的だった撮影はどのシーンですか?理由も教えてください】

やはり、中庭でキューピーと言い合う所が印象的です。胸のあたりが痛くて、カットがかかったあとに須藤君の目を直視できないくらいマサラになっていた気がしました。あの場面は須藤君とだからこそ出来たシーンだったなと今は思います。
また、僕はいなかったのですが、キューピーと志村が大部屋で話しているシーンはすごく好きで印象に残っています。志村の思慮深さやキューピーの純粋さが、「壁の前で打ちひしがれそうな若者感」全開で、見ていて切ないのと同時に愛くるしかったです。
 
【オーディションのとき、三村くんが芝居を始めたとたんに、いきなり世界が立ちあがったよう な感じがして(うまく言えないのですが)すごいなって思いました。私は脚本を書くときにまず <気分になる>ということがとても大切なのですが、三村くんも芝居の前に<気分になる>と言っ ていましたよね。気分てなんでしょうね?】

あやさんは脚本を書く際プロットを書かないとおっしゃっていて、「凄すぎる!」と同時に「なるほど、たしかに!」と思ったのを覚えています。

よくお芝居をする上で「ここはこういう感情だからこう言って、相手のセリフで感情が変化して…」と感情をいかに解放するかを教わります。でも実際にカメラの前では、作り込んできた感情が押し付けがましい印象になったり、邪魔になる事があると思っています。
なので、台本に書いてある設定や状況の中で、登場人物がどういう気分で存在しているのかを考えます。実生活で「今俺は怒っている!」「悲しい!!」と心の中で思う人はいないはずで、「今日はイライラするなぁ」とか「何か泣きそう」という風にある程度スパンのある状態くらいは把握しているはずです。そういった気分が挙動として顕われるのではないかと思っています。
役作りをしないと公言している役者さんも数多くいらっしゃいますが、そういった方々は役の気分を何となく分かってしまう才能があるのだと思います。
僕はまだ、「気分」が何か明確に言葉に出来ませんが、人の周りの空気感や、置かれた状況を表してくれるサインのようなものなのかもしれません。
 
【大切に思っている場所がありますか?それはどんな場所ですか?】

地元です。家族もいるし、昔からの友達もいます。東京はとても楽しいし、この仕事をしていて仲良くなった方や知り合った方もたくさんいますが、地元で過ごす時間に勝るものはありません。何かあったら全力で守りたいと思えるものがたくさん詰まっています。
 
【普段の暮らしの中で<壁>の存在を感じることがありますか?感じた時、どうしますか?あるいはどうしたいと思いますか?】

本当によくあることなのですが、個人間の壁です。小銭を投げられたコンビニ店員の気持ちは、コンビニ店員にしか分からない。店員は客に対して「何するんだ!」などと言えない。そういう事がすごく多いなと感じます。
逆に客側にも事情があるのかもしれませんが。
立場が上の人間が格下に対して押し付ける都合などは特に分かりやすくて、格下は格上にNOと言えない。
仕事だから仕方ないとか、そういうものだからというのは違う気がするし、「流されるな!NOと言え!」と謳う歌もありますが、それは無責任な気がします。
幸いにも俳優業をやっているので、「相手の気持ちを推し量ることの大切さ」をいつか伝えられたらと思います。
どちらかが相手を負かしてやろうとする気持ちがあるから難しいだけで、win-winはきっとあるはずです。