見出し画像

閉じ籠り少年 小学生時代の記憶から

夜中に雨が降るときは、必ず生々しい夢か、輪郭がはっきりしすぎている走馬灯を見る。
昨日は、小学生の頃に、自分の目で見た景色や嗅いだ匂い、地面を歩く音が正確な形をもって呼び起こされた。
そういえば私は、もう小学校低学年の頃から、たとえ外に居たとしても、何かにつけて自分の内側に閉じこもる少年だった。


殆どの休み時間、ひとりで校舎の中や校庭を徘徊していた。
植樹されている中庭や、あるいは理科室や多目的室の棟などの日常的に人の出入りが少ない校舎の中を、好んで歩いていた。

何かの用で保健室へ出向いたあと、出入り口ではなく勝手口から退出し、そのすぐ前の小さな階段にずっと座りながら、中庭に立つクスノキを長いこと眺めていた。
人通りのない校舎を最上階まで登れば、その窓から遥か向こうの六甲山(兵庫県の山。学校は大阪府にあった)を見つけ、山肌や朧げに見える山麓付近の建物をひとつひとつ眺めていた。
体育館の裏の道は、虫一匹来ない静かな場所だった。
フェンス越しには田んぼが見え、その向こうには生駒山脈(奈良県と大阪府の境にある山)が見えた。
どの景色も、晴れの日は絶景だったし、それ以来晴れの日が好きになった。


時を経た今でも、閉じこもるのは好きだ。
読書をするのに精一杯の明るさの間接照明を点け、布団にくるまり、丸くなる。
そこには、情報とか、偏見とか、常識とか、教育とかいう鎧を全部脱ぎ捨てた、生身の自分が居る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?