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アルバイト経験が、知らない家族をちょっと救ったかもしれない

2017年11月23日のことです。その日は休日だったのですが、社会人になって会社で出会った飲み仲間のDさんとKさんと3人で昼から飲み歩く算段を立てていました。ちなみにその日のスケジュールはこんな感じでした。

11:00ごろDさん、Kさんと御茶ノ水駅集合

3人で御茶ノ水名酒センターの日本酒を楽しむ

夕方、横浜に移動して関内の Antenna America でSさん一家と合流してクラフトビールを楽しむ

移動距離の長さはともかく、美味しいお酒を飲み渡れる最高な計画です。美味しい酒の前に人は無力。

当日、集合時間に若干遅れたりはありつつも、まずは名酒センターへ

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↑インジケーターの多さが飲酒量を物語っている

ひやおろし、ぬる燗、熱燗、梅酒、にごり...とちょっとずつ日本酒を楽しみ、そろそろホロ酔いになってきたかなという午後2時ごろ。
このまま横浜に向かうと、ちょうど飲食店の中間時間帯にぶつかるので、持て余してしまうかもなあ。ということで、名酒センター近くの神田明神に向かうことにしました。

「ここはラブライブの聖地らしいよ」
「へー。ラブライブって神社が舞台なんすか」
「そういうわけではない」
「再現しましょう再現!見たことないから正解わかんないけど!」
ほろ酔い3人組でそんな中身のない会話をしながら境内をウロウロしていると、ある一家が目に入りました。

着物の2人のお嬢さんを連れて、お父さんお母さんもスーツと訪問着、おばあちゃんもパキッとしたスーツ。七五三のお参りをしている!というのが一目瞭然でにわかにテンションがあがりました。

わたしは、学生時代に七五三写真などを撮る写真スタジオチェーン店で2年ほどアルバイトをしていました。
そのせいで、七五三の一家をみるとついつい目で追い、どの店で着物を借りてるのか、千歳飴はどこのものか...推測して盛り上がってしまいます。

「2人とも被布を着ていないから、年子の女の子でまとめてお祝いしているんだなあ。」
「お姉ちゃんの着ている着物はシックな古典柄だから、レンタルじゃなくてお母さんが子供時代に着たものを着ているのかも」
「ご両親もおばあちゃんもきまっててかっこいいなあ」
その日も一家を眺めながらほっこりとした気持ちになっていました。

しかし、ご家族はちょっと困った様子でした。
よくよく見るとお姉ちゃんめっちゃ不機嫌!お母さんはどうにかご機嫌を治そうと必死!お父さん硬直!おばあちゃんカメラを構えたまま困惑!妹ちゃん一切動じない!

名称未設定アートワーク 11

それを見て私は思いました。

スタジオアリ●(元バイト先)で死ぬほど見たことあるやつだーーー!

そして、こう思いました。「私なら彼女の笑顔を取り戻せる」

アルバイト経験からくる謎の自信、ほろ酔いによるコミュ力上昇と無敵感。
その瞬間、私が躊躇する要因はありませんでした。あのときの自分は24歳OLではなく、天気の子のクライマックス時の主人公に近い存在でした。無敵。

無敵状態な私はその子に近づき、こう語りかけました。

「おねえちゃん、カワイイね〜↑↑」

この記事の最初の画像がその様子です。絵面だけ見れば事案です。新海誠映画の主人公はこんなこと絶対言いません。あの時のお父さんおかあさん、通報しないでくれてありがとう。

さて、私の行動は一見不審者声掛け事案ですが、勝算がありました。
あくまでわたしの主観ですが、七五三行事中ぐずった子供は第三者が褒めるとご機嫌がなおりやすいと思うのです。

そもそも、七五三って子供にとって結構きつい行事だと思うんですよ。
写真館でキラキラのドレスを着るまでは良いとしましょう。お姫様になれる!と喜ぶ子も多いです。
しかし、3歳や7歳で着物を着てみたい!と自ら思う機会はどのくらいあるでしょう。(もちろん、着てみてとってもかわいい!と喜ぶお嬢さんも多いですが!)
まして、写真を撮るだけでなく、動きづらい着物と草履で神社まで移動して、よくわからないであろうお参りをして...
11月は七五三ハイシーズン、写真館でも長い待ち時間を過ごしたかもしれません。
たぶん神田明神でぐずっていたあの子も相当疲れていたのだと思います。

疲れてしまうと、お父さんお母さんがいくら褒められたって響きづらいんですよね。真偽はともかく、うっすら「お父さんとお母さんは自分のご機嫌をとって思い通りにさせたいんだ。」と思う部分もあるのかと思います。(補足で、お父さんお母さんは一切悪くなく、疲れてしまうシステムが良くないと思います。)

そこで、別にその子の機嫌がなおってもなにもメリットがない第三者が褒めると、「本当にわたしのことが可愛くて褒められている!」と素直に受入れることができて、気分良くなってもらえるのではないかと思います。

やはりその子も、初手の「おねえちゃん、カワイイね〜↑↑」から
おや?という顔になり、ひとしきり褒めたり、世間話をしているうちにだんだんと笑顔になっていきました。

そして、最終的にはかなりニコニコしながら家族写真を撮ることができ、何故かご指名いただき私も一緒に写真を撮ってもらえました。とても嬉しかったです。ご両親とおばあちゃんにもお礼を言われました。正直、本当にかわいくて事実を言ってるだけだったので恐縮しました。

あれからもうすぐ2年が経ちます。時の流れの速さよ。
未だにあの時のメンバーで飲みに行くと、この話はたびたび話題になります。
そのたびに、もう会う機会はないだろうけど、あの女の子が元気に育っていると良いなあ。大人になったら、あの子は七五三の写真を見て知らないお姉さんが写ってるのをどう思うんだろうなあ。とぼんやり思います。

人生どこで何が役に立つかわからんな。と思った話でした。

---11月1日追記---

この記事の続編というか、お礼というかを書きました。
もしよかったら、どうぞ



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