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とんかつvsえびフライ|比較して読み、比較して書く

はじめに

noteみたいな活字に塗れて平然としている人たちの界隈なら、教員でなくとも「とんかつ」や「盆土産」という作品を憶えているのではないでしょうか。
 雲水になる少年に、入門前日の夜、とんかつを食べさせる物語と、盆に出稼ぎから帰った父がえびフライを買ってくる物語。えびフライをはじめて食べた時の「しゃおっ」という描写とか、いつもより厚いとんかつとか、やたらと旨そうなんですよね。お腹が空く人が続出するこれらの作品は、2つとも三浦哲郎さんの作品です。今回はこれら二つを比べる授業を構想しました。

目標

食べ物の効果という視点で文章を読む。
食べ物の効果について対比を意識して説明文を書く。

学習指導要領の目標

平成29年告示 第二学年 C読むこと イ
 目的に応じて複数の情報を整理しながら適切な情報を得たり、登場人物の言動などについて考えたりして、内容を解釈すること。

 最近、指導要領の目標は、話すこと・聞くこと、書くこと、読むことの中で一つしか指導案には記載しないと指導を受けましたが、実際には全ての力が入り混じって学んでいると思うのです。だから、特に注目すべき力、特に指導、評価すべきポイントとして、一つ記載すると理解しています。今回であれば、書くことをポイントに考えています。

授業概要

一時間目:作品を読み比べる。
 作品を読んで、単純に好きな作品、効果としてはどちらが秀でているかを周りとシェアします。その上で、初読後の感想を記入。

二時間目:観点を用いて深く読み比べ。
 少年の境遇、食べ物自体の表現、食べ物と少年の関係、食べ物と親の関係、食べ物と愛情、等の観点で読み比べます。
 生徒の状況に応じて先生がワークシートを作ってあげるのも良いと思います。今回は時間がないのと、書くこと中心の授業展開なので表で端的に理解。

三時間目:書き方を知り、論文を書く。
 対比をして文章を書くときのポイント、レポートを書くときのポイントを提示。今回は特に、いくつかの観点で対比した文章を書くはずなので、ナンバリングで全体の構造を安定させることを学ぶ。また、口語的な言葉になりすぎないよう、接続詞を中心に手引きを配布。それでも生徒にとっては、記述の観点は分かりにくいもの。そのため、ルーブリックで評価を示してなにを求めているか明示。
 そしてついに書き始める!長かった!
四時間目:対比に注意して書く。
 適宜こちらでコメントしながら訂正していく。ここはICTの出番。訂正、推敲するときはICTが便利。むしろそれ以外で推敲は時間がかかりすぎる。ICTなら何度もチェック→推敲の流れが可能。終わったのを評価するだけのセンセイになってはなりません。寄り添って何度も訂正かけて、提出時間ギリギリまで頑張らせて…をできたらいいなー。

雑記

 個人的には楽しいのが一番なので、「教授になって書く」と言って生徒には書かせています。彼らは、揚物大学文学部教授として、論理的で明解な文章を書くことになります。論文は、冒頭だけこちらで指示済み。

 本稿は、文学における食べ物の効果について、三浦哲郎の作品を用いてその一端を明らかにしようとするものである。具体的には、「盆土産」と「とんかつ」を参考に、そこに表れるえびフライととんかつの効果を明らかにしていく。
 それぞれの作品の優劣については、議論の余地があろうが、より効果的に食べ物が描かれている作品は…

これに続けて書かせる。これで、である調、かたい文体で書いていくことになる。最後はみんなの作品を集めて「揚物大学文学部紀要」を作成して、家に持って帰ってもらって、親に不審に思われるところまでが仕事。
 私の仕事は、リアルな紀要の表紙の作成。一見論文風の書き方の指導。ダイニングテーブルにさりげなく置いておく方法の伝授である。生徒の健闘を祈る。

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