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"絵に情熱を注ぎ、絵に救われて世界がどんどん広がっていった話"MAI NAGAMOTOインタビュー(後編)

前編はこちら
KG 高校時代は絵から離れていたみたいですが、やはり絵の方に気持ちが戻っていたんですね!
M そうですね。ダンスの学校に一瞬興味を持ったりもしたけど間違えなくてよかったと思う。
絵でやっていきたい、が、いこう!に変わったのもその時だから。
そんな中、ダンスの先輩繋がりでクラブでの絵の展示なんかもするようになりました。
KG それはいつくらいですか?
M 18〜19歳くらいの時です。当時は今思えば色々な分岐点の歳で、南米に行ったり、デザイン関係、音楽関係、映像関係の人達と生活を蜜に共にするようになったり、クリエイトが常に身近にある環境の中で作品製作をしていました。
自分の絵を確立し始めたのもこの時期です。
KG なるほど!ナガモトさんのアーティスト活動の中でもかなり重要な時期になるんですね。ちなみにクラブでの展示はどんな感じでやられてたんですか?

今では考えられないようなグラフィックの2006年位の作品 この時代は特にゾンビやモンスターが好きだったようです。

デッキを使い込むほどちぎれていって完成される「zombieデッキ」

M クラブイベントには月1ペースで参加するようになりとにかく壁を埋めなきゃって思いで、毎月30枚とか新作の絵を描いて飾ってました。その時は若さでとにかく体力がある限り絵で試せることは何でもしていました。完成度は今より低いけど沸き水みたいに溢れてくる、そんな時期。とりあえず画材には毎月ありったけのお金を注ぎ込んでいて超貧乏でしたよ。
初めて絵を購入してもらえたのも、この時でした。絵に向かって本当に話しかけたり泣いたり叫んだり愛を叫んだりして制作していて近くにいた人にも「誰と戦ってんの?」って言われていました。おそらくこの頃は少し精神が不安定だったのかもしれないです。
今思えばですけど。確実に当時の自分は気にしてないです。

KG 絵でも音楽でも遊び感覚でアーティスト活動してる若い子も多いと思うんですが、ナガモトさんは当時からかなりストイックに活動されていたんですね!毎月30枚ってことは単純に1日1枚のペースですからね。
M そうですね。ストイックなのかな?環境かもしれないです。好きならやれよ、って環境だったから。みんなやってたし。余談ですけど最近この頃の戦友がカンヌで賞とりました。凄いです。私もカンヌとりたい。。
KG !!
M あとは時間さえあれば図書館に通ってました。特に私は近代美術が大好きで朝から夕方まで暇があれば本を読みに行ってました。それは今でも続いてます。
KG 当時から常に絵のことを考えていたんですね。ただ、クラブだと照明も暗いし、タバコやお酒で作品が汚れてしまうんじゃないですか?
M はい。なので、しばらくしてからはギャラリースペースで展示するようになりました。

この頃は50号以上の絵をよく描いていて小さな絵を描くことがほとんどなかったようです。

KG なるほど。今ではソフビ製作の方もお忙しいかと思いますが、当時はまだ製作されてなかったんですか?
M はい、作ってませんでした。
KG ソフビに興味を持ったのはいつからですか?
M 興味というか、ソフビに触れ始めた感覚があるのは、小さな頃に兄とリサイクルショップや駄菓子屋を巡って玩具を掘りに行くのに付いていった時くらいからかなぁ。GIジョーとかウルトラマンソフビとか掘りに行っていました。中学の時は小さなキューピーやリカちゃん人形を購入しては、焼いたりわざと怖く加工して皆にあげたりしていました。
KG どんな加工してたのかめちゃめちゃ気になりますね!そこからソフビ製作をするようになったきっかけはなんだったんですか?
M 12〜3年くらい前に、造形師のT9Gさんの個展を観に行ったのがきっかけで自分でもオリジナルのソフビを作れるんだっていう事を知ったんです。
KG なるほど〜。それでアートトイの世界を知ったわけですね!
M はい、それとほぼ同時にMONSTOCK!!(モンストック)っていうお店にたまたま出会って、ソフビにもジャンル的なものがあるのを知るようになります。当時はとにかく一気に色々な知り合いが増えた時期でもあって、その頃から絵の展示とは別に、ソフビのカスタム展にも頻繁に参加するようになりました。ソフビ以外にも幅広くカスタムし始めたのもこの頃です。

NAGAMOTOさんの中の「青空の下のゾンビ村」というお話を元にカスタムを施していたそうです。

T9Gさんの個展などでカスタムを施しまくっていた時期。

生活用品からサーフボードまで要望があれば様々な物をカスタムペイントをしていた時期の作品。関沢製作所にて。

KG 人脈と共にアーティスト活動の幅が一気に広がっていったんですね!
M でもその時は貧乏暇なしで仕事も何種類か掛け持ちしていました。
20代は自分のキャパ以上の経験を求められたり
それには無理してでも答えたい!とにかく頑張る。って気持ちだけで何でも取り組んできた分、成長はできたけど引き換えに失うものや、苦悩が物凄く沢山あって。

天国と地獄の行き来を何周もしているような時期でした。絵も数年間納得のいくものが描けなくなってしまったり。脳が思考停止になる事が何度もあったりで・・・。正直辛かったです!本当に。それでも描いていましたけど。
北野武とサムフランシスの絵画と長新太の絵本に何回も何回も救われた時代です。

盲目的に気づいたらいつも何かが出来上がっている感じ。とのこと。

津波の絵(311)

夜桜

KG それも常に作品製作に本気で向き合ってきたからこその経験と感覚だと思います。そういった時期を乗り越えたからこそ、今のナガモトさんがあるんですね。オリジナルソフビを作ったのもその頃ですか?
M 個人でソフビを作ったのは2014年で、"ネア"っていう子供の姿をしたソフビを作りました。今までの自分の経験から見えた世界を歪な形をした立体物で表現をしたくて。

KG 原型から自分で作ったんですか?
M いえ、"ネア"の原型はT9Gさんにお願いしました。そもそも、この時点で、ソフビについては一割くらいしか理解していなかったので勉強不足を痛感していました。自分なりにソフビの猛勉強をはじめたのもこの頃。
KG そうだったんですね。当時はどこで販売してたんですか?
M 最初はオリジナルのソフビを完成させたことに満足してしまって、売り方も考えてなくて・・・。でもその当時、絵の関係でお仕事させて頂いていた浅草橋にある"ブックマーク浅草橋"さんのご好意で委託販売をお願することになって、その次に台湾のTTF2014(Taipei Toy Festival)のお話をもらって出展することになりました。
KG おぉ!台湾ですか!

TTF2014

M でも最初ソフビは思ったほど結果が出ず焦っていて、とにかく何か売らなきゃって、会場のブースで、即興で今もやっているスタイルのライブペイントをさせてもらったんです。私、今もなんですけど沢山の画材をでかいリュックパンパンに持っていかないと不安で。でもその沢山の絵の具のお陰で昔から描いていた"怪獣と子供の国"の世界を沢山沢山描けて。
KG 面白いアイデアですね!反応はどうでしたか?
M そしたらそれがすごくウケて絵も売れたし、人の集まり方もすごくて自分の中で手応えみたいなものがあって。
KG なるほど!しっかり足跡残してきた感じですね!
M それから日本に帰って反省会もして、それから製作したのがInnocent&coreっていう`怪獣と子供の国`をモチーフにした怪獣のソフビです。それでその次の年もTTFに出展することになるんですけど、その時はソフビが売れたのも良かったんですが、絵の方がイベント内の作品オークションで1番高額で売れたんです。

何回もイベントに参加しているT9Gさんからも
オモチャイベントで絵が1番高額になるって凄いことなんだよ!って言って頂き自信になりました。

KG それがきっかけで海外でも展示の機会が増えたりしたんですか?
M すごく増えました。個展はアメリカ、台湾、上海。ソフビ販売とライブペイントを含めたイベントなどは、タイ、香港、シンガポールとか。

KG 色んなとこ行ってますね。中でも特に印象に残ってるのはどこですか?
M 2019年のサンフランシスコでの個展が思い出深いかな。海外の展示では、行く度に色々気づく事や、関わる人達も多くなったり、求められる事もそれぞれ違うし色々考えさせられることも沢山沢山あって。
色々、自分自身勘違いしちゃいそうなのが嫌で、それまでして頂いてきたお膳立ては一切無くて、自分で決めて自分で提案して、本来の自分に戻れるきっかけになった個展になりました。

KG なるほど!イチから自分で準備した分、余計に思い出深い経験になったんですね。
では最後に、今後の活動についてはどんなことを考えていますか?
M 私の作品は、
昔から自分の感情や経験から初めて生まれてくるものなので、道理をもっと広く持ち感性をもっともっと深く掘り下げていきたいです。絵を描くこと以外でも、知識だけはなくて、体得して未熟な自分を成長させていきたいです。
KG その方が説得力がありますもんね!
M その上で自分の内にあるものを絵の力を借りて描いていきたい。大作を残していきたいし、そして販売していけるようになりたいなと考えています。
玩具に関しても、"多肉怪獣シンチャソ”フテネコ"からは原型も自分でやり始めたし、塗装スタイルも今まで探求してきた結果幅広く表現できるようになりました。
描くこと、作ること、売ることって全部脳の使い方が違くて大変だけど、焦らず続けていきたいです。

KG なるほど、今までの作品は当時の努力と経験の賜物というわけですね。それを聞くととても感慨深いものがあります!
M 子供達の価値観の中にも入れてもらえるように、これからも沢山失敗もしながら、私らしく、無垢に活動していきたいです。そして、もっと強くなって、なるべく弱い心に寄り添えるような、誰かに響く絵を描いていきたいと思います。

KG 常に進化していくナガモトさんをこれからも楽しみにしています!子供時代の面白い話から、マジメな話まで色々聞けて楽しかったです。
本日はお忙しい中ありがとうございました!
MAI NAGAMOTO instagram
@mainagamoto

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