[映画][アニメ]劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

#大雑把にレビューする

まずは、筆舌に尽くし難いほどの痛ましい事件に巻き込まれながら作品を完成までこぎつけたスタッフの熱意と苦難を乗り越えた力に最大限の感謝を伝えたいと思います。
完成後も新型コロナの影響で上映公開が延期され、ようやく私たちの元に届いたとても大切な作品です。

涙を誘う良い作品であることはもちろんなのですが、どうしても事件のことが脳裏に浮かんでしまい、序盤は完全に純粋な気持ちでは観ることができませんでした。
この雑音のような感情は製作された方にとっては不本意なものということは理解できるのですが、魂を注ぎながら長い時間をかけて描きこまれたであろう美しいシーンを見ると、そのような作り手の命が不条理に奪われてしまったことに激しい怒りと悲しみが浮かんできて、何の涙かわからない涙がこぼれ続けました。

ただ、そのややこしい感情に取りつかれるのも序盤まで。
やはりこの作品には観るものを引き込む力があり、2時間20分という最近の劇場版アニメの中では長めの作品ではありますが息をする間もなくあっという間に終わったような感じでした。

作品自体にはテレビ版の回想のような部分もあるので、テレビ版を知らない人がこの劇場版をスタートに楽しめるかというとちょっと微妙かもしれません。
そして、テレビ版を観終わってこの劇場版を観た方は正直賛否が分かれるかもしれません。
全てが終わったようなすっきり感を得られる人もいれば、ストーリーとしてはテレビ版で終わっておいてほしかったと思う人もいるかもしれず、私はどちらかと言えば後者よりの感情でした。
私は上映中はほんとわけもわからないくらい涙を流し続けてましたが、家に帰ってストーリーだけ思い返してみると「うーん」ってなっちゃったのは確かです。

ヴァイオレットエヴァーガーデンという作品全体を通して言えるのですが、泣かせる方法を心得ていてある意味ズルいんです。
ずっと我慢してた人が泣いてもいいシーンで顔をくしゃくしゃにしながらも泣くのをぐっと我慢する...我慢し続けるのかと思った数十秒後に堰を切ったようにもっと顔をぐしゃぐしゃにして大号泣する、それに美しいストリングスの音楽んが流れる...
普通の感情を持ってる人間なら誰だってもらい泣きしちゃうんです。
そして、そのテーマが作中登場人物の生き死にや子供に関わることなので泣かせる王道手法がそろいまくってるんです。

じゃぁ、ただ泣かせることを目的に作られた作品かと言えばそれは全然違うのです。
「人が人に対して残したいもの、伝えたいこと」というテーマがしっかりとしているので「あー、泣けてすっきりした」みたいな陳腐な作品にはならず、終わっても心の中にずっと何かが残り続けるような素晴らしい作品になっています。

本劇場版については万人におススメできるものではないのですが、少なくともテレビアニメ版は後世に残したい素晴らしい作品です。
まだ観ていない人はテレビ版から見ていただいて、お話の続きがどのような形であっても抵抗がないという人にはぜひこの作品も観ていただきたいです。
ストーリーとしては思うところが多くありますが、いつも通り美しい世界を見せてくれて大切なものに気づかせてくれる素晴らしい作品でした。

素晴らしい作品をこの世に生み出してくれてありがとうございます。

https://amzn.to/3jnIfrQ

★★★★★(5/5点)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?