貴方が死ぬまでにしたい10の事 《第一話》
桜咲乱れる4月、私は貴方に出会った。
新学期早々放課後に鳴り響くのは、どの部活の声よりも大きい声。
「透子~~!!!!また振られた!!!!」
教室の片隅で学級日誌を書いていた透子に私は泣きついた。
学級日誌を閉じ、私の目をじっと見て透子は息を思いっきり吸ってこう言った
『沙希さあ、これで何回目??しかも毎回違う人じゃない。それに知り合ってどれくらい経った?2日でしょ?良くも知らない人に告白なんて、毎回何考えてるのよ…そりゃ私が相手でも振るわよ!』
何も言えない。
「ち、ちょっと!慰めなさいよ親友なら!!!今回は1つ上の先輩でこの間、身体測定のプリント拾ってもらった時、すっごい運命感じちゃったんだもん!」
『あんた身体測定の結果見られてんじゃないの…ってか運命感じたって毎回言ってるじゃない、なにその当たらない勘は!!』
昔よく絵本で見た織姫様と彦星様の話に憧れた私は、未だに運命の人がいると信じている。そんなロマンチックな恋愛をしたいと思い続けてきた。
『根本的に夢見がちなのよね。』
「やめて!ロマンチストって言って!!心が痛むでしょ!!!」
『17にもなって現実見なさいよ。あ、私そろそろ時間だから、先に帰るわね。じゃあ。』
透子は足早に帰ろうとする。
「あっら~彼氏でもできたの?春休みも遊ぶ回数少なかったし…まあ透子に限ってそんなこと…」
そう横目で透子を見ると顔を真っ赤にしていた。
『やっぱバレた?』
そのあとの話は全く記憶にない。
あの透子が。今まで色恋沙汰なんて1回もなかったのに。ますます"彼氏"というものに憧れを持ってしまう。
「それにしても今週の土曜日どうしよ…透子といつもの様にゲームしてご飯食べに行こうとしてたけど…無理そうね。」
まあいつかは、と思ってた事がこんなにも早くに起こるなんて。
重い足取りで帰った家には誰もいなかった。
玄関を上がってすぐあるリビングのテーブルの上には伝言用紙とオムライス。
22時には帰るわ。
私の母は1人で私を育ててきた。昔から。今も。
大体夜遅くに仕事から帰ってきて夜中まで在宅業務。それから寝て朝早く出ていく生活。私と合うのは休みの日くらい。私だってバイトがあるから中々会える機会が少ない。家庭としては全く成り立っていない。こんな生活にももう慣れた。会えないからと言って母を嫌いになる訳でもない、むしろ感謝してるくらいだ。だけどどこか寂しい。
「まあ、寂しくないんだけどね~」
無駄に広いリビングにぽつりと響き渡る声。その声にエコーがかかって自分に突き刺さる。
"ピコン"
オムライスを食べていると携帯が鳴った
「ん~と、んー、お、お!!!!」
それは私にとって朗報でしか無かった。
"沙希~合コンこれない?1人足りなくてさ~"
合コンと呼ばれるのは初めてだった。無論断る必要がないので行くことにした。今週の土曜日、時間は17:00。
「はあ~楽しみ!相手は大学生らしいし♪オシャレしてこーっと!」
この時私が合コンに行こうとしなければ、透子に彼氏が出来たことを聞かなければ、ましてや運命なんて信じなければ、あんな辛い思いなんてしなかったのに………
つづく
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