読書メモ:「データ分析のための数理モデル入門 本質をとらえた分析のために 」,および雑感.

この本を買いました.

僕はシステム制御系から入って機械学習をはじめとしたデータ分析を道具として研究の道を選択してそれなりの年数がたつわけです.教員になってからだけでも15年たちます(もうそんなに!).ですので,それなりにこの周辺の知識は持っているつもりです.事実,この本に書かれている技術について,大半は「あー聞いたことあるなー」以上の知識がありますし,実装の経験がある手法も少なくありません.

この本のすごいところはそこで,「10年くらい必要に迫られて場当たり的に勉強していってぼんやりと構造がつかめてきたかな…」という内容について,手法の意図や特徴についてたった1冊で,図を中心に概念をとらえやすく書いてあるわけです.通常,論文ではアルゴリズムや技術の意図,さらに「なぜ数理モデルを使うか?」といった観点についてそこまで詳細に書かれることはないですし,私が大学院生だったころあたりは今ほどライブラリが充実しておらず,いきおい「意図は知らんがこのアルゴリズムを実装せねばならん」という勉強・研究の仕方になってしまっていたわけです(これは自分の態度が悪かっただけかもしれませんが).最近はデータ分析が一般化してきたこともあり,このように全体を概観できる良書があっていいなーと思います.

ちょっと自分として興味深かったのは,時系列分析の状態空間モデルが「高度な」方に入っていたことですね.僕は現代制御から最適化やデータ分析に入っていったので,基本のツールが行列形式の状態方程式で,回帰分析よりも前にシステム同定を行っていました.これを読んで,状態空間や伝達関数で行けそうな時系列分析の問題に対してニューラル系の手法を適用してしまう人がそこそこいる理由も納得いきました.多分,回帰分析から入った後,制御系,DSP系の文化に触れずに機械学習に出会った人だとこの辺を飛ばしちゃうんでしょうね.

もう一つ,出身研究室に感謝することがあって,二十何年か前の4年生の輪講の内容が現代制御とパターン認識(パーセプトロンとか)だったんですよね.これ今でも基礎体力としてしっかり背骨になってる感じです.今だと何が選ばれるのかな?現代制御はとってもつよい道具なので,データ分析界隈でも勉強する人が増えるといいなぁ,と思っています.内容も微分方程式+線形代数で,「大学までの数学はすべて現代制御のためにあったのか…」と勘違い(本心では勘違いとは思っていない.笑)したくなるほど素晴らしいですよ.



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