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人はそれぞれ持論を持っているわけで
全ての会話はそれのぶつかり合いで
全ては持論の修正及び新たな発見のための
過程なのかもしれないと
いや、そんな強烈な会話ばかりでも
人間ばかりでも無いのか、と
1人でまた持論を改めたり
そんな夏も過ぎ去った
昼下がりみたいな空の下のお昼前

会話は相手との対話なので持論をぶつけすぎたら
それは壊れてしまうわけで
お互いの両手で運ぶ盆から水が溢れてしまう。

こちらはグラフトンストリートの路地。
日本でもアイルランドでも、ついつい路地に入りがち。
東京で言うと、銀座みたいなところだでしょうか。

明け方に、既に冬の寒さが顔を覗かせるのは
北海道よりも高緯度に位置する
ここダブリンに
お気に入りの一軒の本屋がある
ダブリンの観光客街テンプルバーの通りを
少し歩いたところに見つけた
本屋、というよりセレクト写真集屋さん
何気なく散歩していたら見つけて通い始めたのは
いつ頃か
まだ夏も始まらぬ春先だった記憶
あの頃は、また今とは違う、大事なものを一つ知らない
そんな幸せ者だった気がしている
幸せ者か、ただの無知者か
やはり、ある意味であの頃は幸せ者で愚か者
今よりもずっと

どう頑張ろうとも
結局は余所者のこの街で
多くの荷物を持てぬ故に
大きな本は買えない
だから行く度にポストカードを手にして帰る
これはせめてもの抵抗活動
定番の観光客向けのポストカードだって可愛いけど
写真家による写真を遇らった
ポストカードはやっぱり
どこまでも行けそうで
どのカードを誰に送ろうか
時間はするすると流れてゆく

昔から本屋が好きで
欲しい書籍が無くても
帰り道に、よく寄り道して帰っていた
というより、本屋くらいしか
寄る道が無かったように思う
あとはコンビニくらいかしら。
漫画も小説も歴史書も参考書も
全ての棚を巡回して外に出る
気になる一冊を見つけたら
助手席に座らせて、連れて帰る。
そういう日はいつもより
ハンドルを回す手が踊る
買ったばかりの書籍の匂いが
鼻に伝って香る

こちらはリッフィー川沿いの本屋さん。
リッフィー川は日本で言うと、京都の鴨川みたいな。
隅田川でも目黒川でも無く、全体的に関西感を感じる。

本屋にはそれぞれ
趣味がある
癖が強い本屋
特徴の無い本屋
主張を隠さない本屋
どれもそれぞれで
本屋をゆったりとを歩き回って
全身で本屋の意向を感じとる
そして反芻して思い出して分析する

本屋は面白くて
大型チェーンの店舗ですら
各店舗の趣味が出てくるから興味深い

いくら住み良さそうな街でも
本屋の趣味がいまいちなこともある
とてもおしゃれでも、きれいでも
合わないものは合わなくて
きっとこれは自分の感じ方の違い
良し悪しでは無い相性の話

住む街に好きな本屋があれば
それはその時の正解なんだろう
次に住む街にも
自分にとっての素敵な本屋さんがありますように
自由が利くのなら
気になっているあの書店のある街にも住みたい

本屋を基準に考え始めたら
引越しの予定で人生が忙しくなりそうだ
好きな本屋があるということは
街を好きになれる、一つの要素
私にとっては

帰って来たことに不安を
車が止まることに失望を
最寄駅の名前に涙を堪えて
晴れているのに、息の仕方を忘れそうな曇る窓

空港に、駅に、門に
足を踏み入れて、手をかけて、ドアを開いて
帰還をあたたかく受け入れてくれるバスの車窓

同じ星空に抱かれて、流れゆく時間は一定
ベッドの中で羊は何を夢見て飛ぶのだろう

夏に行くとまるで地中海のような雰囲気を醸し出すけど、アイルランド。

あなたは住んでる街の書店が好きですか?
今日も素敵な本屋を巡っていますように。
探せば、波はどこまでも穏やかなのだから。


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