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「遊星王子2021」 レビュー 特撮ヒーローからから読みとく日本人の価値観とは!?

解説 (引用)
1958年に放映された特撮ドラマ「遊星王子」を、「三大怪獣グルメ」「日本以外全部沈没」などを手がけた特撮コメディ映画の鬼才・河崎実監督のメガホンでリブート。
1機の宇宙船が地球に墜落してから200年後の日本。長い眠りから覚めたMP5星雲第四遊星の王子は、パン屋の娘・君子を絶体絶命のピンチから救い、パン屋に居候することになった。地球人と触れ合い、時にはトップアイドルと入れ替わり、宇宙からの侵略者・タルタン人から街を守るなど、遊星王子の活躍ぶりは地球生活を満喫しているかのように見えた。しかし、実際は墜落の衝撃により記憶の大部分を失くし、第四遊星へ戻る方法がわからずにいた。ヒーローとして一躍人気者になった王子だったが、王子の正体が宇宙の破壊者であることがタルタン人によって暴露されてしまう

抑えるポイント

おバカ映画の巨匠、日本のエド・ウッドこと、河崎実監督の生まれた昭和33年1958年に放送スタートした日テレの特撮ドラマが60年ぶりにリブートされた作品です。

シン・ウルトラマンや、シン・仮面ライダーなど過去のヒーローの再構築再演出される中、特撮の古典である「遊星王子」が再び拝めるのは嬉しいですね。東京オリンピックも再びありましたが、改めて温故知新の大切さを感じます。


本作の魅力

リブートされて本作の魅力は、なんといっても当時は白黒だった遊星王子の衣装がカラーで拝めるというところ。ちなみに、ライトブルーに輝くレトロフューチャーなスーツは、サイレントメビウスでもお馴染みの麻宮騎亜さんがコスチュームデザインを担当。敵のロボットなども昔懐かしいデザインとなっています。

また主演の遊星王子&舟木康介役を演じた、日向野祥さん、大村君子&クローディア姫役を演じた織田奈那さんのフレッシュな俳優陣も見所。

それとは対照的に、脇を支えるメンバーがとにかく濃い。岩井志麻子さん、徳光正行さん、大林素子さん、吉田照美さんまでもまるでロフトプラスワンのオールナイトトークライブ状態です。

実は私も恥ずかしながらワンシーン出演をさせて頂いております。全裸監督の原作者の古橋信宏さんと、月刊ムーの三上編集長と宇宙人討論シーンで出演をさせて頂いております。ただサブカルメンバーだけでなく「帰ってきたウルトラマン」の団時朗さんがしっかりまとめてくれるのも流石のキャスティングといったところでしょうか。

また本作はストーリーも多重構造で、よく練られております。200年間地球で眠ってしまって記憶がない件は、原作の設定をオマージュし、一人二役の下りや、遊星王子が人類の敵なのか味方なのか?とクライマックスで煽るシーンなど見どころ満点です。

アイドル・宇宙人・特撮と、世代を超えて男の子の夢や好きなものが全部詰まっている本作はぜひ親子でご覧になって頂きたいです。


日本における特撮ヒーローとは何なのか?を考察。

1945年8月15日日本は敗戦国となる。
今までの軍国主義的なものを排除された形で、一番最初にヒーローを模倣したのはやはり「スーパーマン」1938年〜でした。

和製スーパーマンを作りたい!とのことから始まってが「スーパージャイアンツ」。そして次の年に「遊星王子」が始まるのです。

下記に日本の特撮ヒーローの古典の歴史を簡単ではありますがまとめてみました。

1957年 スーパージャイアンツ
1958年 月光仮面・遊星王子
1966年 ウルトラマン
1971年 仮面ライダー
1975年 秘密戦隊ゴレンジャー

ウルトラマンが1966年から放送スタートなので、8年も前に、宇宙人が地球を守るという「遊星王子」のドラマが始まっています。

ここで特筆すべきは、スーパーマン・スーパージャイアンツ・遊星王子は皆顔出しをしているという点。さらにはピチピチの全身タイツ。スーパーマンの影響をもろに受けていることがわかります。

ただウルトラマン以降は、仮面ライダーやゴレンジャーなどフルフェイスマスクをしているのが当たり前になります。これは考察しますと、正義の行いをするには自己アピールをしないことこそが美徳であるという信念があるからと言えるでしょう。

親愛なる隣人の「スパイダーマン」もそうですが、「名乗るほどのものじゃないですよ」がヒーローに求められるのかもしれませんね。時代劇の古典で言えば、鼠小僧や、石川五右衛門など、庶民のために戦う正義の味方が脈々と受け継がれているのではないでしょうか。

もちろん藤岡弘さんがバイクで怪我をするなどあり、スーツアクターに任せるという制作的な事情もあると思いますが、正義の味方は誰か分からないことこそがヒーローにおける重要なポイントなのでしょう。

また女性ヒロインはセーラムーンに代表されるように顔出しをしていますが、なぜか?これも考察するに、男は仕事で勝負。女性はやはりメイキャップこそが変身し、パワーアップするという男女の価値観の現れのような気がいたします。

特撮ヒーローは、古典を踏襲しながら、常に時代の風を受け入れて進化を続けていくことでしょう。

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