大人になることが忘れていくことなら 僕は今のままでいたい

槇原敬之さんと聞いて思い出すのは「Witch hazel」というひと夏の恋を歌った曲です。
1曲聞き終わると、まるで青春小説を1冊読んだような気持ちになります。
たぶん、主人公の心情をこちらに想像させたり預けたりするような表現がいくつか見られるからだと思います。
私が特に好きと言いますか見事だなと思うのは、2番の出だし。
「折ったままのチノの裾隠れてた あの海辺の砂こぼれ落ちる 君がふざけて僕を押した拍子に 転んだ空はこの街にない」
すなわち、「夏が終わった」ということなのですが、その一言で終わるところをこのような叙情的な表現にしてしかも転んだのは僕じゃなくて空のほうになっているというひねり技にもう、ううむとこちらは唸るしかありません。

あるイケメン歌手さんが同世代である槇原敬之さんの才能にずっと嫉妬していると告白しているのを何かで読んだことがあります。
気持ちはわかるのですが、槇原敬之さんの場合、もうやっかみとか羨望とかが届かない場所に最初からいるのだろうなとこの曲を聞くたびに感じてしまいます。

だから、今回のことは本当に残念ですが、槇原敬之さんにしかわからない事情があるのだろうと思います。
たぶん、普通の人の想像力では及ばないところで底知れない孤独と向き合っているのでしょう。

題名は「Witch hazel」の歌詞の一部。
初めて聞いた10代の頃にはこの部分について何も思いませんでしたが、今はただただ切ないです。

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