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お墓だった

最近すごく早く起きる。それはもうものすごく早く。具体的には3時半とか4時とか。

なぜなら前日夜9時くらいに寝ているから。別に早く寝ようという意思などなく、気がついたら布団を被り意識を手放している。おかげでなんにもできていない。夜に何かやろうと立てた予定はことごとくご破算となっている。日記も動画もギリギリで作っている。肌の調子だけが異様に良くなるばかりの日々。…なら別にいいか。

早起きしたら散歩に行く、というのが私の中でなんとなくルールとなっている。散歩はなるべく人のいない時間帯にしたい。その方が気持ちがいいから。必然的に超絶深夜か超絶早朝かに出かけることが多い。真っ暗の中歩くのは少しうきうきする。『自由人』という気持ちになる。好きなことをして生きているような気持ち。

個人的には朝方に家を出て、だんだんと明るくなる空を感じながら散歩をするのが好きだ。暗闇は暗闇で落ち着くから好きではあるけどなんだかんだ日光を浴びるのが1番気持ちが良いというところがあるのでその両方を感じられる早朝の散歩はとてもお得。途中、コンビニで朝ごはんを買ってどこか知らない公園でぼーっと食べる時間を設けるとなお良い。スローライフを送っていると脳が勘違いをするから。

先日も前述の通り午前3時に起きたため散歩に赴く運びとなった。

すっかりと寒くなってきたのでセーターに着替えコートを羽織る。せっかくなので買ったばかりのものを選ぶ。これは早朝散歩愛好家からのアドバイスなのだけど散歩に出る際は出来るだけおしゃれをした方が道中ふらっと喫茶店に寄ってみたりできて良い。気分が上がるので普段行かないようなお店にも寄れたりする。モチベが上がる。モチベーションのことモチベって初めて言ったかも。

外に出たらまずはなんとなく向かう方角を決める。散歩には短期型と長期型が存在している。短期型の場合は決まったルートを歩くことで気持ちの切り替えを行うというのが主な目的となっているが、今回のように体力と時間が有り余っている場合は散歩自体を目的としている場合が多い。なるべく知らない道を選びながら歩く。1時間もしたらどこか分からないところまで行ける。ほとんど迷子の状態でふらふらとするのが長期型散歩のコツである。マップアプリはできるだけ見ない。

2時間くらい歩いたところで現在地を確認する。まだ体力に余裕がある状態のうちに近場の駅を調べておくと丁度良い疲労感で帰宅することができる。無策にひたすら歩き続けてしまうと家に着いた瞬間にばたんきゅーで起きたらまた深夜、なんてことになりかねない。

地図を見てみると近くに公園があった。かなり大きい。レビューにも「自然が豊かでとても素敵なところです」とある。せっかくなのでそこで朝ごはんを食べることにする。コンビニでパンとホットコーヒーを買う。HIKAKINさんが動画で1番美味しいと言っていたものを買ってみた。こういうプロモーションって思ったより効果があるな、と思う。宣伝効果は侮れない。

公園の入り口付近まで行くと前方に年配のご夫婦が見えた。何かを拝んでいる。近づいてみると小さな祠があって中にはお地蔵さんがいた。お花が置いてある。毎朝歩いて祠にお参りするのが日課なのかもしれない。元気だ。元気な人を見る度いつも思うのだけど、みんな体力ゲージ私の倍くらいない?それだけのことをしたらあとは1日寝て過ごすしかないよ、っていうスケジュールを2個も3個も詰め込んでいる人たちが少しではなく結構な割合でいる。私も一応健康優良児でやらせてもらってはいるけれど、そういう生活は一生できる気がしない。憧れ。


公園に着いた。歩道が綺麗に整備されている。おー、と思いつつ歩き進める。木々が生い茂っている。空気も澄んでいていいところだ。

しかし園内に入ってすぐ、違和感を感じた。

違和感というかもはや違和なのだが公園の中には綺麗に手入れされた芝生と、あとは高さの揃ったねずみ色の石碑がずらっと並んでいた。

お墓だった。

いつの間にやらお墓に囲まれていた。

え、公園じゃなかったっけ?

たまたま公園内にお墓コーナーがあったのかもしれないので(お墓コーナーって何だ)もう少し歩いてみることにする。

坂道があった。ここを登るとちょっと小高い丘みたいになっているらしい。じゃあそこで朝ごはんを食べよう、ということでずんずんと登ってみる。

結構きつい坂だった。

肩で息をしながらよっこいしょと坂を登り切る。

…しかし、というかもはや予想できてはいたけれど、そこにもやっぱりお墓がずらっと並んでいた。

全部お墓コーナーじゃん。

地図アプリを開いてみる。そこには○○苑としか書かれていない。これって公園ってことではないのか?と思い詳細をタップして口コミを見てみる。

「自然が豊かでとても素敵なところです」

さっき見たレビュー。特におかしなところはない。

スクロールして他のも見てみる。

「癒される墓地です」「広々として素敵なお墓です」「自然を身近に感じられます。家族も喜んでくれていると思います」

あー…

完全に霊園だった。そっか。


適当なベンチを探して座ってみる。一応公園としても機能しているらしく、フリースペースというか自由に使ってもいい場所というものがあった。

せっかくなのでご飯を食べていくか、と思いコンビニの袋を広げる。背後にお墓を背負いながら朝ごはんを食べた。

美味しい。

HIKAKINさんも推してたもんな、このカレーパン。

最近HIKAKIN TVをよく見るようになった。弟が食事時に流しているのを一緒に見る感じなのだけど普通に面白くて見てしまう。安心感がある。結局のところ安心感が1番大事なのかもしれない。あとグキッというSEを流しながら首を折る動作を毎回している。面白い。

パンを食べ終えた。冷めてしまったコーヒーを飲みつつ園内を改めて見回してみる。色づいた木々に差し込む木漏れ日、秋の張り詰めた朝の空気。

最初に見たレビューを思い出した。「自然が豊かでとても素敵なところです」

確かにそうかも。お墓だけど。

実際、静かで落ち着く場所だった。心なしかリフレッシュできたような気がする。

…まあ、お墓だけど。

時刻は午前7時になろうとしているところだった。

早起きをして、おしゃれをして、知らない墓地でコンビニのパンを食べながらHIKAKINさんの動画って面白いよなーとまったり考えている。

そんな意味不明な休日を過ごしている。


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