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32歳中途入社と23歳新卒が、本気で会社の愚痴を言いあった

「もうしんどい、辞めたい、逃げたい」

一度飲み会で一緒になった新卒の子が、社食で泣いていた。
大学を卒業し、希望を持って入社し、半年そこそこ。結果なんてまだまだ出せない。でも焦る。周りは少しずつ成長している。自分だけが成長していない気がする。辛くなる時期だ。

一方の私といえば、30代で人生初の転職をして一年。
この会社のやり方がなんとなくわかってきて、環境にも慣れてきて、楽しくなってきたとともに、変えないといけない部分に気付き始めている時期。

社食のランチで涙を流していた彼女と、夜、帰り道に偶然はち合わせた。

気付けば私は彼女を誘い出し、ワッフルとチーズケーキを食べながら、2時間近く愚痴を言い続けていた。

「あの人、叱り方が良くないよね」
「こういうやり方って古くない?」
「自分たちが苦労したことをなんで反復させたいんだろうね」
「ってかあの人イケメンっぽく振舞ってるけど、めちゃめちゃ普通におじさんだよね」

彼女は笑ってくれた。解散後、彼女から「もう少し頑張ってみる」と連絡がきた。


この会社に転職する前、ブラック企業に8年間いた。
当時、私は管理職に近い立場にいて、社員の「辞めます窓口」だった。その度、説得にチャレンジし、失敗し、上司に報告し、怒られ、謝罪した。当時、私は「辞めます」と言った社員の気持ちに共感できなかった。

私の立場では共感するのはタブーだと思っていたし、心のどこかで(あんたの仕事量で辞めたいとか、私はどうしたらいいんだよ)という行き場のない憤りがあった。結果、私は会社の代弁者として、誰でも言えそうないわゆる会社の先輩の返答しかできなかった。

「辞めます」を「もう少しがんばってみます」に変えられたことはない。変えられるとも思ってなかったし、私に言ってくる時点で、その決意は揺るがないものだと分かっていた。本当に申し訳なかった。

もしかしたら、最後の最後に私に共感してほしかっただけかもしれないのに。


いちごジャムの乗ったワッフルと、シンプルなチーズケーキをちまちま食べながら、私は素直に私が不満に思っていることや、私が感謝していることを話した。でも基本は彼女に問い、その答えをただ聞きながら共感することの繰り返し。ただそれだけ。

あの時も、本当はそれだけで良かったんだろうな。

ただ、そもそも32歳中途採用の私に、新卒の彼女の気持ちなんてわからない。彼女が言った「もう少し頑張ってみます」は、嘘かもしれない。でも、あの夜彼女が笑ってくれたことは、本当だったと思う。

正直、彼女の愚痴は、私からすれば(うん、まあ、そうよね。今の時期、この場所で、そう思うよね)と思えてしまうことで、予想外のことは多くなかった。

でもその当たり前のことが、彼女にとっては、心をいっぱいいっぱいにしてしまっていて、必死で半年頑張った結果で、最大値で、自分の人生を左右するものなのだ。実際、この会社を辞めたところで、この会社に居続けたところで、彼女の人生は左右されないし、そう思えてしまっているだけなのだけど、でも、今の彼女にとっては、それだけが唯一の事実なのだ。

それに対して、私がちょっと偉そうに話をするだけで楽になることなんてない。それを分かって、ただ普通に友達みたいに共感した。責任もないからこそ、好き勝手言ってやった。彼女の上司は私の先輩だけど、言ってやった。会社の悪いところは、悪い。嫌なやつは、嫌なやつだ。仕事場に、そういう普通の共感値を持ってる人間が会社にいるってだけで安心するものなのだろう。私にも、そんな人がいたら良かったと今は思う。

人の価値観は違う。
人は変わらない。のくせに、変わってほしくないところは変わる。
組織だって同じだ。

その中に、ひとりでも自分に共感してくれる人がいるだけで安心する。それを実感できたから、私もまたこの会社でもう少し頑張ってみる気になっている。若き新卒ガール、大切なことを教えてくれてありがとう。

ムリせず頑張ろう。
辞めるか辞めないか、だけじゃない。グレーの答えを出しても良いんだよ。
一緒にもうちょっと頑張ろうか。ほどほどに。

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