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『ホラリー占星術-入門と実践-』刊行記念! 監訳を担当した占星術研究家の鏡リュウジ氏が、占星術研究家のいけだ笑みさんと語る、ホラリー占星術とその魅力とは?


 欧米でホラリー占星術の指南書として高く評価され長らく読み続けられている、アンソニー・ルイス著『ホラリー占星術』をご紹介することができました。「ホラリー占星術」とは、長い歴史をもつ占星術の一分野です。これまでよく知られている占星術では、「出生データ」を基準にしたホロスコープ(*1)を使って、その人の可能性や性格、一生の流れなどを解釈していくスタイルが中心でした。これは「出生占星術」(ネイタル・アストロロジー)と呼ばれています。
 一方で、「ホラリー」(時間、時刻という意味)では、相談者が真剣に心の中の不安や心配、あるいは質問を占星術に問いかけた瞬間のホロスコープがその問いに具体的に答えると考えます。この占星術は17世紀までは盛んでしたが、19世紀末から20世紀後半まではどちらかというと「傍流」の占星術と扱われてきました。しかし、1985年に17世紀のウィリアム・リリーによる『クリスチャン・アストロロジー』が復刻されると、「伝統占星術」の復興の波にのり、再評価の機運が高まりました。
 日本においてもホラリーは、先人たちの手でその小さな灯が守られてきましたが、近年、リリーの『クリスチャン・アストロロジー』(*2)の邦訳やいけだ笑みさんの『ホラリー占星術』(2009年 説話社)などによって再び熱い視線を集めています。そんな中でのルイスの『ホラリー占星術』の刊行は、まことに時機を得たものだと思っています。本書の特徴やその経緯などについては監訳者あとがきでもかなり詳しく述べていますが、今回、刊行を記念して、日本で熱心にホラリー占星術を紹介、普及活動に取り組んでこられたいけだ笑みさんと夜半にメールでおしゃべりさせていただきました。いけださんには本書の監修作業中にいろいろ質問させていただきました。あとがきでは触れられなかったようなホラリーの魅力をお伝えできれば幸いです。
※この記事は、占星術についての専門的な用語などを多々含んでいることを予めご了承ください。また、参考までに注釈をつけておりますので、ご参照頂けますと幸いです。

「「ホラリー=古典」ある種厳めしいムードがあった」(いけだ)

 こんばんは! 翻訳の監修作業中、いろいろアドバイスをいただいた、アンソニー・ルイスの『ホラリー占星術』ようやく出来ました! その節は本当にありがとうございました。
 つきましては、ホラリーに関していろいろおしゃべりをしたいのですが、なにしろこのご時世でもあるのでバーチャルで、メールでチャットみたいにお話したいと思っています。いけださんはホラリーを日本で熱心に広めてらっしゃり、ホラリーの入門書を出しておられる上に、研究会も活発にやっておられる方ですから。
 しかし、僕がホラリー本にかかわるようになるとはね……占星術コミュニティの中にはびっくりしている人も多いんじゃないかな。なにしろ、「鏡は”心理”占星術のヤツ」だと思っている人が多いでしょうから(笑)。
 とはいえ、いけださんも、最初から「ホラリー」の人ではなかったわけでしょう? 少なくとも僕と出会ったころはそうだった。ホラリーとの出会いって、いつごろでどんなかんじだったんですか? ちょっと教えてもらえませんか?

いけだ こんばんは! いやぁーーー、とうとうこの日が来ましたね。というかやっとこの日が……。
 私がホラリー占星術と出会ったころは、アンソニー・ルイス氏の翻訳本が読める日が来るなんて夢みたいなことはないと思っていました。そのころは、「ホラリー=古典」という大きなくくりがあって、古典に携わっている人達はとても勉強熱心でちょっと怖いムードでしたよね? 「本物の占星術はこっちで、モダン占星術は似非だ!」と言わんばかりのある種厳めしいムードがあった。

 はい、1990年代だよね……85年ごろから英米で「伝統占星術」の復興が盛んになってきて、その運動はまずはホラリーの技法の発掘が大きく影響していたから。

いけだ ですね。鏡さんがおっしゃる通り、私は朝日カルチャーセンターで松村潔先生に占星術を習うところから本格的な勉強を始めているので、そもそも占星術に「古典」とか「モダン」ってあるの?という認識でした。ですから、自分がこんなにも魅せられている世界が「似非」だとばかりに言われるのに対して、「ならば“本物”と言われている古典の世界ってどんなものなのか、一通り知ってから反論しよう」と考え始めたんです(のちにミイラ取りがミイラになるのですが)。そして古典やホラリーの文献を読み漁っていたころに、鏡さんの『占星綺想』という本に出会いました。


占星綺想

         『占星騎想』鏡リュウジ著(青土社)

 鏡さんの本はいつもそうなのですが、タイトルが素晴らしくて、タイトルを見ただけで想像を搔きたてられ、読み始める前に何日もそれを味わう時間があるんです。本のタイトルを見た時、「綺想」という言葉こそが今の自分に最もしっくりくると感じ入りました。古典を読み漁りながら、どんどん魅せられると同時に「んなあほなw」という気持ちになり、それでもまた「でも面白い!」に戻る。そういった気持ちを的確に示してくれているような、「それでいいんだよ」と言ってくれているようなタイトルです。この本にはある意味痛烈に古典派に反論しているような部分もあると思います(笑)。
もし宜しければ、鏡さんに『占星綺想』を書かれた時のことを少し訊いてみたいと思うのですが。

 あら……逆に質問されてしまった。
 『占星綺想』は、初版が出たのが2001年ですが……『ユリイカ』誌での連載は2000年でした。うわ、もう20年も前か……恐ろしい(笑)。考えてみれば『占星綺想』は、実践的な占星術家が「現代占星術」と「伝統・古典」占星術の違いを意識的に明示して出した初めての商業出版かもしれません。なんか僕っていつも早過ぎちゃうんだな……というか、すぐに出してしまう悪い癖がある。
 確かに日本にも「伝統」占星術が入ってきたのは、あのころだったと思います。僕は伝統占星術の復興は、90年代から英国で目の当たりにしていました。いけださんもおっしゃるように、モダン占星術への強い批判の勢いに辟易していたんですよね。10代のころからリズ・グリーン(*3)らの深い象徴解釈に心酔していたことがあったから……。でもさすがに無視することもできずに古いテクストを勉強がてら読んで、エッセイにしていったんです。「僕もちょっとは知ってるよ」と背伸びしたかったわけです。
 ただ古いテクストを読めば読むほど、そのまま信じることも応用することもできなくて。なぜなら、現代占星術ですらとてもそのままでは使えるとは思えず、ユング心理学の象徴解釈というクッションを挟んでこそリアリティを感じられたんだもの。でもやはり古いスタイルの占いって面白いでしょ。距離をとりつつ面白がるという意味で『綺想』という言葉を使いました。
 ところで17世紀以前の伝統占星術が姿を現したのは、リリーの『クリスチャン・アストロロジー』の復刻(1985年)が起爆剤になってのことでした。この本のメインはなんといってもホラリー。ホラリーはネイタルよりも古典とモダンの読み方の差がくっきりしているので、初期のトラディショナリストはホラリーから出発していることが多かったですよね。
 でもこれがなかなか……ネイタルとホラリーではチャートを見る時の発想が異なるので、入り込むのに時間がかかりました。本当は、いわゆる「伝統占星術復興運動」以前からホラリーを大きく扱っておられ、その復興運動にも尽力されたジェフリー・コーネリアス(*4)先生、マギー・ハイド(*5)先生との深い関係からすると、僕はとっくにホラリストになっていないといけないんですけど。ダメな弟子、後輩ですね。


ユングと占星術

   『ユングと占星術』マギー・ハイド著 鏡リュウジ訳(青土社)


「ルイスの本で、僕のホラリーへのちょっとしたアレルギーも解消されました」(鏡)


いけだ はい。鏡さんはいつも切り込み隊長です! そうそう、それで、初期のトラディショナリストはもう、イコールホラリーのような感じでした。それが私にとってはとてもラッキーなめぐり合わせだったんです。このころちょうど私はネイタルリーディングに限界を感じていました。いや、ネイタルリーディングそのものに限界を感じていたのではなく、正確には他人が他人のネイタルを読むことに限界を感じていたんです。
 3つの問題がありました。一つは、純粋培養されている人などおらず、環境や親のネイタルとの兼ね合いから、ネイタルチャートをそのまま読むことができない点。もう一つは、読み手のバイアスと受け手のバイアスによる伝え方と受け止め方のズレ問題。最後に、象徴が網羅する幅の広さと個々人の成長の度合いによる解釈の幅のこと。
 ホラリー占星術は、当時の私が感じていたジレンマから私を軽やかな羽で救い出して、象徴解釈を純粋に楽しめる大空に解き放ってくれる技法のように感じました。それなのに、ホラリーを現代に蘇らせてくれる先駆者たちの切り口が、あまりにも厳めしい……。そこで登場したのがアンソニー・ルイス氏だったんです。

 鏡さんの『占星綺想』も古典の世界に入っていくための追い風でしたが、アンソニー・ルイス氏の『Horary Astrology Plain & Simple』も完全に私の迷いや憂いを取り払ってくれるターニングポイントだったんです。
 「本物の占星術」などのタイトルやスタンスのホラリー本のほとんどが、モダン否定や批判を導入として論理を展開しているのに対して、ルイス氏の本はバランスよく中立的で、冷静に検証を重ねていて、「どっちが本物か」といった不毛な二極論にエネルギーを吸い取られることなく、純粋にホラリーの技法や古典の魅惑的な技法を検証されている本だと感じました。

 あはは……いけださんの「ネイタルに感じる3つの限界」は、とても重大な問題を孕んでいます。特に最初の点なんてプトレマイオスや中世のアウグスティヌスまで遡る問題です。これはね、占星術の基準が「出生時」にあり、それが星の「影響」から発するという仮定が引き起こす問題なんです。
ホラリーでさえよく、「質問の誕生の瞬間」とかって言われちゃうでしょう? あれは根本的な誤解だと思っていますよ。実はネイタルも一種の「ホラリー」的なものだと僕は考えています。これについて語ると長くなりそうなのでまずは、『占いはなぜ当たるのですか』(説話社)の付録にさせていただいたジェフリー・コーネリアス先生の講演を読んでくださいまし。


いけだ 『占いはなぜ当たるのですか』(説話社)の付録のジェフリー・コーネリアス先生の講演は素晴らしい内容です! 本当に広く読まれて欲しい。

 ありがとうございます。そして、いけださんがおっしゃるように、ネイタル占星術が孕む問題を、ホラリー的な視点でみればクリアできるというのは、正にそうだと思う。内的、外的事象とか後天的影響とかそういうものはなくて、シンボリックな1枚の絵の中に、心の内も外も、その後のことも、舞台装置も登場人物も全部が現れてくるとみるわけですから。そしてその質問の瞬間は、降って沸いたように訪れる。「出生時刻」というと一見、客観的なようだけど、実はそれは壮大な偶然による瞬間だし、象徴的な時間ですもん。昔は時計なんて不正確だったから「出生時刻は一種の儀礼的、象徴的なもの」でしょうし。
 もっとも、こういう「ふと与えられた瞬間の時間の一粒の中に私の見た世界全部が映し出される」という発想は、近代的なというか、因果的、合理的な思考法とは違うからこそ、理解しにくいわけで、ついつい、「質問の誕生日」なんてメタファーを使ってしまう人が多いわけですが。
 それで、間違っていたらそう言って欲しいのですが、いけださんがホラリーに大きく傾倒していかれるきっかけになったのが、ルイスの本だったのでは、と推察しておりました。なんとなく、その匂いがする……(笑)。
 かくいう僕もそうだったのですけどね。おっしゃていた通り、ルイスの本は古代から現代まで多くのホラリー占星術の著者たちの文献を網羅した上で公平に紹介していて、正直、これで僕のホラリーへのちょっとしたアレルギーも解消されました。

いけだ はい! 『ホラリー占星術』(説話社)の執筆中に最も強く影響を受けたのはアンソニー・ルイスのこの本と、ジョセフ・クレインの『A Practical Guide to Traditional Astrology』です。クレイン氏の本はホラリー占星術の本というよりは、古典的なメソッドの仕組みとソースを端的に説明してある辞書的な内容で、他の本ではさらりとチャートリーディングの例題の中で流されていたり、何度読んでも理解できなかったことをきちんと説明してくれているという、当時の私にとっての困った時のクレイン頼み的な本です。
 他にも影響を受けた本はたくさんたくさんあるのですが、ホラリーに対するスタンスという点において、ルイスのオープンな姿勢は私に合っていたと思います。プレイン&シンプルの冒頭にルイス氏のネイタルチャートが載っているのですが、アセン(*6)は私と同じ天秤座で、その支配星である金星は私のMC(*7)とぴったり合(ごう *8)の獅子座4度にあります。

 執筆中は、あまりにもたくさんのホラリーに関する文献を読みあさったので自分の中でもどのアイデアがどのソースからきているのかわからなくなるほどに頭の中が混沌としていました。これは蟹座の短所であり長所でもあるのですが、取り入れたものを咀嚼して消化吸収してからアウトプットするので、アイデアのソースと自分の考えとの境界線が曖昧になってしまうんです。そういったところはダメダメなのですが、蟹座の胃袋を通してありますので、初めてホラリー占星術を勉強したいという方にとっては、拙著『ホラリー占星術』(説話社)は吸収しやすい内容になっていると思います。

 ホラリー占星術って教室で教えるのはいいのですが、本だけでやろうとするとかなり難しいですよね。ネイタルももちろんそうなのですが、それ以上に……なにしろ実例をたくさんこなしながらやっていくほかないところがありますから。いけださんは何よりも今でも研究会をやって、常にいきいきしたシンボルのダンスを味わっておられるし、そういった経験が初心者向けの本に生かされていますよね。僕も推薦文を書かせていただきましたが、おすすめです。ルイスの本と合わせてどうぞ。

 ところで……現代占星術はホラリーを重視していないように思われています。実際、「近代占星術の父」アラン・レオがホラリーはダメだと言っていることがしばしば取り上げられます。レオはホロスコープを「魂の進化のマップ」ととらえ、「Character is Destiny」をモットーにしました。神智学の熱心な信者であったレオは生まれ変わりを信じていましたが、そのカルマとか秘教的な概念を脱色すれば、ホロスコープが「内的な可能性」を示す「心のマップ」だとみる、現代の心理学的占星術へはあと一歩です。
 ですからこの点だけをとれば、具体的で出来事中心的に見えるホラリーは、レオの占星術とは相容れないように思えますよね。ですから、伝統的占星術の再構築を目指す人の中にはレオを目の敵にする人もいます……。ですが、レオ名義でホラリー本が出ているんですよ。しかもレオをちゃんと読むと、レオはプトレマイオスなんかを熟読していることもわかる。レオのホラリーには明らかにレオによる占断例も入っていて。さらにレオの妻による伝記を読むと、ホラリーも出てくるんですよ。

 レオは、いわゆる「魔女禁止法」によって「未来を予言すると詐称した」として有罪判決を受けて罰金を払っているでしょう? それもあって、独力で、自分の膨大なテキストから元々少なかった予言的な表現をさらに削除し、書き直そうとする。そのための過労が早過ぎる死を招いたのでは、と言われているんです。病状が悪化した時、妻のベシーは、レオの同僚のH.S.グリーンにホラリーで「レオ氏の病状は深刻か?」という問いを送っていて、グリーンはそれに返答しているのです。グリーンは奥さんを安心させるためにも、「よくなる」と返信しています。グリーンはレオが主幹を務めた雑誌「モダン・アストロロジー」の有力な執筆者でレオの右腕と言っていい人でもありますから、これはレオ周辺でホラリーがちゃんと生きていたことの証拠です。だって、べシーやレオ、グリーンがホラリーを馬鹿にしていたら、こんなときにホラリーをみようなんて思わないでしょう? それで、面白いチャートですから、これをいけださんに見てもらえないかなと思って。

いけだ アラン・レオ氏の最晩年に、妻のベシーが立ててもらったホラリーチャート!! みてみたい、みてみたい、みてみたいです!

 データは1917年8月29日午後3時10分(サマータイム)、英国はボーンマス。当時レオ夫妻はコーンウォールにいましたが、手紙を受け取ったH.S.グリーンはボーンマスにいたんです。チャートはこちら。


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「シンボルに導かれ、シンボルのリードに従うことがホラリーの面白さを味わう最大のポイントなんだと思います」(鏡)


いけだ ……このチャートって、冥王星が発見される以前であればグリーン氏は「心配ない(月のボイド<*9>)、ほどなくして容態は安定します(土星と木星からの援助と品格を得た金星への接近)。とはいえ、水星が蟹座の火星とスクエアになるころに、また危機的状況になるかも……」的な読みになっていたのでしょうか? 冥王星を読むことができれば、この質問が最期になりそうなことがチャートに示されているようにみえるのですが……。
 私がこのチャートが美しいと思うのは、「死」の啓示はかならずしも悲惨な配置で示されるわけではないという素晴らしい例題になっているところです。ある意味そこにレオの意地を垣間見せてくれているかのように。
 レオを示すと思われる水星は、冥王星とのスクエア(*10)以外は、悪く読みようがないほどに良い。レオにとっての死が、いかに魂の解放を意味していて、肉体の挫折はそれに比べるとなんでもないことが示されているかのようですよね? 月のボイドがまるで魂の器(乗り物)を脱ぎ捨てている様子そのもののような。

 おっしゃるとおりなんですよ。いけださんの、こういう美しい解釈がいつも素晴らしいと思うんですよねえ、僕。
 そもそも、死の可能性のある人の妻に「ダメでしょう」なんてまず言えないですよね……。
 レオのシグニフィケーター(*11)は、第7ハウス(*12)(質問者のベシーの配偶者)だとすると、水星ですし、7ハウスと合となっている木星ですよね。木星は品位こそ良くないけど、ディグニテイ(*13)の高い金星や土星と良い角度。悪いアスペクト(*14)がないと言っている。そして、火星と月のオポジション(*15)を重視しているんですが、これは離れて行くから、大丈夫だと見たようなんです。
 でも冥王星を入れちゃうとね……おっしゃるように、水星は冥王星とスクエアに向かいます。冥王星は死のナチュラルルーラー(*16)
 そして冥王星はレオから見た6ハウス(病気)のルーラー(*17)。そして、ルイスの本でもしばしば登場するアラビック・パートを調べると、元々の12ハウスのカスプ(*18)には「病気」のパートが合となっています。そして「死」のパートは水瓶座0度で、月が向かっていくんですよね……ルイスの本の解釈だったらやっぱり良くないですよねえ。

 しかし、いけださんの解釈には深く頷きました。そうですよ、木星と水星が美しいというのは、「神智学者」レオが地上的な仕事を終えたことを示しているように見えますね。べシーもそんなことを強調しています。
 僕から見ると双子座でデトリメント(*19)の木星は、地上的なしがらみのために書き直さなければいけなかった占星術テクストの執筆ってことかもしれません。
 そんな事を思っていると、レオの「病気」のルーラーである火星は、「ダイモーンのロット」(パート・オブ・スピリット<*20>)と正確に合なんです。今気がついたのだけれど……。

いけだ 木星と水星が神智学的というのは素晴らしくぴったりきますね。そして、火星がパート・オブ・スピリットと合!!! チャートとは、なんと多角的に地上を映し出すものなのでしょう。
 これだから占星術はやめられない。そして、これだから予言的アプローチは、人の死や人生を前にしてほとんど意味を持たないのだと感じ入ります。
これについて話し出すと私が今、ホラリーで直面している限界とジレンマの話になり、それは朝までコースなのでもうやめますけども(笑)。

 ほんとですね、朝までコースだ……(すっかり深夜)。最後にルイスの本に戻ると、読み方のルールを丁寧に説明していただいて。ただ、誤解しちゃいけないのは、「ルールに忠実に」と思い込み過ぎるとかえってシンボルを殺してしまうことあるかもしれない、ということですよね。ルイスも強調していますが、シンボルに導かれ、シンボルのリードに従うことがホラリーの面白さを味わう最大のポイントなんだと思います。
 いけださん、ありがとうございました、またおしゃべりしましょー!



構成:鏡リュウジ


文中に*を付した言葉や人名などについては、別途注釈テキストのみのページ(『ホラリー占星術-入門と実践-』刊行記念対談(鏡リュウジ氏&いけだ笑みさん)の注釈ページ)を設けました。ご参照ください。
https://note.com/komaweb20/n/nbfea3a34630d 


プロフィール
鏡リュウジ…占星術研究家、翻訳家。国際基督教大学修士課程修了。10代のころより占星術、秘教などをめぐりさまざまなメディアで活躍、日本における「占い」のイメージを一新、30年以上にわたって圧倒的支持を受ける。
女性誌やWEBを中心としたポップな占星術からアカデミックな書物の翻訳やシンポジウムでの講演まで幅広く活動。英国、オーストラリアでの学会でも講演するなど国際的にも知られる。著書に『占星術の文化誌』『占星術の教科書』(原書房)『タロットの秘密』(講談社現代新書)、訳書にリズ・グリーン『サターン』マギー・ハイド『ユングと占星術』(青土社)、グリーン『占星術とユング心理学』など多数。

いけだ笑み……1968年7月11日大阪府生まれ。占星術研究家。宇宙のからくりと人間存在の謎について、物心ついた頃から考え続け、古代占星術と錬金術思想にたどりつく。1998年に松村潔氏に師事。1999年頃から占星術のプロとしての活動を開始。主に東京都内での講師活動、研究会主催、雑誌への執筆に携わる。ホラリー占星術の研究と実践に取り組みながら、ヨーガとアーユルベーダ哲学に没頭中。著書に『基本の「き」目からウロコの西洋占星術入門』『続 基本の「き」目からウロコの西洋占星術入門』(ともに説話社)がある。

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『ホラリー占星術-入門と実践-』アンソニー・ルイス著 鏡リュウジ監修訳
2020年8月31日 発売
A5判/上製 480ページ
ISBN 978-4-909646-32-3
価格  4,180円(税込)

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