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【おすすめ本】エンド・オブ・ライフ〈医師はプロデューサー⁈「命の閉じ方」のレッスン〉

著者:佐々 涼子
発行所:集英社インターナショナル

ノンフィクション作家の佐々涼子さんが2013年から2019年まで在宅医療で出会った人々について綴られた一冊

2017年に親友をがんで亡くしてから、私は「いかに死ぬか」ということは「いかに生きるか」をみつけることになるとずっと思っていた

そして、内側でもやもやしていたものがこの一冊によって晴れたように感じた。

著者の佐々さんが在宅医療についての本を共に出版しようとした森山文則氏、彼は、訪問看護師であり、自らががん患者の一人であった。
印象的だったのは、佐々さんが森山氏に呼び出され行くと、執筆についての話ではなく、とりとめもない話で終わってしまうという日々を重ねていた。もうじき、彼と話ができなくなってしまうというときに、佐々さんは「本について」を話題に出した。そこで、彼は『在宅医療の在り方』をずっとみせてきたという。私も、そこで「あ、」と気づかされた。

在宅医療とは、病院でするようなことを自宅でするというイメージがあったが、そうではない。その人が、その人らしく日々を過ごしたいように過ごすために在宅医療という道があるのだ。

そして、そのために大切なことは「残された時間をどのように生きたいか。」そして、自分の価値観や信じていること、大切にしたいことなどを自分でしっかりみつめ、それを周りの人とシェアをすること。
それが、私がこのレッスン(本)から学んだ一番大きな事だ。

がんの宣告を受けた親友が「命の期限」を医師に尋ねた。その時彼女は40歳代に入ったばかりだった。医師のその時の回答は、「それは、医者にも本当のところ分からないものだ。それよりも、春を迎えられた。夏を迎えられた。というように病気と闘いながら過ごしていきましょう。」だった。
その時、もし、3ヵ月といわれたらマインドにそれがインプットされ3ヵ月で終止符を打つように生きてしまうと思うから、あえて言わないでいてくれた先生に感謝した。それと同時に、本当は医師といえども分からないものなんだということを思っていた。しかし、この本を読んで、やはりこれはその医師の優しさであったのだと理解した。確実なことはわからないにしても、やはり察しはつくものだろう。

その余命を聞いて、絶望してしまう人、希望を持つ人反応は人それぞれだろう。そして私は、その反応というのは、長さに比例するのではなくその人の性格、受け取り方によるのだろうと思う。だからこそ、告知をする、しない、する場合は、どのようにするのかなど、医師がどれだけその患者を知り、理解しているか、そして信頼関係が築けているかということがとても大切だと感じる。

その人にとってもっとも大切な残り時間をちゃんと考えてくれる医師と会うのと会わないのでは全然違う

しかし、実際に大きな病院や大学病院のような現場を見れば、それだけの余裕が医師にあるかと言えば「NO」と言わざるを得ない現状があるのではないか。どんなに、志高い医師でも、患者の多さや限りある時間の中で向き合うということは、困難を極めるように思われる。患者に対して人として丁寧に向き合うことと、治療をしていくという行為はイコールではない。それは、悲しいけれど現実だ。だからこそ、この本に記されていた渡辺西賀茂診療所の方針やスタッフの方々の温かさは素晴らしいと思い、このような医療の場が多くなればいいなと思った。

臨終間際に意識をどの程度たもつようにするかも、最終的には医師の判断が影響します。

森山氏が『在宅医療の在り方』をずっとみせてきたという点で、病を患って、日を追うごとにひとつひとつできないことが増えていく。むなしさと悲しさ、怒りなどいろいろな感情にさいなまれ、「生きていても誰の役にも立たない」「生きていても意味がない」と病が進むにつれて誰もが思うことだろう。しかし、森山氏がずっとみせてきたという「生きざま」「あるがままを受け入れる」という姿勢、それこそが人生において本当に大切なことで、ただ「居てくれる」それだけで十分なのだ大いに生きている意味があるのだということを知る。

病を患っていなくても、誰しも自分の人生に意味があるのかと思いとどまることがある。そして、意味を持たせるために色々なことをしてみたりする。心からそうしたいのであれば何の問題もない。しかし、気づくと本心とは違うことをしていることもあったりする。自分をごまかして、何かになったところで、自分の人生を肯定することはできない。いつか、その化けの皮は剝がれるのだ。ずっとずっとごまかし続けると、その皮をはがされるような出来事がおきる。

森山さんがなくなって以来、彼が自分の心に忠実に生きたように、私も、生きたいところに行き、会いたい人に会い、食べたいものを食べ、自分の身体を大切にするように心がけている。

あとがきにこのように記されている。生きるって本当はとてもシンプル。心を満たすように、心からの幸福を、自分の幸福を願い実行する。そういうことなのだろうと思う。







#読書の秋2021  #エンド・オブ・ライフ

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