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P&Gのフレームワークから考えるSaaSのマーケティング戦略

こんにちは。株式会社マネーフォワードで、クラウド会計事業の責任者をしている駒口です。

P&Gで9年ほどマーケティングをしていた関係で「P&G出身者ってSaaS業界で活躍できるの?」「P&Gのマーケティングフレームワークって使えるの?」と聞かれることが増えてきたので、noteにまとめることにしました。SaaSのマーケティングに興味がある方や、「P&GのマーケってBtoBでも役にたつの?」と疑問に思っている方に読んでいただけるとうれしいです!

自己紹介
新卒からP&Gの日本とシンガポール支社で働いた後、2018年にマネーフォワ―ドに入社しました。マネーフォワードでは、リブランディングや大型プロモーションを担当し、ここ1年は主にBtoB向けSaaSプロダクトであるクラウド会計事業を成長させる役割を担っています。

・2010年:P&Gジャパンに入社
マーケティング本部で新規プロダクトのローンチや、既存プロダクトのマーケティングを通じたグロースを担当
・2012年:P&G International Operations(シンガポール)に転籍
日本をはじめ、北米、ヨーロッパ、ASEANにおける複数ブランドのブランドマネジメントを担当
・2018年:マネーフォワードに入社
入社後、全社のリブランディングや大型プロモーション等を担当。現在は「マネーフォワード クラウド会計」の事業責任者として主にマーケティングやグロースを担当。

そもそもP&Gのマーケティングの考え方って、SaaSビジネスに役立つの?

結論から言うとかなり相性がよいと思います。
P&Gではマーケティング部が売上と利益に責任をもって販売戦略、マーケティング戦略、投資の最適化などを主導していきます。
これは「当たるもマーケ当たらぬもマーケ」的なPR的側面がメインに来るビジネスと違い、LTV/CACをコントロールしながらグロース施策を練っていくSaaSの考え方と非常に近いものがあります。

実際に現在マネーフォワードクラウドのSMB領域では月間のユーザー増加数が前年比3倍以上で成長しています。では、具体的にどのような考え方でSaaSのグロース戦略を作っているのか説明していきます!

1. ランドスケープアセスメント (取り巻く環境理解)を行う

駒口さん_1.ランドスケープアセスメント

月5000円で通い放題の定食屋さんがありました。
この店主は、もっと繁盛させるためにチラシを配ることにしました。お店の前に立って配ってみましたが、お客さんが増えません。
そこで、チラシのデザインに人気のメニューを大きく載せて再びお店の前で配ってみました。それでもちっとも増えません。
なので今度はもっと目立つように紙の色を白からピンクに変えてみました。でもやっぱり増えませんでした。

いきなりですが、このような話があったらどう思うでしょう?

「隣の定食屋、コンビニ、自宅、どこで食べてる人が対象なの?」「狙いはサラリーマン?ファミリー層?」「サブスク型なら店の前で配るより、マンションにポストした方が良くない?」

などなどいろんな疑問が湧いてくると思います。ただ定食屋さんの話だったら冷静になれる私たちも、日々の仕事ではこの店主と同じ罠にはまることがよくあります。

「バナーのCPAがこのクリエイティブの方がいい。」「こちらのほうがCVRが高かった。」など、ABテストの結果をバラバラの結果を積み上げていったり。。。背景の核となる部分がおざなりになっていると、極値解を導いているだけということになりかねません。

(A~Cのテストだと、Aがベストに見える。が、じつは最良解は他にある)駒口さん_最良解

最良解を得るためには今のビジネスを取り巻く環境を理解することが非常に重要です。
そこで、まずはランドスケープアセスメント(取り巻く環境の理解)を行ってから戦略立案を行います。現在の利用者の状況、ポテンシャルユーザーのありか、競合ユーザーの状況、スイッチャーの割合等々を定量的に理解する工程ですね。

一例として、マネーフォワードでは下記のデータを定期的に測定してマーケティング戦略の構築に利用しています。

①ブランド有料利用者数および層
②現在ブランド利用者数および層(無料含む)
③ブランド利用経験者数および層
④ブランド認知未利用者数および層
⑤カテゴリ認知者数および層
⑥非認知者数および層

2. インサイト分析を行う

駒口さん_2.インサイト分析を行う

ランドスケープを理解してターゲットとなるユーザーが定まったら、そのユーザーの持つインサイトを満足させることがカギになります。
(実際には定量調査のみで決まることはなく、定量と定性調査を繰り返しながら”セグメントのサイズ”と”勝ち筋”を捉えて定めていきます。)

ここにも罠があります。それは、「自分が誇りに思うこととユーザーにとって価値があることは違う」ということです。
さきの定食屋の店主は、仕入れにこだわっていてとなりの定食屋に比べて2倍も脂の乗ったサンマを使っていることを優位性と捉えているかもしれません。
でも忙しいサラリーマンのお客さんは、サンマの味よりもお昼時に絶対に入れるお店であるということをありがたがっているかもしれません。あるいは、月10回通えばコンビニと同じ値段でオフィス以外でランチができることがうれしいのかもしれないということです。

また、よく「競合に対する差別化」が成長のカギだ、というのはよく言われる話ですが、「競合」=「もっとも類似したサービス」とは限らないという点にも注意が必要です。

具体的な例として、布用消臭剤ファブリーズの話があります。

15年ほど前、ファブリーズがカテゴリを席捲していたときに競合の花王がリセッシュという競合製品を投入して切り崩しを図りました。
当時、P&Gはその対抗策として「消臭効果がより優れていることを宣伝」したり、「新しい香りの製品を投入」したりということで守りきろうとしました。
その結果、ファブリーズはめでたくシェアを守りました。が、カテゴリ自体の消費量が減少し、売上が大きく下がるという事態に陥りました。

これは、カテゴリ普及率がまだ低い中、最重要視すべきは既存ユーザーの流出を防ぐことではなかった、そしてユーザーインサイトも「より消臭力の優れている製品を選びたい」ではなかったために起きた問題でした。
その後ファブリーズは、競合を「きれいにすることをあきらめてしまう気持ち」と再定義し、「洗えない布製品も洗濯したように気持ちよく」というコンセプトでユーザーの支持を得て、当時の何倍もの売上を実現しています。

3. KBDを定める

駒口さん_3.KBDを定める

KBD=Key Business Driverの略で、P&Gでは良く「このブランドのKBDは何なの?」「今期は何をKBDにおいてやっていこうか。」のような会話がなされます。これだけ話すと「要はKPIでしょ?うちでも日々チェックしてます。」という声が聞こえてきそうですが、これは半分正解で半分間違いです。

よく「KPIはこの10個を見てます」のような話がありますが、一つの部署でKPIを5個も10個もトラックしてその達成率によってアクションしていると、もぐら叩き状態になるのがオチです。

定食屋さんで、一見さんの来店数、サブスクコース申し込み率、サラリーマン客増加率、ファミリー層増加率、来店頻度、回転率、完食率、リテンション率、などを全部目標管理して未達のものを見つけてはアクションを取っていると、その場しのぎで本質から離れていってしまう感じがしますよね。

「KBDを定める」というのは、「捨て去るKPIを決める」のとほぼ同義です。上記の戦略とリソースから、どのKPIを優先して、どれを捨て去るかをシビアに判断していくことが重要です。

4. WPI Winを実現する

駒口さん_4.WPI Winを実現する

これは私がP&Gのもっとも好きな部分で、かつSaaSの考え方とも非常に相性がいいものです。

WPI=Weighted Purchase Intentの略で、日本語に訳すと「製品使用後の次回購買意向」のことです。つまり、使った後にお客さんがまた買いたいと思うか、その意向が競合製品よりも高いかという指標のことです。

特に私が所属した洗剤カテゴリのトップは、使用後に顧客がハッピーにならないものに生産コストやマーケティングコストをかけるのは無意味だといって「WPI Win」の製品以外は、絶対に市場に出さないということを徹底していました。(おかげで短期的には売れるであろう製品の発売を中止して数十億円の損失を出したりしてました。)
この考え方はSaaSでも非常に重要で、WPI Winの製品かどうかが如実にID登録後の有料化率や、リテンション率に関わってきます。

リテンション率がSaaSビジネスのグロースにとってクリティカルだというのは周知の事実ですが、カテゴリ購買頻度の高い洗剤も、常に顧客と向き合うSaaSも「アコギな商売は許されない。」という点で共通してるんですね。

マネーフォワードも、User Focusというバリューを大切に、日々有料化率とリテンション率、およびその理由を注視しながらプロダクト改善に製販一体で取り組んでいます。

5. とはいえ、消費財とSaaSは違う

ここまで話すと、「消費財もSaaSもうまくいく、めちゃ万能。」みたいな感じに聞こえるかもしれませんが、当然ながらまったく違う部分も多々あります。

よく言われるのは、BtoCとBtoBだから違うでしょという話ですが、実は消費財メーカーは販売チャネルをほぼ小売店に依存しているため、BtoBtoCの要素が強く、複数のステークホルダーに対するアプローチ等は結構似ているところもあります。

一番違う点は、HOWの幅です。

世帯浸透率が9割を超えるような日用消費財カテゴリで40%のシェアを取ろうとするとどうやっても40-60代の主婦がメインターゲットになるわけで、このマス層が低関与型商品を買う上で一番効果的なチャネルとしては、いまだにテレビCMと店頭を超えるものはないのです。
実際、私も担当ブランドの年数十億円ある広告予算の90%以上は店頭とTVCMに使用していました。

一方でマネーフォワードのようなSaaSでは、販売チャネルは自分たちで持つこともパートナーシップを組むこともできますし、ターゲット層との接点の持ち方も無料・有料ユーザーとの継続的な接点が持てることも含めて圧倒的に幅が広いです。

またマネ―フォワードの特徴として、認知形成からユーザー獲得、カスタマーサクセスからアップセルまでをひとつの組織で担うので、各領域のプロフェッショナル達が集まり、お互いの強みを活かしながら、ひとつの目標に向かって突き進むことができます。

さまざまな異なるスキルを持ったメンバーが一つの目標に向かってチームとして結束しているのが本当にすばらしいなと日々感じながら仕事をしています。

最後に

ということで最後に一番大事なことをお伝えしたいわけですが、、、
マネーフォワードでは絶賛マーケター募集中です!

マネーフォワードは、事業戦略策定、広告運用、SEO、オウンドメディア、LPO、Webディレクション、イベントマーケ、カスタマーサクセスを担うメンバーなど多様なプロフェッショナル人材が事業成長のためにワイワイ働いています。

<マーケ部で活躍しているメンバーのnote一例>

そして会社の成長スピードが非常に早く、日々新たな成長フェーズ、事業領域が生み出されているので、そういった方々が活躍する土壌が揃っています!
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皆さんのご応募を心よりお待ちしております!

Illustration by Freepik Storyset: https://storyset.com/

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