庭
朝、左の足先がくすぐったくて目が覚めると、
ウヨウヨした触角がみえた。
(心の中)ベンベン!!!!
便所コオロギが私の足で朝日を浴びている。
小学校高学年の頃のできごと。
汚部屋に住んでいた私でも、
さすがに気持ち悪く感じたのをよく覚えている。
母が離婚して実家暮らしになり、
そこに私もくっついてきた格好。
思えばその頃から母の精神状態は不安定だったのかもしれない。
部屋のこたつを持ち上げれば
じゅうたんに付いたこたつの足跡に
わらじむしがウヨウヨ。
仏間には母がカードで買った洋服の山。
のちに、よくテレビでみるような借金取りが家にやってくるとは
母も思ってはいなかっただろう。
いつか自分の家を建てたい!
そして自分の庭で思いっきり遊んで、
畑で野菜を作るんだ!
子どもの頃の不快な記憶が
私を駆り立てる。
少し無理をして建てた今の家には
希望通りの庭と畑がある。
夏は子どもと野菜の収穫をし、
通年、庭の季節の移ろいを楽しむ。
アカツメクサの花の蜜を子どもと吸ったり、
シロツメクサの冠を作ったり。
つゆ草の花をつぶして色水を作ることもある。
子どもの頃にした雑草遊びを子どもに教えるのが
今の私の楽しみ。
汚部屋に住んだあの頃にはもう戻りたくないけど、
外遊びの記憶は大切に引き継いでいきたい。
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