第五世界の兆し[創作]3
3 始まり
27才の頃、何にも成れずただ時間だけが過ぎていた。不安と焦りと自分の思い通りにはならない現実への怒りで苦しんでいた。積み重らない経験。つまらない人間関係。まずニートだった。何もしなくても親に借りが増える日本の税金制度を恨んだ。逃避するために、実家にあるパソコンでスピリチュアル的なサイトを見て「ありがとう」をずっと念じてみたり、非現実的な宇宙人を真剣に信じた。少しして職業訓練でHP作成を習いに通ってみた。そして自分の一番苦手な分野のアルバイトを始めた。
そんな時に、彼Jさんと知り合ったのだ。インターネットの出会い系サイトだった。Jさんとのやり取りは、とても楽しく勝手に私の文章から、理想の女性なるものを想像して会いたがってくれた。遠方で会うつもりは無かったが、彼は方位に詳しかったので、これまた遠方に居た姉が関心を持ち、先に会ったのだ。初めて彼を見た時、中学時代に一目惚れをした男の子に似ていると瞬間的に思った。職業は、お寺の副住職でお坊さんだった。
「貴方の住んでいる場所から、ここは吉方位になりますよ。毎月良い日に祐気取りを一年くらいしに来ると仕事運が上昇します。」
お互い現状に満足していないところ、ありのままの自分を認めないところ、親に不満がある、同じ血液型、スポーツ観戦が嫌い、異性に不信感と理想を抱いている、スピリチュアルに興味がある、姉妹と兄弟でどちらも下であること、共通点がいくつもあった。彼の表の顔は、穏やかで礼儀作法が行き届き、何事もそつなくこなしているようで、抜けている部分に愛嬌がある。人好きするような好人物だ。裏の顔は、居場所が無く不満を抱えたチンピラのような危うさがあった。私は好奇心から、彼の元に通った。
お互いエネルギーとか気、潜在意識や集合的無意識など掴み所のない曖昧な部分に興味を持っていた。私は普遍的無意識にアクセスして、今までにない創作をしてみたいと考えていた。彼は、特別な能力を得たいと望んでいたようで、ビジネス仏教に疑問を持ち、僧侶としてのあるべき姿を模索しているようだった。
私からしたら、修行を積んできたお坊さんが疑問を持つに至った仏教とは一体どういうものなのか、本当の姿を知りたいと思うようになった。