火を使う生き方 ―波打つ玄関マット事件―

(読了目安7分)

人は「未知のもの」に出合うと、不安や恐怖を感じるようにできています。
それが危険なものだった場合、自分の命が脅かされることがあるからです。
それは「防衛本能」と呼ばれ、「未知のものに対しては、まず疑う」というのが人間として自然な反応です。


未知のものがなんなのか理解することができれば、安心や成長を手に入れることができ、もし自分に役に立つものなら、利用することもできます。


しかし未知のものを見て不安だけが増幅されてしまうと、未知のものから逃げることしか考えられなくなり、ただ「怖い」という思考だけが強くなってしまいます。


その一例として、以前「波打つ玄関マット事件(マスターが勝手に付けた名前です)がありました。


既に削除されているのか、探しても動画は見つかりませんが、玄関マットの下に空気が入り込み、マットが生きているようにバタバタ動く現象です。
これは実験でも再現できることで、心霊現象ではありません。


以前、玄関マットが波打つ現象を「心霊現象」だと信じた10代のM子さんがいました。
ツイッターでその動画が話題になったんですが、ある条件の組み合わせで再現できる現象で、当時中学生の息子に動画を見せたところ、数十秒考えてその仕組みがわかるほど単純なものでした。


しかし、その現象について続々とツイッターに寄せられるメッセージを読むと、「心霊現象」だと思っている人が多くいることに驚きました。
もちろんそれを「心霊現象」にして騒ぎたい人が多くいたのも事実だと思います。


ツイッターに動画をアップしたM子さんも「心霊現象」だと信じ、自分で実験をすることなく反論に対して反論を繰り返していました。
あのままでは「本質を知らないおばさん」になり、20年後には、同じような考えの10代の女性たちを集めて商売をしてしまうかもしれません。


マスターの想像ですが、動画にある現象を心霊現象だと信じる人たちは、未知の現象に驚いてしまい、不安になったんだと思います。
しかし不安なまま「心霊現象」と認定したら、得るものはありません。
実際は、M子さんなりにその現象に向き合っていて、「事故物件だから」という結論に達したようですが、恐怖のあまり引っ越しも検討していたようでした。


M子さんは、なにかの事情で親元から離れ、赤ちゃんがいる10代の仲間たちと暮らしていたようなんです。
しかしそんな状況では先人たちの知恵を得ることはできませんから、彼女たち10代女子の考え方が中心になった生活になることは間違いなく、一緒に住んでいる赤ちゃんも、将来は心霊現象を信じる大人になると思います。
彼女の周りには、物事の仕組みを教えてくれる大人がいないのかもしれませんし、いても、話を聞きたくないのかもしれません。


「波打つ玄関マットを心霊現象だと解釈し、助言をくれる人がいない環境か、助言を無視し、信じたいことを信じようとする10代の女性」・・・

M子さんにどんな未来が待っているのか想像してみてください。

もうひとつ、

「人は未知のものに対して不安になる(理解すれば世界が広がる)」

という典型的な例についてです。


この話は、「自分」という未知のものに向き合うときのヒントにしてください。
「自分の未知な部分を理解し、上手に利用したとき」と「自分の未知な部分と向き合わず、逃げた場合」、前者がどれだけ素晴らしい人生になり、社会貢献できるかわかると思います。


「人は未知のものに対して不安になる(理解すれば世界が広がる)」


この典型例・・・

それは「火」です。


動物の多くは火を見て怖がりますよね。
人間も当初は怖がっていたはずですが、勇気や好奇心の強い人が徐々に火に近づき、やがて人間だけが火を扱うことを覚え、その後文明が発展しました。


火がなければ鉄を溶かすことができませんし、効率的に除菌もできませんよね。
「神の怒り」だと信じて火を恐れていたら、人類はなにも作り出すことができず、他の動物と同じようにまだ洞窟の中で生活していたかもしれません。


「火」に代表されるように、「未知のもの」を理解すると、ものごとが大きく前進することがほとんどです。
それは未知の「もの」だけでなく、未知の「考え方」にも言えることです。
たとえば、赤ちゃんは、本能のまま「愛を欲しがる生き方」をしています。
一方、大人にも「愛を欲しがる生き方」をしている人がいますが、彼らは、「愛をそそぐ生き方」を横目で見ながらも、怖くて実践できないんです。


愛を「欲しがる」生き方は、言ってみれば本能のまま火を恐れる生き方です。
逆に愛を「そそぐ」生き方は、勇気を出して火を理解し、利用する生き方です。


みなさんは、人類が火を使う生き方を選んでよかったと感じているはずです。
同じように、現在愛をもらおうとしている人たちも、勇気を出して愛をそそぐ生き方を実践すれば、それがよかったと思える時がきます。


上の話をまとめると、

愛をもらおうとする生き方→火を使わない生き方
(火は神の怒りだと信じ、他の動物と同じ洞窟の生活)

愛をそそぐ生き方→火を使う生き方

(勇気を出して行動し、成長を続ける豊かな生活)

ということです。


繰り返しますが、人類が火を使わない生き方を選んだ場合、現在もまだ洞窟の生活だったということは想像できると思います。
洞窟の生活と、現代の生活を比較してみてください。
勇気を出して火と向き合った人類の文明が現在の人類です。
勇気を出して自分と向き合ったあなたの人生がどうなるか、明るい未来が想像できるはずです。


現在「火は神の怒り」だと不安になり、火を使わない生き方をしている人は、勇気を出して火を使う生き方を選んでみてください。


つまり、

「これまで信じてきたものを見つめ直し、本質を知る努力をする」

「恐れていた自分との対話をしてみる」

「未知の自分と向き合ってみる」

ということです。


初めはきっと「ヤケド」の連続です。
しかし続ければ、長く愛されていることに気付きます。




◎まとめ


長く愛されない理由のひとつは「妄信」です。
冒頭の「心霊現象を信じるM子さん」は、「探究」することを忘れ、火を使わない生き方を選ぶ人類と同じ「妄信」の道を歩もうとしています。
人類の歴史にそんなグループがあってもいいと思いますが、愛は妄信ではなく探究から生まれます。
マスターは、火を恐れず、火を使う生き方を選ぶことが愛だと思います。



余談:娘と火

マスターはいつも料理をしていますから、ガスコンロの火なら怖くありません。
薪ストーブの火も、ある程度仲良くコントロールできます。
娘もそんなマスターをいつも見ていましたから、火は怖くないはずなんです。
しかし小学3年生ごろ、炒め物で油がはねて熱い思いをしたときから、しばらくの間は炒め物を怖がるようになりました。
未知の「火や油」に挑もうとして、一度失敗したわけです。


しかし5年生になったとき、「料理をしたい」という気持ちが強くなり、もう一度炒め物に挑戦しました。
すると、今度は気持ちよくできたんです。
以前より身体が大きくなり、腕が長くなったり、視点が火元から離れて安心できたり、フライパンもしっかりあおれるようになったため、「自分でコントロールできる」という自信がついたのかもしれません。
素晴らしい成長でした。


生き物は、本能的に火を怖がるようになっていますが、親が平気な顔をして火と向き合っていれば、それは子どもにも伝わり、いつか子どもも火と向き合えるようになります。
逆に、親が火を怖がっていたら、子どももずっと火を怖がります。
仮にみなさんの親がストレスの原因を「外側」に求める人なら、みなさんも同じ考えで生きてきたはずです。
言ってみれば、火を怖がる親と一緒に過ごし、自分も火を怖がる人になったということです。
しかし、火から逃げ回っていたら成長はありません。
一時火や油から逃げていた娘は、「料理をしたい」という願いをかなえるために、もう一度火や油という恐怖に立ち向かい、「料理は怖くない、料理楽しいじゃん!」と理解できました。


過去、自分と向き合って傷つき倒れた人も、「平和に生きたい」という願いをかなえたいなら、もう一度自分と向き合う恐怖に立ち向かってみてください。
以前より成長したあなたは、「人生は怖くない、人生、楽しいじゃん!」と理解できるかもしれません。


その後、娘は高校に進学し、誰から言われることもなく、朝6時過ぎからスマホを片手に自分のお弁当作りをすることがあります。

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