【連載】家族会議『本人には見えない丸見えの感情』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議12日目#8|本人には見えない丸見えの感情
――わたしから見て伯父(父方)は、上から目線だ。というより、親族全体から「上」意識を感じる。もちろん父もそうなのだが、末っ子だった父は、家族内では「下」の立場だった。
当然、嫌な思いをしたこともあるだろう。
昨日のブログに書いた会話でも、父は兄に対する反発心や、見下し感情をあらわにしていた。本人の前では従順な弟を演じているものの、心の中では従う気などまったくない。
長男に生まれただけで偉そうにする兄に、末っ子に生まれただけで従わなければならない父は、理不尽さを感じていたはずだ。
だから「上から目線」がどういうものなのか、「下」の人がどんな思いをするのか、父は知っているはずである。認めないけど。
わたし:
こないだは、「伯父ちゃんって上から目線がある人だと思うんだけど嫌じゃなかったの?」って聞いたら「当たり前だったから」って「兄貴だから」って言ってたけど、あるよね?嫌なことも。
父:
嫌なことって言われりゃ、一つ取り上げれば嫌なことなのかもしれないけど。総合判断するとこれ、嫌だということよりもね、やむを得ないなっていうふうになっちゃうわけよ。
わたし:
総合判断するのか。
父:
うん。ひとつひとつ、こんなの取り上げたらきりがない。
――細かい具体例を取り上げて説明しようとすると、「ひとつひとつ取り上げたらきりがない」と言って取り合わないのが父だ。
だけど心の中では、ひとつひとつの事例を根に持っている。実際には、総合判断などできていない。むしろひとつひとつの嫌な事例を集めて判断した結果、兄にネガティブな感情を持っているのが父だ。
母:
そうだけど。やっぱ嫌だったことは嫌だったのね?奥を見ると本当は嫌だった。でもそんなこと言ってられないなっていうのが、その後に来た。だけど、一番の底はやっぱりちょっと嫌だった。
父:
根っこの方はやっぱり高校に行きたいっていうのがあって
わたし:
そこ。そこが大事って感じ。
父:
そうなの?
わたし:
そっちの気持ち!
父:
だけど、この気持ちっていうか、行けるわけないじゃんと。
わたし:
いや、だから、そうやって気持ち抑え込んだってこと。確かにそれは当たり前だし、仕方なかったことなんだけど、その気持ちってさ、いつまでも残ってたりするわけじゃん?するわけよ。押し込めてるから。
母:
だからこそ、中学校で就職するか、高校に行くかのことをお父さん、ずっと言ってるよね?
父:
兄貴に対してじゃなくて親に対して。
母:
違う私達に
父:
だから親父がこういう(高校に行かせようという)決断を下したから、高校に行けたって。
母:
だけど(就職先を決めてきた)お兄さんに対してはちょっと、嫌な感じしてたわけでしょ?
父:
やっぱりね。だけど長男の立場を、俺だってそうするかもしれない。
母:
そうだろうけど。そうだろうけど、嫌だったっていうのは確かにあるわけだよね。
父:
そりゃそうだけどさ。
母:
そこんとこ。嫌々だったってのは言ったっていいじゃない今。別に何も変えられないよ。変えられないけど、本当は嫌だったということを言っていいんじゃない?
父:
はい、嫌だった。けども
母:
「けども」はお兄さんの立場を考えると「けども」になるわけでしょ?お兄さんとか家の経済状況を考えると「けども」になる
父:
うん
母:
けど一番最初に感じたことは嫌って…
わたし:
何か、「このくそ」って思ってても好きでもいいし、感謝もしていい。
なんかお父さんの今までの話だと、「このくそ」は隠す。隠すっていうか抑えて、感謝とかにスポットを当てる。それも素晴らしいことなんだけど、結局、ここ(心の奥)に押し込めてる「くそ」っていう気持ちが、変な言い方とか歪みで、気持ち悪く伝わってくるって感じなんだよね。
なんか本音が伝わってこない。無理してる感じに聞こえてきちゃうの。
だから話すときは、「もうあんときは、なんで俺が兄貴に言われなきゃいけねんだよって思ったけど、お父さんが救ってくれた(高校に行かせてくれた)し、兄貴も立場を考えれば仕方なかったよな」って、これ、全部言ってほしいって感じ。そうすると、すごく自然にお父さんの気持ちが伝わってくるっていう感じかな。
父:
そういうこと
わたし:
なんか無理してる感じに聞こえちゃうわけよ。結局。だから隠さないのが大事っていうか。なんかナチュラル感なく伝わってきちゃうんだよね。すごいそういうの(ネガティブな気持ち)を押し込めて感謝だけしてるように。なんかもう美化しちゃってる感じ。だから全部言ってって、いう感じ。
父:
わかりました。
わたし:
お父さんが感じてないと言えないんだけどね。
父:
どれだけ言えるかわかんないけど
わたし:
うん。だからそういうのを聞いてって、「本当はこうだったんじゃないの?」みたいなところを出してもらうっていうことかな。
だからおばあちゃんのこととかもさ、してもらいたかったことと良かったことと、いろいろ出してもらうのは、どっちもあっていいっていうか、どっちもある方が普通だから。感謝する言葉ばっかり聞いてると違和感を感じちゃう。押し込めてる気持ちのほうが、聞いてるほうは気になっちゃうみたいな感じだよね。本当は何を隠してるんだろう?みたいな
父:
隠すとかそういうの全くなくてさ。
わたし:
うん。お父さんは多分、ナチュラルに蓋してる気持ちがあって。ネガティブな気持ちを蓋した分、感謝が倍になってる感じっていうか。なんかちょっと不自然感があるわけ。伝えるときに。
隠さなきゃ隠さなきゃって思うから、より良く伝えなきゃみたいに、逆に振れるみたいな感じかな。
父:
よくわかんない。隠さなきゃってまず思ってないし。
わたし:
思ってないと思う。無意識だから。隠さなきゃっていうか、押し込める。
母:
瞬間的にっていうか、無意識にそういう、癖みたいになっちゃって。
父:
あえて言うなら癖だろうな。意識してないもん全然。
――ここで、自分の本音をじっくり考えてくれれば先に進むのだけど、「意識してないもん全然」で終わり。
奥底に押し込んでいる気持ちがないならそれでいい。
だけど、ある。
わたしたちが確信できるほど、だだ洩れている。
気づいていないのは本人だけ。まるで裸の王様だ。
- 今日はここまで -
父はネガティブな感情を口にしない。かたくなに。
だけど話の端々に漏れ出ている。
その漏れ出てくる気持ちに寄り添って、味方になって、共感して、インナーチャイルドを癒してあげたい。
なのに、「そんな気持ちはない」と言ってはねのけられてしまう。
もどかしい。
丸見えなのに。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
この記事が参加している募集
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!