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間違え続けてヒッチハイクした話

大学生の頃に予期せぬヒッチハイクをしたことがある。たぶん、ヒッチハイクは計画的に行うのが鉄板だと思うが僕の場合は結果的にヒッチハイクをしたのです。

■大学3回生のゼミ合宿(本当はただの遊び)で福岡県に行くことになったので、「どうせ行くなら九州もついでに周るか!」とゼミの友逹と青春18切符で鹿児島県の桜島まで行くことにした。

2泊3日の合宿は順調に終わり、他のメンバーは帰る中、僕と友達は博多に残って電車に乗る。

■その日の最大で移動できる距離が博多〜熊本の人吉市だったので人吉市のカラオケに一泊することにした。180キロ以上の移動だったけど、田舎の1両編成の電車に初めて乗車してはしゃいでいたら時間は過ぎていった。

到着すると小雨だった。コロッケ倶楽部という変な名前のカラオケ屋にフリータイムで入り、店の都合上、朝5時くらいに店を出ないといけなかった。

■ここで、明日の予定を確認する。

鹿児島に宿をとっているので最短時間で鹿児島に向かうことは必須だが、電車の始発までは時間があることに気づいた。

店を出るのが5時に対して、始発が10時ごろ。その時間をどうして過ごすかを相談した結果、1つは温泉に入ること。2つ目はヒッチハイクをすることにした。

◆電車の時間までヒッチハイクをして、成功したら乗ればいいし、失敗しても18切符があるので移動はできる。という最強の作戦、思いついたとき自分の脳が震えた。

そうして、まずは温泉に向かって汗を流した。熊本の激シブ温泉に浸かって疲れを癒した。

渋すぎる、激シブ。俳優で例えたら舘ひろし級。


■温泉を出ても、まだ始発の電車までは2時間以上あった。そこからお遊びヒッチハイクをする。

乗れなくて当たり前という前提でしているので、僕が持っていたA4のノートにマジックで太く鹿児島方面と書いただけのなんとも簡素なつくり。

当然、こんなものでは見てくれる人はたまにいても乗せてくれる人はいない。ヒッチハイク自体、どこで立ってするものなのかもわからずに時間が過ぎていった。

友達は楽天的な正確なので「俺、もっと余裕で乗れるもんやと思ってたわ」と言っていた。

もう時間が限界だったので駅に向かうと、なにか様子がおかしい。明らかに人が右往左往している。ものすごく悪い予感がした。

駅員に聞くと、前日の雨で電車が止まっていて再開の見通しが立たないというのです。

僕たちは「電車が止まる」なんてことは全く想定していない。小雨程度の雨だったのでそんなにすぐ止まるとは思っていなかった。

パニック

圧倒的にパニックである。たぶん、「一回考えよう」と「そんなすぐ電車止まる?」を20回は言ったと思う。

そして、改めて駅員に別の交通手段を聞くとインターチェンジから高速バスが出ていて、人数に余裕があれば乗れるという。

■僕たちは出来る限りお金は使いたくないのにバス代を払うのはキツイ。でも、行かないと帰ることもできないので同じバスに向かおうとしていた2人のおじさんに声をかけてタクシーに相乗りさせてもらった。

インターチェンジに到着して時刻表を見ると次のバスまでの時間がまた3時間くらいある。乗れるかどうかもわからないバスを3時間待つのは厳しい。

ならばヒッチハイクするしかないと思い。近くのコンビニで食事と休憩をしてヒッチハイクを再開した。

今度は、コンビニで貰った段ボールに鹿児鳥方面と書いて本格的なヒッチハイカーになった。

やはり、大きい段ボールと小さいA4ノートでは、手ごたえがまるで違う。インターという場所もあり見てくれる人や、声をかけてくれる人もいた。段ボールはすごいと思ったのは初めての経験。

それでも、なかなか乗せてくれる人はいない。途中で雨が降ってきたり、風は強くて心が折れかけていた。

そしてバスの時刻が近づいてきて“諦めかけたそのとき〈ナレーション風〉

近くのサービスエリアまで乗っけてくれるというおば様があらわれた。

もうすぐ来るはずの鹿児島行のバスとちゃんといけるかわからないヒッチハイク。正直、数秒間だがめちゃくちゃ悩んだがせっかく声をかけてくれたのに乗らないのは申し訳ない。

■おばさんに乗せてもらってサービスエリアに向かった。なぜ自分達を乗せてくれたんですか?と尋ねると子どもの送り迎えで一度、見かけてまだヒッチハイクをしてたら乗せてあげようと思ってたらまだいたからだという。

それとお子さんが5人いて、同年代の子供もいるので感情移入してしまったらしい。若くてラッキーだった大学生の特権(笑)

おばさんはとても親切な方で、到着したら飲み物まで頂いた。おばさんに感謝を伝えて別れたはいいが、またここからが大変である。

これまでは、電車やバスなどの待ち時間という保険があったが、今度は乗れなければ終わり熊本のサービスエリアに一泊するという最悪の旅行になる。

そのことに気づくと友達の様子が変わった。今までの付き合いでは見たことのない焦った表情で彼のことは呑気な楽観主義者だと思っていたのでこんな一面もあるのかと驚いた。

対して僕はなぜか落ち着いていた。隣で焦りまくっている人がいると逆に落ち着いてしまう。飲み会で誰か1人が圧倒的に酔っぱらうと周りが冷静になる現象と同じ状態。

そして僕は休憩をしながら2つの作戦を立てた。

作戦

◆サービスエリアで一番人が通るのはトイレなので、その前に居続けるトイレ前張り付き作戦。【担当者“イワハシ”】
◆鹿児島ナンバーの車の人に声をかける作戦。鹿児島に帰る人に絞ってナンパしていく里帰り狙い撃ち作戦。【担当者“友達”】

僕は呑気に座っていただけだったが、友達の気迫がすごかった。片っ端から声をかけ続けなんと20分程度で乗せてくれる人を見つけてきた。

普段の彼とは見違える活躍で追い詰めらるとこんなに力を発揮するタイプなのかと驚いた。彼は現在、営業マンをしているのでその才能の片鱗を見せたのかもしれない。

■次は、小さなお子さんを連れた主婦の方に乗せていただいた狙い通り鹿児島に帰省ので、一気に鹿児島の桜島SAまで乗せてくれるというのでありがたすぎる。

そこからは電車に乗ることができるので、もうゴールしたも当然。

それまでの僕の人生史上で一番安心した瞬間ランキングの1位の「高校受験に合格」を塗り替えて“1位”を更新した。安心しすぎて車内で助かったという思いと感謝の思いでいっぱいだった。

■その後の旅行は、とても順調でいい旅行だった。一度、窮地に陥れらているからなのか、もう開放感でいっぱいで通常の旅行よりも楽しんだと思う。達成感に満たされているからなのか、ずっと変なテンションで過ごした。

桜島でサイクリングを満喫

鹿児島の夜には、飲み屋にいたおじさんに奢ってもらったり、ヒッチハイクで乗せていただいたりと九州の方々にお世話になりっぱなしの旅行だった。

旅行が終わり、Twitterにヒッチハイクをした時の写真とかを投稿した。すると後日、先輩に声をかけられた。

先輩:イワハシ、なんかTwitterに写真乗せてたけど鹿児鳥になってたで

僕:???なんですか、鹿児鳥って?

先輩:写真見てみいや!段ボールに書いてた文字

いやいや、そんなはずはない。鳥と島なんて小学2年生くらいで習う漢字だ。大学3回生の自分が間違えるはずがない。


はい

間違えている

当時、焦っていた状況だったとはいえ簡単な漢字を間違えている。簡単すぎて調べもしていなかった。今となってはどっちが書いたかもわからないが、2人とも気づいていなかったのでアホである。

でも、この経験を通していえる事がある。文字よりもパッション【情熱】の方が伝わるということ。そして漢字を知らないことは恥をかくということを学んだ。

〈おわり〉

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