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RIZAPから考える利益の在り方

一時期独特なCMと結果にコミットするというフレーズで世間の話題となったRIZAPという会社を覚えているでしょうか?

そのRIZAPの業績が悪化しているという話をもしかしたら聞いたことがあるかもしれません。今日はその中身を会計の視点から覗いてみたいと思います。

会社を買えば利益が出る

会社が会社を買うとき、お金を払うことがあっても入ってくることはないですよね?だって”買う”んですから。つまりどんなに優良な会社を買っても儲けはありません。

しかし、会計上は話が別です。

企業によっては会計上認識できないリスクや簿外負債、含み損の存在により、企業の帳簿価格より支払う対価の方が小さい事があります。そのような場合、会計上はその差額を「負ののれん発生益」として利益が計上されます。

例えば、純資産1億円の企業を無料で買収すると、1億円の利益が計上できるわけです。一見儲けているように思うかもしれませんが、実際は簿外負債やリスクを抱えているため、純資産が1億円あったとしても企業に1億円の価値はないわけです。

ライザップはそういったリスクや問題を抱えている企業を買収し、利益を大量に計上しました。負ののれんは利益ですが、実際にはお金を得られていない点が問題です。

負ののれんという爆弾

このような実態はだんだん明るみに出てきます。

負ののれんの本質はリスクや簿外負債、含み損です。利益ではなく負債の要素が強いと私は考えています。そんな負ののれんを利益に計上すると、将来、赤字を発生させる爆弾であるわけです。

RIZAPは2019年3月期にいきなり70億円の赤字を発表しました。159億円の黒字を予測していたにも限らずです。

中身を見ていくと、買収した企業の業績が悪い事が赤字の原因のようです。当然ですよね、もともと何かしらの重大な問題を抱える企業を買うことで負ののれんを発生させていたのですから、再生して利益を出すようなことは非常に困難です。

元々、再生する気があって買収したのかすら、私は懐疑的に見ています。

借りたお金を利益に計上

追い込まれたRIZAPは驚きの会計処理を思いつきます。

借りたお金を利益に計上する魔法を思いついたのです。

まず、買収した業績の悪い子会社に対する不良債権を1円で買い取ります。そして、親会社の後ろ盾のついた子会社が銀行から借り入れます。そうして、得たお金を親会社に渡すと「償却債権取立益」という利益が発生します。

この利益もまた現金の入ってこない利益です。

この取引は連結相殺によって消えてしまうが、単体決算上は少しでも良く見せるためにやろうとしたのでしょう。

この処理は監査法人によってストップされ、実現しませんでした。

利益のあるべき姿とは

これらの処理はグレーであって、禁止されていないのが現状です。

このような処理を見ているとエンロン社の時価会計を思い出します。エンロン社では、現金の流れと利益が離れすぎた結果、利益が机上の空論となってしまいました。

現金の流れと利益計上がまったく一致するべきとまでは言いませんが、このような現金の得られる予測が全くないのに、「たぶん、この買収で儲かったんだろう」や「きっと純資産より安い分は儲けだろう」という理由で利益が計上されるような会計処理は明らかに異様だと感じます。

特別利益だから…という言い訳は確かにそうかもしれませんが、会計知識がない人からすれば伝わりません。それに、このような処理で債務超過を免れることができるというのもおかしな話でしょう。

利益とは企業の活動の成果です。投資家が投資をし、従業員が努力した結果です。結果の前には「たぶん」や「きっと」という文字が付くべきではないと私は感じます。


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