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スルガ銀行が示す地銀の苦境

地方銀行が潰れるといわれてもう何年も経ちます。しかし、実際に内情を知る人は少ないのではないでしょうか。

スルガ銀行の不正融資のニュースを覚えていますか?第三者委員会の報告書が衝撃的だったのでご紹介します。この報告書を通して地方銀行の内情を見ていこうと思います。

スルガ銀行は静岡県東部に地盤を持つ、地方銀行です。西に静岡銀行、東に横浜銀行というビックネームと隣接していたため、地理的には不利でした。しかし、スルガ銀行は逆に個人向けのローンを重視し、商品の種類を充実させていきました。

独自性のある戦略の結果、地銀の中でも高い収益性を達成し、苦しいとされている地銀業界の中で一つの解決策を示す存在として一目置かれていました。

地銀の優等生の驚愕の実態

スルガ銀行の実態が明るみに出たきっかけは、シェアハウス事業を行うスマートデイズの破綻です。シェアハウス投資家の被害弁護団がスルガ銀行の不正融資を告発しました。

第三者委員会の報告によると内部は偽装パワハラだらけだったようです。一部を抜粋しますが、これが現実だと思うと悲しくてなりません。

・正確な偽装行為の件数を数えるのは不可能
・「100件中 95-99件程度は何らかの不正が存在する案件」
・資金使途がないお客様に架空のペットという資金使途でローンを実行
・ノルマ達成のために、自分もしくは配偶者等の家族名義でローン実行。
・ノルマができていないと夜の10時を過ぎても帰れない。
・残業代など支払われるはずがない。
・首をつかまれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った。
・数字ができないなら、ビルから飛び降りろと言われた。
・死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責された。
・パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた。
・上司を目の前で土下座させて謝罪させた。椅子の背面をキックされた。

これが地方銀行の実態です。偽装とパワハラは過度なノルマノルマ達成に異常にこだわる社風から来ているように感じます。


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背後に見える市場の衰退

ノルマの設定は前年比利益等だけを見てトップダウン方式で作成されていたようです。市場規模に全く見合わない計画が作成されていたため、達成がかなり厳しいノルマが設定されてしまっていました。社員のアンケートにも次の一節があります。

ノルマの問題は…(中略)…潜在的な市場がどのくらいある商品なのかといったことを全く考えず、単に数字だけ押し付けられるところ。例えれば、釣り堀に魚が10匹いないのに10匹とってこいといわれている状況

これは逆に言えば、市場規模が縮小しているためこのような結果となったともいえます。スルガ銀行は明らかに貸付の需要に対し、供給が過剰な様子が見て取れます。

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地方銀行が崩壊する日

これまで、地方銀行は融資先のない資金について株式や国債へ投資してきました。しかし、株式はこの数年の好景気で上がり切っており、国債はマイナス金利となりました。

そのため、地方銀行では不動産や一般債権に投資が進んでいると聞きます。これは利子率が上がったときに大きな損失を受ける可能性が高いといえます。

銀行の貸付業務で見ると、市場は明らかに縮小しています。地銀側も合併などで数を減らすべきですが、独占禁止法などの壁があり今の所現実的ではありません。

私は銀行業が世界からなくなるという意見には反対です。デットファイナンスは今後も重要な資金調達手段の一つとして残ると思います。

地銀の問題点は需要の収縮に適応できていない点です。少なくとも大規模な人員削減・支店の閉店によって固定費を下げない事には地銀は成り立たないのではないかと私は考えます。

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