見出し画像

情報鎖国と差別

最近、新型コロナウィルスの世界的蔓延により、日本人が海外で差別された事例がtwitterにいくつも上がっているのを目にします。

それを見た日本人は、まさか日本人が…と信じられないといった様子です。

でも、差別は何も今にはじまったことではなく、海外在住の日本人であれば、ほとんどの人が経験してるのではないか、と思います。


私も今から20数年前に、オーストラリアに住んでいたときに、日常的に差別を受けていました。

地元の高校に通っていたのですが、現地に日本人は私ひとりでした。

他にアジア人は中国人の女の子がひとり。

それまでも、海外に住んでいたことはありましたが、その時私は幼すぎて気付かなかったのだと思います。

最初は、自分がまさか差別を受けているなど、と信じられず。

でも、私は差別を受けていました。

最初は、気付かない程度の小さな差別でしたが、どんどんエスカレートしていきました。

最初に決定打となったのは、なんと教師から。

オーストラリアの高校は、履修別に毎時間教室を移動するのですが、私にだけ週間の予定表が配られないことが多々ありました。

最初は、配り忘れたのかな…と考えていたのですが、違いました。

一緒に移動していたクラスメイトとはぐれてしまい、

教室がわからず学校の中庭で路頭に迷っていると、校長先生が気付いて怒りながら教えてくれました。

「なんてこと!あなた、それは○○先生から差別されているのよ」と。

上級生からの差別は露骨でした。

食べた人参のヘタ(笑)やトマトや石を投げられたり、痰をかけられたり、罵声を浴びせられたり…。

スクールバス内でも、校内でも、毎日。

身の危険を感じることもしばしばで、

漫画みたいな世界で、笑うしかありませんでした。


オーストラリアは親日だと聞いていただけに、ショックは大きかったです。

でも、私は知らなかっただけでした。

これら一部のオーストラリア人が、日本人を嫌悪する理由を。


8月のある日、学校で大規模な集会が行われました。

全校生徒、教職員、そして数名の老人が招待され、その老人がしきりに「F○ck'n Jap」という言葉を連呼していました。

なんだ、この集会!?

友人たちは、みんな私を見てバツの悪そうな顔をしています。

隣に座っていた友人がたまらず、

「お前のことを言ってるんじゃない、気を悪くしないでくれ」

「この集会は、第2次世界大戦のときに日本軍が侵攻したときに戦った人たちの話を聞く場なんだ」

びっくりしました。

よくよく話を聞くと、私が住んでいたクイーンズランド州の北部に1942年の夏に数回日本軍が侵攻してきて、日本軍から国を守った退役軍人の話を聞く全校集会だったのです。


私が無知でした。


そんな、日常的な差別に屈しなかったのは、私がサッカーをしていたからです。

当時、私はオーストラリアリーグ3部に相当する町のクラブチームに所属していました。

画像1

もちろん、遠征先の試合では、露骨なアジア人差別を幾度となく経験しました。

カンフーの真似をして、挑発してきたり。

ボールを持っていないのに、タックルされたり。

審判の見ていないところで、顔を殴られ流血しながらプレイしたこともありました。

何もない試合なんて、一度もありませんでした。

でも、そのたびにチームメイトが助けてくれました。


私のせいで、対戦チームと乱闘騒ぎになったことも一度ではありません(笑)。

そのたびに、気のいいオーストラリア人たちは

「気にするな、mate!」

と励ましてくれました。

また、チームメイトのトルガは、私にこう教えてくれました。

「差別するってことは、そいつの心が弱いってことだよ」

トルガはトルコからやってきた転校生。

同じアジア人として、学校内でも気遣ってくれました。

トルガが転校してきてから、気がつくと学校内での差別は減りました。

小さな町です。

もともと、きっと、外国人に対する免疫が少なかったのでしょう。

結果的に、同級生を中心に私たちを受け入れる輪が広がり、それが校内の差別を減らしたのだと思います。

日本に帰国する際は、同級生たちがサプライズでfarewell partyを開いてくれました。

画像2

あれだけ嫌いだったオーストラリア。

日本の友人に電話しようと、受話器を握りしめながら泣いたこともあります。

でも、私はオーストラリアの日々に感謝しています。

差別を受けたことで、差別された人の気持ちを知ることができたから。



私たちは、情報鎖国された社会のなかで、

「日本人だけは外国でも差別されない」

と勘違いしていたに過ぎません。

たまたま、コロナがきっかけでそれが顕在化したのです。

日本人は、差別を受けることに対しての免疫が少ないのも事実です。

なぜなら、他の国と隔たれた島国だから。

でも、その一方で在日の方や他のアジア人に対する差別は酷いものがあります。

自分たちがしていることは、そのまま自分たちに返ってくるのです。

他のアジア人に対するヘイトを繰り返す日本人に言いたい。


「差別するってことは、心が弱いってことだよ」

トルコ人の友人が、私に教えてくれた言葉です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?