見出し画像

日記 0430〜0511

0430
 三崎口へと至るこの電車は、車体は黄色くしすぎたクリームプリン的な色をしている。車両端の座席は対面式になっていて、褪せて白んだ臙脂色をしている。肘置きを外側から見ると、新品の玩具だったもののような、青だと思う。退勤している。下田逸郎のアルバムを初めて聴いている。あっ、と思ったけれど巻き戻して聴き返さないで、もう一度最初から聴き直したい。

0501
 130センチを見くびりすぎた、小さい人ほどの植物置きが来た。

0502
 朝からスマホの充電も51%、私もそれくらいで出勤する。退勤。同僚Sと、サイゼリアで2時間ほど喋り過ごす。白ワインのデカンタの4/5ほどは私が飲み、Sは顔色を変えずに食べながら、お腹を満たしていた。旅に行きたい、という話になった。私は今、共に旅に出たい人が幾人かいるものだと感じる。私の身体も、身体を出てゆかせる力も、力のためのお金も時間も、足りるだろうかと考え始めると、つい、どこにも行けない気もしてくる。何かを考えるよりも先に、旅に行く予定を立ててしまえば良いんだ。そのために、間に合わせるための、今の私がいるわけだから。
 朝、昔好きだった人のクレジットカードが3億円ほど不正利用されていたので、なんとか利用停止できないかと、知らない町の知らない地下街を上がったり下がったりする、夢を見た。
 家に帰ってから、同居人とコンビニへ行き、晩酌用に色々と買った。ピコピコ音楽、柴田聡子の歌詞の話、アイドルの信仰の仕方の話し。

0503
 正直に、3日ぶりの風呂だと思う。まずは1連休。伸びてきた豆苗の1軍を3本ほど切って、朝ご飯(卵かけ、納豆、めかぶ)の上に乗せる。友達と遊びにゆく同居人と共に出発して、途中下車する。コーヒー豆、かぎ針、毛糸、切り花を買う。ロッテリアからいくつか持ち帰る。グーグルレンズに聞いてみると、花はオオバナヒエンソウ(大花飛燕草、デルフィニウム)というらしい。
 隣駅で夕方に合流して、エチオピア料理屋で夕食とする。トリップするかと思うほどの五感を揺すられる空間。帰りは歩いて、橋を渡って、走って帰る。アイスクリーム、鉄観音。明日の荷造り、服を見てもらう。気が付くとすうすうと寝息を立てているので、明日から数日家を開ける代わりに、水回りを片しておく。

0504
 いつもより酷い走りをしながら、数字にも出ない働きをして回った。終わった。電車を待つ時間があるために、余計に疲弊する気もする。帰宅したら、荷造りをまとめて、20時半には出て、フェリー乗り場に行く。そして、大島へと向かうのだ。旅だ。
 シャワーを浴びて、チーズトーストを食べて、忘れた気がするアレコレを思い出そうとしないままに、家を出た。同居人に置き手紙をしておいた。

(後日記載。高校からの友人二人、竹芝発の夜行フェリー、缶の酒を開けて夜の港を進む大船、食堂で再度酒と食事を頼み、明日の予定を練る、細長い箱に寝そべって、眠る)

0505
 6時、岡田港着。御神火温泉、朝ご飯、元町港、三原山、火口、お鉢巡り、下山。御神火喫茶、元町港、ホテル・リゾートマシオ、レンタカー、夕焼け、テイクアウト、べっこう寿司、地魚寿司、焼き鳥、味噌ラーメン、お酒、シティハンター、カラオケ行こうよ、星空、電話、睡眠。足の指に水ぶくれが大きく、ひりひりと痛い。

0506
 5時に目が覚め、朝の海を眺めた。二度寝をしながら貸し切り風呂が開く時間まで過ごした。風呂。朝ご飯の時間まで、静かな海が窓に映る洗面台で化粧をしたり、編み物をして過ごした。朝ご飯、3杯おかわり、コーヒー。レンタカーで島を一周。牧場のジェラート、泉津の切り通し、旬を過ぎた椿園、地層大切、大宮神社、元町港。喫茶居酒屋でべっこう丼、芋焼酎。ジェット船で乾杯、睡眠。
 ほとほと疲弊の体で最寄りに降り着くと、同居人が待っている。カレーを食べながら、沢山話す。人間は究極、旅に出ていくのだと思う。一人でも、二人でも、それ以上でもきっと。

0507
 同居人が仕事に出ていく。今日は1日休みにしている。夕までスマホの解約手続きに奮闘して、郵便局に行った頃には換金できない時間で家に戻った。編み物をした。北海道の祖父母から野菜たちが届く。よく水で洗って、再度仕舞うようにした。同居人が帰宅し、梅カツオかけの鶏むね肉、ネギニラ玉、ほうれん草ときんぴらを具にした味噌汁を作り、食べる。長風呂をして眠る。足に湿布もどきを貼ってみていたので、数日前の登山の影響は殆ど無いように思う。水ぶくれも、萎んでゆく。

0508
 休み明け、出勤する。帰ってからずっと、小競り合いをする。その後はずっと沈黙、何をしても寂しい気持ちになる。アスパラガスのバター炒め、ほうれん草のシチュー、厚揚げのチーズのせ(青唐辛子みそのせ)、レタスと新玉サラダ、ミートボール。

0509
 昨日を引きずった、すぐそこで果てそうな1日を過ごす。あんなに大きい山の麓、海を抱えた島にいたというのに、勝手に生かされてきた自分の矮小さに、ここに来てから気づく。海が銀色に、青に、白に、そこに居ればいいのに。
 帰って食べる支度。山わさび(みじん)の醤油漬け、茹で鶏むね肉、タラの芽の胡麻味噌和え、茹でカブとレタスと新玉と島海苔のチョレギ風サラダ、カブとカブの葉と玉ねぎのワカメの薄いシイタケのお吸い物。祖父母からの野菜たちはまだ減らない。

0510
 今朝、同居人が昔の恋人と(その人にも現在恋人がいる状況だが)結婚することを許した後に、やっぱり後悔してそれを打ち明けようとする夢。やけに現実的だったので、起きて確認すると「結婚してないよ」と言われて安堵する。
 退勤。明日が半休に出来そうなので、既に週末の気分。そういえば、家を留守番してくれている草花たちのことを記していなかった。オオバナヒエンソウは、元咲いていた水色が少し乾いてきて、次々と蕾たちが膨らみ始めている。ガーベラなど一生を眺めるような、1輪差しよりも、水の循環する息吹を感じる。豆苗は2回目の再生を目指して、少し長めに根本を取って切った。伸びの良い子は1日で伸びて、また1週間後ほどの成果が楽しみ。
 殆ど帰りの時間が変わらなかったので、駅で待ち合わせてスーパーへ。カツオやサーモンの刺し身を山わさび、島海苔などとご飯で食べる。田舎味噌でネギとジャガイモとわかめの味噌汁。タラの芽をバター炒め。同居人の作ったハイボールを数口分けてもらう。ほか、お惣菜のポテサラや、ポテチやビーフジャーキーなど。各々が動画を見始めたので、その後はただ眠る。 

0511
 6時前に起きて、シャワーを浴びる。朝ご飯にトーストとレタスや目玉焼きを用意する。昨日の味噌汁を温める。粗大ごみ受付の日で、デスクチェア、机、ハンガーラック、スツールなどを運び出す。その後、出勤する。既に働いた後の疲労感がある。何事もなく、午後休が頂けたらそれだけで嬉しいことこの上ない。願うのみ。
 なんとか、定時の10分後ほどに上がることを果たせた。かつて最寄り駅だった街が、5月の日に照らされてやけに平和。空き地も緑が茂る。まだ遠いスカイツリーが白んでいる。
 同居人がこちらの方まで来てくれるので、お昼ご飯をともにする。建物の中のある、路地裏のような隙間に店があり、逞しい麺を食べながら、アイドル音楽業界的な話を好き好きにする。イトーヨーカドーでブラブラして、買う予定のものを半分くらい買ってから、ジュース飲みたさにもう半分を忘れてそのまま帰る。今日は初めての揚げ物、天ぷらをする予定。ドタバタ掃除をして、先に風呂にして、取り掛かる。同居人が鶏天、かぼちゃ天、玉葱と人参のかき揚げをする。その間山菜を下ごしらえ、近所の酒屋に炭酸を買う。交代して、祖父母から届いた山のような山菜を天ぷらへ。タランボ(タラの芽)、こごみ、イラクサ。ムシャムシャと食べながら、自家製ハイボールしながらと、贅沢なひとときを過ごした。その日中に台所とシンクを片付けてしまったのは、本当に偉いことの一つであった。湿布を貼って眠った。

ーーーーーーーーーー

 島は本当に良いもので、海も山も、全ての起伏が分身している。起きてもそんな夢ばかり見ている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?