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選手は○○を求めている

〜僕がお世話になった先生の話〜

この話は5〜6分で読むことが出来ます。

目次

1.始めに

2.僕の先生

3.先生と大喧嘩

4.指導者は○○を作る仕事

5.最後に


1.始めに

日本には、スポーツを教える人のことを「コーチ」や「指導者」など、そのほか同じような意味の言葉でも様々な表現がありますよね。

これは言葉だけではなく、海外から取り入れた様々な文化を受け入れて多様化している。とデンマークで生活して改めて思いました。

「日本ほど同じものでも様々な種類が流通している国はそうそうないのではないか」と感じました。

ちなみに、デンマークでいわゆる「コーチ」という意味は「Træner」と書きます。発音の説明はめちゃくちゃややこしいですが、「トレーナー」みたいな感じです。

僕の知識不足かもしれませんが、ひとつの意味のもとで、それを表す言葉がひとつしか無いことがなんだか羨ましく感じたのを覚えています。

なぜなら、イメージの共有がしやすいからです。

日本語では同じような意味でも言葉がいくつかありますよね。それによって人それぞれ少しずつ認識の違いが生まれます。

このことが私たちの間のイメージを共有することを少しだけ邪魔しているように感じたのです。

冒頭でコーチにしようか、指導者にしようか迷って結局指導者にしたのですが別にコーチでもいいやって思いながら書いていました。

今回話すのは学校の先生なので、コーチというより指導者かなという僕の勝手なイメージです。

ただの雑談コーナーでした。笑

2.僕の先生

今回は、僕がお世話になったホイスコーレの先生についてのお話です。
ソーレンさんという方で、学校のハンドボールクラスの先生です。

彼は現在、クラブチームを持ったりはしていませんが、コーチとしてはトップリーガの女子のコーチをしていた経験があります。

現役時代は自ら1stディビジョン(デンマークでは「リーガ」の下の実質2部)でプレーしてたそうです。

学校のハンドボールのクラスといっても、公式戦のようなゲームはなく、練習を週に4回ほど一緒に行い、主にその中でそれぞれの目標に向かっていく感じ。

メンバーはそれぞれ自分のレベルに合ったクラブチームに所属しており、夕方からそれぞれのチームに練習に行くといった感じです。
(僕は地元のシニアのクラブチームと、隣町のヘアニングのクラブチーム両方の練習に行ってました。)

ソーレンは、クラブチームのコーチのようにいわゆるプレーヤーとして高みを目指すことに重きを置いていながら、プレーヤーとしてはもちろん、コーチとして、人間として成長していくことにより重きを置いている先生でした。

トップのクラブチームのコーチなら、そのバランスをもう少しパフォーマンスの方に傾けていたことは間違いありませんが、学校の先生という立場ゆえのバランスだったと感じています。

現在の日本の部活動という環境において、全ての選手がトッププレーヤーになるわけではありませんよね。

本当の目的は、その競技を通して、色んな人との関係を通して、人格形成や人間的に成長することです。
例えそれが、高校の強豪校であってもです。

シニアのトップチームのように同じようなレベルの選手が集まるのではなく、レベルも様々でそれぞれに目的も異なる、若く将来性のある選手が集まっています。

誤解されたくないので書いていきますが、ここでの将来性とはハンドボールプレーヤーとしてのものではありません。

そういった背景から、今回お世話になった環境が学校の部活動に非常によく似ていると感じたのでここでまとめようと思い立ちました。

3.ソーレンとの大喧嘩

ある日、初めて会ったときからとても優しく、お父さんのような存在だった彼と、一度かなり揉めました。

原因は11月ごろに学校全体でいく約1週間半の旅行に僕が行きたくないと言い出したからです。

その旅行先というのが、ラ・サンタというリゾート地のようなところ。


世界中のスポーツ選手や団体がオフシーズンに身体を動かしつつリラックスしたり、チームビルディングにも用いられるようなところでした。

行きたくなかった理由は
・スケジュールの中にハンドボールがほとんどない
・1週間半の間ハンドボールができない
・その1週間の間に自分のリーグ戦がある
・その1週間の間にトップリーガの試合がある

11月ごろは「ハンドボールの留学にきているんだ!だから、ハンドボールに時間をなるべく割きたい!」と強く思っていた時期でした。

なぜなら、ちょうど10月からリーグ戦が始まり、自分でプレーも出来るようになり、トップレベルの試合や地元のローカルマッチも観れる。

まさに最高の環境が始まって間もなかった頃だったのです。

なのに旅行のスケジュールを見たらヨガやフィットネス、クロスカントリーなどなど(素晴らしいんですけどね。めちゃくちゃいいプログラムですよ笑)

ハンドボールに飢えていた僕からするとたった1週間半でも、とても時間を浪費しているように感じたのです。

そのことをソーレンに話すと、彼は即答でした。

「旅行に来るべきだ。」

その勢いに押され、一度は首を縦に振ったもののしっかり考えて自分にとって何がいいか、自分が後悔しない選択をしようと考えました。

「やっぱり行けない。」

旅行先でハンドボールが出来ない、見れない環境の中でもどかしい想いをする自分自身が簡単に想像できました。とても耐えられたものじゃありませんでした。

そこで、もう1度ソーレンに旅行には行けないことを伝えました。
理由をあれこれ並べて、必死に英語で話しました。

「リーグ戦があって、プレーしたいんだ。」
「ただでさえ早く帰らなければならないから1試合でも多くプレーしてチームの力になりたい。」

するとソーレンは

「その試合は、君の人生の中の数百という試合のたった1試合だ。ラ・サンタにはこれからも行くことはないだろう。この経験をしないのは君のコーチとしてのキャリアのためにはならない。」

凄く言いたいことは分かりました。

ソーレンは僕にいろんな経験をさせてあげたかったのです。
その中で僕が見て、感じて、新しい感性として取り込んで欲しかったのだと思いました。

しかし、僕はそれはとてもとても
“ハンドボールに飢えていた”のです。

僕は言いました。
「ソーレンはデンマークで素晴らしいハンドボールに触れてずっと過ごしてきた。だから、”たった1試合”を”たった1試合”として考えることが出来る。でも僕は違う。ハンドボール留学でのデンマークでとても大事な1試合なんだ。飢えてるんだ。」

笑ってましたね。笑

「分かった。尊重はするけど理解はできない。笑」

あ、やっぱ考え方が違うんだな。

思ってしまいましたね。

小学生からハンドボールしてますけど、今までは生活のほとんどの時間をハンドボールに当てて、旅行のために練習や試合を休むなんて考えたこともありませんでした。

もちろん僕がトップリーガならソーレンは快く試合に行かせてくれたと思います。
僕が3rdディビジョンのリーグに所属していたから、そのように言ったのだと思います。

今までは必死で休みを欲しがって、それでもなかなか休みがない。そんな状況だったのに、そのときはハンドボールをしたいと言ったら、旅行に行けと言われる。

そして、結局ハンドボールを手放すことが出来なかった。なんて皮肉なんだと思いました。

ソーレンはプレーヤーとしての僕のキャリアだけでなく、コーチになるというキャリアを想っていろんな経験をさせてくれようとしていたのです。

デンマークから日本に帰るとき、手紙にこのことを書きました。

たくさん困らせてごめんね。と。

日本についてからメッセージが届きました。

たくさんのエネルギーとインスピレーションを与えてくれてありがとう。

ちょっと皮肉られてんじゃないかと思いました。笑

4. 指導者は○○を作る仕事

冒頭でも書きましたが部活動において、どの競技でもそうだと思いますが、トッププレーヤーになる子供はほんの一握りの選手です。

そのほかのほとんどの選手はプレーヤーを近いうちに引退することになります。

そういった大勢の選手たちにコーチが最優先でさせてあげなければいけないことは、”新しい経験”だとぼくは思います。もっというと

「新しい経験を得られる機会を作る。」

今まで僕が出会った指導者で、心がワクワクするような人は一様に「新しいことを与えてくれる」「知らないことを教えてくれる」存在だと気づきました。

高校の恩師が言っていた言葉です。
まず「知る」
次に「やってみる」
次に「分からず出来る」
そして「分かって出来る」

まず知らないことには始まらない。

知ることで下せる判断も多くなります。

そして、ハンドボールで勝つことが直接的に人生を豊かにすることはないです。

筑波大の今年卒業するOBが最後に言っていました。

「僕たちはインカレに優勝したけど、日常生活は何も変わっていない。」

めちゃくちゃかっこよくないですか?
1つ下の後輩です。
本当に誇りに思います。よく言った。

勝った人しか言えないなあ。かっこいい。
ぼくも言いたかったなー。と。笑

日本では全国大会が小学生からあります。
日本一への道のりがあればそりゃ目指したくなりますよね。

目の前の試合を勝っていけば日本一になれるんです。
そりゃ目指すことは素晴らしいです。

選手も勝ちたいしコーチも勝ちたい。
その状況で
次の試合じゃなくシニアで活躍できる選手を育てる」
なんてことはとても難しいと思います。

小学生からプレーしているほとんどの子供は大人になったときハンドボール以外のことをしていることが多いと思います。

そうなったとき、活きてくることは

「今までにどれだけの種類の経験をどれだけの密度でしてきたか。」

ということだと思うんです。

僕自身、これから意識するのでも遅くないと思っています。いろんな経験を通して、いろんな考えを深めていきたいですね。

5.最後に

今日は以上になります。
次の更新も早めかもしれません。

ではまた!

森永 浩壽


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筑波大学体育専門ハンドボール部→Denmark Ikast høskolen→大学院/U-7からU-19のユース世代の育成環境を整えたい。
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