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モザイクをかける!〈 自主規制のための練習曲〉

デンマーク人映画監督、ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』という映画があります。

この作品は、“ジョー”という色情狂の女性の50年間に渡る性遍歴を追う前・後編からなる長大な物語です。L.V.トリアー監督がうつ病の治療後に撮った映画『アンチクライスト』『メランコリア』に続く「鬱三部作」の最終作ということもあり全世界で話題になりました。

この映画がデンマークで世界初公開された時、僕は妻と一緒にコペンハーゲンの住んでました。デンマークを代表するL.V.トリアー監督の新作ということもあり、中央駅を始め至る所で映画のポスター(登場人物10人くらいの“エクスタシー時の顔のアップ”)が貼られておりました。当時、僕が通っていた作曲科でもこの映画の話題で持ち切りで、カレンダーやクリアファイルなどのグッズが作曲の講義室に溢れていました。

デンマーク人の友人から勧められたこともあり、妻と二人で映画館に観に行きました。公開から一ヶ月程過ぎていた為、館内は僕たち夫婦二人という状況で暴力と性描写に溢れた過激な映画を4時間に渡って鑑賞しました。映像や音楽のチョイスが素晴らしく、あっという間の映画体験でした。

デンマークは幸福度が高い国として知られており、実際に僕の周りのデンマーク人達もそのことを誇りに思っている人が多く、精神的に大人なフレンドリーな人ばかりでした。あまりにも良い人が多く、多少胡散臭く感じていたのですが、このような過激な映画に国を挙げて熱狂している所を目の当たりにすると、こういう所でバランスを取っているのかな?と思いました。

日本の友人にこの映画を勧めた所、日本で公開されたものには頻繁にモザイクがかかっており、興ざめしてしまった!とのこと。。。どんなにストーリーが面白くても、重要なシーンでモザイクが出現したりすると、意識がそちらに向かってしまうのは避けられないのでしょう。
ミケランジェロのダビデ像はフルチンだと思うと、アート作品や映画への規制の線引きかなり曖昧なんだなと思いました。

ところで、2017年にピアノ、キーボード、映像のための《17の練習曲》という曲集を制作したのですが、その中に〈XIV . 自主規制のための "Censor Bleep"〉という曲があります。規制の際に使用するモザイクや、自主規制音(ピー音)を曲に取り込んでおります。

〈XIV . Censor Bleep〉from
《17 Etudes for Piano, Keyboard and Movie (2017)》(2018.2.5 ver.)
〈14. 自主規制のための〉
《17のエチュード》ーピアノ、キーボード、映像のための より(2018.2.5 ver.)

Music & Movie & Edited & Performed by Koji Takahashi
Filmed by Ayane Shindo
作曲・映像・編集・演奏:高橋宏治
撮影:進藤綾音

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