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最後まで続ける! ガルシア・マルケス『コレラの時代の愛』

ガルシア・マルケスの『コレラの時代の愛』について。

ガルシア・マルケスは、1928年生まれのコロンビアの作家で、1982年にノーベル文学賞を受賞しています。“マジックリアリズム”(非日常的な事柄を、日常的”なものとして描く表現技法)で書かれた代表作『百年の孤独』の作者として世界的に知られています。
その『百年の孤独』では、5年近く雨が降り続いたり、気分が良くなった女の子が空に飛んで行き永遠に帰って来なかったり、チョコレートを食べて宙に浮いたりといった絶対にありえへんような出来事が、日常の中に紛れ込んでいます。そのため、すごく真実味を感じながら読み進めることが出来ます。詐欺師が、嘘の中に少しだけ真実を混ぜるのと少し似ていますね。

今回紹介する『コレラの時代の愛』では、絶対あり得ないようなことではなく、“あり得ない”と“あり得る”の境界線上にあるような、”51年9ヶ月と4日の片思い”が、現実的かつロマンティックに描かれています。

主人公の男性が、一目惚れした女性を待ち続ける約五十年間が描かれているだけと言っても過言ではない物語なのですが、作者からの「人を愛するというのはこういうことなんちゃう!?」というメッセージが大袈裟なんだけれども繊細に語られているように思いました。

恋愛は一時的な情熱で、結婚(愛)は持続させること!とはよく語られていますが、この小説では、“持続させる”を超えて“最後まで続ける”ことが“愛”なのでは?と問いかけているように感じました。

主人公は、相手の女性から冷たい仕打ちを受けたり、彼女の魅力が老化によって半減しても、彼女に想いを寄せ続けます。読者にはその理由が分からないのですが、理由がないから“愛”なのでしょう。アガペー(無償の愛)みたいなものなのかな?

彼女が未亡人になったその日に、主人公は愛の告白をします。その後の展開はここでは触れませんが、この小説にはその“愛”の最後は描かれていません。それは、終わり方が重要ではなく、終わりあるものを最後まで(死ぬまで)続けることが重要だという作者からのメッセージなのではないのでしょうか。

この”愛”のように、創作活動、宗教の選択など、最後まで続けないと意味がないかもしれない、もしくはそれが正しいのか分からないことは人生にはたくさんあるような気がします。(最後まで続けたからといって、それらが保証されているわけではないのでしょうけど。。。)

ということで、作曲をしている身としては曲はちゃんと最後まで完成させないといけない!と思いました。(なんじゃその感想!でも、良い教訓。)未完成や、締め切りに間に合わない!なんてのはもってのほかですね。

時間芸術(始まりと終わりがある)である音楽や小説は、そのようなことを表現するには持ってこいのメディアだなと思います。数年前に〈 17. 息をするように "Like breathing"〉という曲を作曲しました。“終わり”について歌った曲です。良ければお聴きください!

高橋宏治作曲・作詞《24 Songs for Voice and Piano (2017-2019)》より
〈 17. 息をするように "Like breathing"〉

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