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医療えほんが目指すもの

本日は我々が製作している医療えほんが目指すものに関して,少し踏みこんだ話をみなさんと共有をさせて頂きます.

そもそも僕たちがなぜ医療えほんを創ろうとしているのか,ということについてはこちらの記事を参照頂けますと嬉しいです.

僕らが創りたい"医療えほん"の舞台は,病院の放射線科や放射線検査室で行われる画像検査,つまりはレントゲン(X線検査)CTMRIです.これらの画像検査は"採血"などとは異なり,からだに"痛み"を伴うことはありません.標的とする体内を画像化(写真に)するために少々窮屈な体勢をお願いすることはありますが,基本的には写真を撮る間,動かないでじっとしているだけで検査は終わります.
しかし,子ども達の診療に従事していると,多くの子供達がこれらの画像検査を過度に怖がるために,十分な検査ができないことが頻回にあります.

痛くもない簡単な画像検査を,
なぜ,子供達は怖がってしまうのか...

子供達の診療に関わる,患児(子ども)ー 医療者 ー 親(大人)の三者の視点から因数分解をして考えてみます.

親(大人)の視点での医療(検査)体験

まずは大人の視点から,画像検査の情報を考えてみます.
多くの大人たちが病院で受ける画像検査の中で最初に思い浮かべるものは,間違いなくレントゲン検査(X線検査)でしょう.レントゲン検査は実はとても身近な検査です.なぜなら集団健診により胸部レントゲン検査は大人になれば必ず受けるように,経験したことがない人はほとんどいません.とても身近で日常的な医療体験,それがレントゲン検査です.
そのため,病院でレントゲン検査を受ける際に,レントゲン検査の詳細な説明は省略されることが多いのではないでしょうか.

一方で,CT検査やMRI検査は大人といえども身近なものではありません.CTとMRIの違いがはっきりしない人がきっとほとんどです.比較的大きな医療機関でなければこれらの検査を受けることができませんし,画像診断の精査として利用される場面が多いのがCTやMRIです.CT検査やMRI検査は,多くの人にとって貴重な医療体験になるのです.

患児(子ども)の視点での医療(検査)体験

それでは子どもの視点ではどうでしょうか.子どもたちは全ての体験が初めてであり,たくさんの経験を繰り返すことで知識を蓄え成長していきます.そもそもヒトは,何歳になっても経験を繰り返すことで学び成長をします.これは医療に関しても同じことが言えると思います.一方で,学ぶ機会が少ないことも医療の特徴です.実際に経験した"医療"でなければ知る(学ぶ)ことはなかなか難しいのが実情ではないでしょうか.

子どもたちの視点に立ってみると,多くの子ども達が最初に経験する医療体験というのは"予防接種(注射)"であるということに気づかされます.これは,国内の予防接種法により対象疾病のワクチン接種が勧奨され,乳児期・幼児期に定期接種が行われるためです.すなわち,子ども達が"病院=注射"を連想してしまうことは必然です.病院へ来る機会そのものが多くない場合には,医療体験自体が非日常の貴重な体験となってしまうために,注射を連想しネガティブな場所と考えてしまうのかもしれません.

実際の画像検査の場面においても,レントゲン検査どころかお部屋に入ることもできない子ども達を多く見かけます.こども達にとっては,レントゲン検査も何もかも全ての医療体験が非日常の貴重な体験になるのです.

医療体験を医療者の視点で考えると...

レントゲン検査やCT検査など,患者さんに医療体験を提供しているのは医療者です.それでは,医療者の視点で画像検査の場面を考えてみます.レントゲン検査を例に考えてみると,検査の場面において患者さんにレントゲン検査の説明を詳細にすることはありません.なぜなら,前述した通り,大人たちにとってレントゲン検査は身近な医療体験の一つであり,多くの人が既にレントゲン検査を認識しているからです.
これを小児医療の場面に置き換えたとき、医療者が検査の目的や検査に伴う放射線被ばくのリスクに関する説明をご両親に向けてしたとしても,どのような検査かを検査を受ける子ども達自身に詳細に伝えられる機会というのは少ないように思います.これが小児医療の背景です。

また実際の検査の場面でも,子ども達が体験する医療と大人が経験した医療には乖離が存在しています.例えば,検査技師が大人のレントゲン検査を一人で対応する一方で,子ども達の検査の多くは2人以上の複数の医療者で対応されています.もしかすると,子ども達にとって複数の大人に囲まれることは,大人たちが想像するよりもはるかに大きいストレスに繋がっているかもしれません.

[子ども-医療者-親(大人)]3者間が持つ情報の非対称性

なぜ子ども達が医療を怖がってしまうのか,ということを患児(子ども)ー 医療者 ー 親(大人)の視点に立って考えてみました.
どうも小児医療においては,3者間(子どもー 医療者 ー 親(大人))で持っている情報が異なる情報の非対称性が生じています.特に,医療を受ける子ども達自身が持っている情報が少ないことが要因で,医療への恐怖心に繋がっているように考えられます.大人でさえそうであるように,何をするのか分からないままに医療を体験することは,大きなストレスとなり得ます.
子ども達自身の医療に関する情報格差を補うためには,医療者とご両親の情報の非対称を可能な限り埋めることが必要です.すなわち正しい医療リテラシーを身に着けることです.


僕たちが目指す医療えほんは,子ども-医療者-親(大人)の3者を繋ぐものでありたいと考えています.3者間の持つ情報の非対称を埋め,子ども達の健康と成長を医療者と両親が持続的に支えていくためのツール(道具)になることを目指します.

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こども病院の放射線技師/博士課程院生/医療えほんラボ共同代表 未来を担う子ども達のために”医療×絵本”の制作を目指すも、家でも職場でも、子どもに絶賛”育てられ中”の2児の父。妻に「パパが1番手がかかる」と言われながら、医療者、大学院生、絵本制作の3足のワラジを履き替え日々精進中